新橋演舞場、新春花形歌舞伎『石川五右衛門』に行って来た。
演舞場は10数年ぶり。
新しくなった歌舞伎座と比べると舞台の大きさは同じぐらいだと思うが
客席がちょっと安っぽい感じなのと、
傾斜が緩やかすぎて、前の人の頭が邪魔で、舞台が見にくいのがちと残念。
演し物は『石川五右衛門』とカジュアルなイメージだし、
役者も海老蔵や獅童などが中心だからか、
会場に来ているお客さんも全体に若いし、歌舞伎慣れしていない感じの人が多い。
案外、男性も多く、しかも40代ぐらいの人だったりするあたり、
歌舞伎座と客層が違うなあと感じる。
私もキモノでいったのだが、会場にはキモノ姿のご婦人がけっこう見受けられ、
お正月公演らしい華やかさに包まれていた。
若い女性のキモノ姿も多く、その辺も歌舞伎座とちょっと違うところかも。
ただし、歌舞伎座は粋筋のお姉さんが
振り返りたくなるようないいキモノで来てたりするが、
演舞場は目を見張るようないいキモノの人はいなくて残念。
そのあたりもカジュアルなのか。
肝心の演目の方は
石川五右衛門と秀吉の意外な関係、
秀吉の正室茶々の身ごもった子どもの本当の父親は誰か?
ワンハンなる中国の皇帝にさらわれた茶々を助けるための大立ち回りなど、
「え~っ、そうだったの?本当に?誰それ?」みたいな
お話の連続。
真実なのか、ちゃんとした史実なのか、ちょっと分からないが
そのあたりを突き詰めるより、
単純に華やかでにぎやかで豪快な物語を楽しんで
お正月らしい気分を味わうのが一番という気持ちで鑑賞してきた。
先代の市川猿之助がやろうとしていた
『ヤマトタケル』みたいな路線とみていいだろう。
これからの時代、若い人を歌舞伎に呼び込み、
決して難しい言葉で何を言っているのか分からないわけじゃないことを
分かってもらい、
もっと気軽に観に来て欲しい。
そんな思いで演じているんだと感じた。
そのために
今までにはなかった石川五右衛門の宙乗りのシーンも採り入れたらしいし、
場面転換もすごく多い。
中国の華やかな建物の上で石川五右衛門が見得を切れば、
大量の桜吹雪が会場の方にまで吹き上がるし、
途中、5人がかりで練り歩く龍が登場したり、
花道だけでなく他のドアからも演者が登場したりと、
随所に飽きさせない工夫がてんこ盛りだ。
大枚払って来たからには、
一時でも世間の憂さを晴らして楽しんでほしい
そんな歌舞伎界の思いが伝わってくるような楽しい舞台だった。
クラシックな歌舞伎ファンには物足りないかもしれないが、
難しく考えずに、
「海老蔵いいわ~、やっぱり、いい男」と見惚れていればいい、
それが正しい歌舞伎の見方なんだと思う。
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