暮れも押し詰まった12月23日、
芝の増上寺のほど近くにある浄運院というお寺の書院で
『歳暮の茶会』というお茶会が開かれた。
夏にも一度伺ったことがある場所で、
そこのお茶室でお稽古をなさっている表千家の先生が、
季節の趣向をこらした小さなお茶会を開いていらっしゃるのだ。
知人の紹介でお邪魔することにしたのだが、
本日の参加は14名。
2~3ヶ月に1度、こうしたお茶会を催されている内の
今日は今年最後のお茶会ということだ。
東京・芝の増上寺のすぐ側というロケーションからは全く想像できない
静かな境内に、古い日本家屋がひっそりとあり、
街のクリスマスの賑わいとはおよそかけ離れた和装の女性達が
静かに集まって、
薄暗い書院でおしのぎとよばれるお膳立てのお食事をいただいた後、
四畳半の茶室に移って、お茶を一服頂戴する。
そんな年の瀬の空気とはまったく違う、異次元に迷い込んだような
不思議な空間と時間が流れている。
それでも外はクリスマスということもあって、
クリスマスカラーの赤と緑を意識した道具だったり、
花入れの花の一部をリース型にして、万両を添えたり、
干菓子にクリスマスのオーナメントを思わせる飴細工や落雁を使ったりと
亭主の気遣いと遊び心を感じるしつらえがそこここにある。
もちろん、おしのぎに使われた季節感のある食材にも心配りが感じられたし、
主菓子の蒸したゆず饅頭は
くりぬいたゆず皮の中におまんじゅうを詰め込んで蒸し上げたもので、
ゆずの香りがあんこに移って、とても美味しかったし、時期らしさも味わえた。
きっと準備はとても大変だと思うのだが、
「来てくださる方に喜んでいただきたい」という亭主のおもてなしの心が勝って
いろいろ工夫して、お茶会を楽しんでいらっしゃることが伝わってくる。
昨日観たテレビの料理番組でも、
「20分で晩ご飯」というタイトルで、
観客の前でバタバタ大変な騒ぎで5品ぐらいパーティ料理を作り終えた
料理家の女性が、最後にひと言、
「人をお招きしてお料理作るって大変だと思いますけど、
やっぱり誰かが手作りでこうやって作れば楽しいし、思い出になると思うので、
頑張ってご自分が作る人になってください」と言っていた。
招く側の人は本当に大変だし、めんどくさいを思うけど、
それを大変でめんどくさいと思わないで楽しむ、
それが大切よねとしみじみ思った。
「お正月はおせちとか作るの?」と人に聞くと
大抵の人は
「ううん、何にも。お刺身買って食べるぐらい。おせちってあんまり食べないかも」
そう答える。
何だかとっても寂しい。
今日はここにもひとり季節を大切にして、めんどくさくてもおもてなしをと
考えている人がいると嬉しくなった。
私は「やっぱりそうよね、日本人ですもの」と誰に言うでもなく独りごちて、
年末に向け、例年通り、おせち作りにいそしもうと考えている。
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