外は雨上がりで気温が急上昇、花粉の飛散も大量投与。
こんな日はなるべく家にいて読書でもしていようと
昨日、今話題の書西加奈子の『サラバ!』を買って帰った。
夕べから読み始めたのだが、これがとっても面白い。
帯には『これは、私にとってとてもだいじな小説だ』角田光代
『今、いちばんに読み返したい心の一冊』椎名林檎とあるが、
今イチ何を意味しているかピンとこない。
更には
ひとりの男の人生は、
やがて誰も見たこともない軌跡を描いて、
地に墜ちていく。
だが、いまはまだ、その少し手前。
とあるから、下巻まで進むと『僕』の人生は転落していくのだろう。
物語は一人称で書かれている『僕』が、
逆子だったため、左足から生まれてくるところに始まる。
『僕』は両親がイランに海外赴任中、
姉のいる弟として生を受ける。
そして、まだ自意識が芽生える前に帰国し、日本の幼稚園生活を経験し、
再び、小学校の低学年で今度はギリシャに転勤族の家族として移り住む。
三島由紀夫は自分がつかった産湯のたらいに差し込んだ光の情景を
まざまざと覚えていると言うが、
『僕』も左足からおずおずとこの世に出てきて、人生が始まったところから
鮮明に描かれている。
鮮明に描かれている。
この物語は
海外転勤族の家族の第二子に生まれた『僕』の視点で書かれているが、
何を隠そう、私も香港、日本、シンガポールと転勤で居住地を変えながら、
香港で第二子を出産し、異国のメイドさんに助けてもらって、
子育てをしてきた。
そういう意味で、
この物語の作者の経験と観察力に基づかなければ書けない内容に
大いに共感し、懐かしさを禁じえないのである。
海外、しかも、イスラム圏の国に住むということは、
旅行に行くだけでは想像もつかない出来事やものの考え方に出くわすもので、
私の香港とシンガポールなんてまだまだ手ぬるいのだと思うが・・・。
そんな不思議の国を楽しむかのように生きていく母親と姉を
『僕』はじっと観察しながらも、一定の距離感を保ち、
本人は生まれながらの処世術を駆使してじょうずに成長していく。
どの時代のエピソードも「海外あるある」に満ちていて、
私は少しこの物語の母に似ているかもしれないと思って読んでいる。
手に負えないてんかん気質の『姉』に対し、
どこか達観している『僕』がこの後、どうなるのか全くわからないが、
幼稚園でのクレヨン交換ごっこのくだりなど
今、私が子育て支援で担当している3歳児のみせるしぐさや態度を思いだし、
クスクス笑えてくる。
それも皆、西加奈子の描写力と観察眼のなせる技だろうから、
これからの『僕』の成長における心理描写がますます楽しみだ。
明日も花粉の飛散は大量らしいから、
家でおとなしく読み進めるのが一番ではないだろうか。
久々にオススメの1冊です。
よろしかったら書店で手に取ってみてください。
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