2017年5月13日土曜日

どしゃ降りのお献茶式

 
 
 
 
毎年、5月13日に行われる鎌倉八幡宮のお献茶式に行ってきた。
 
1月から通っている新しいお茶のお稽古場の先生からのお誘いで、
数ヶ月前に会費も納めて券をいただき、楽しみにしていたのだが・・・。
 
昨日は最高気温29℃で真夏を思わせるお天気だったが、
今日は大雨注意報がでる勢いのどしゃぶりの雨。
 
気温は最高気温が19℃だというので、暑すぎるよりはまだしもだとは思うが、
とにかくお献茶に出席するためのドレスコードは和装。
しかも、まだ5月半ば前なので、袷のキモノを着てくるようにと
新しい先生からお達しがあった。
 
朝、8時半に鎌倉駅の改札前に集合がかかっており、
5時半には起床し、準備を整え、出掛けた。
お社中のお仲間ふたりと待ちあわせ、まだ、しとしと降りの小町通りを黙々と
八幡宮右奥のお茶室へと急いだ。
 
戸塚からの横須賀線にはすでに何人もお献茶に向かうと思われるキモノ姿の
おば様達が何人も乗り合わせ、
9時から始まるお茶席めがけて前のめりに歩いていく。
 
昨夜遅くに前のお茶教室からご一緒の友人とLINEで話していたのだが、
とにかく新しく伺うことになった先生は茶道一筋の真面目な方なので、
雨が降ろうと槍が降ろうと「今回はやめにしましょう」とか
「キモノじゃなくて大丈夫よ」みたいなことはおっしゃらない。
 
覚悟を決めて、正絹のキモノにアイロンをかけ、衣桁に架けた。
ただし、二重太鼓の帯にはせず、傘の柄の名古屋帯を締めることで、
せめてもの私なりの遊び心を表現したつもり。
 
まず最初は酒心亭のお茶席の列に並んで、1席目に入室できたことで、
もうひとつの茶席も四巡目に入ることが出来た。
 
お献茶式そのものは八幡宮舞殿というところで
三木町宗匠という方がお献茶を点てられたということだが、
私達はそのお席には入らず、別室でお献茶席と同じお茶を頂戴した。
 
四巡目の入室を待って、
畳の敷かれた廊下に大勢のキモノ姿のおば様達が並んでいるところに、
お献茶式の後、そのお茶席のお正客を終えられた三木町宗匠が現れると、
ずらり並んだおば様達が驚いたような顔をして見あげ、そして、拝復した。
 
どこかで「大奥みたいね」と声がして、
本当にそのとおりだと思った。
 
宗匠というのは家元の下の位で、男性しかいない。
お家元ひとりではできない仕事を分担して、何人かの宗匠方が
表千家茶道の普及と運営に携わっている。
 
茶道をやっているといっても、お茶席を持てるぐらいのお弟子から、
私みたいに単にお茶教室に通うお弟子までいろいろあるが、
箱書き付きといって、
茶道具のひとつひとつに家元や宗匠のお墨付きをもらっているお道具が並ぶ
今日のようなお茶会に出席すると、家元制度の深淵を覗くことになって、
面白い。
 
そのお道具に箱書きをつけてもらう箔がつくけど、
お金もたんとかかる世界だ。
 
お茶席を持つ席主の好みで道具組みに個性が出る。
 
いずれの席もお献茶式の添え釜であることと、
五月の新緑の時期であることをふまえ、掛け物やお道具はもちろん、
花やお菓子も選ばれている。
 
炉から風炉へと移行するこの時期を意識して、
水へのこだわりもあるようで、いずれの席にも清々しい水を愛でる掛け物や
遠方から取り寄せた石清水そのものが用意されていた。
 
日舞や茶道や華道など、家元制度で成り立っている世界にどっぷり浸かって
生活そのものがそれを中心に回っている世界を、間近に観るのが、
こうしたお茶席だ。
 
非日常の地味なようで絢爛豪華、案外ドロドロしていそうな人間関係など、
ちょっと垣間見た思いで、3席を巡り終え、
雨脚の強くなった八幡様の参道に出た。
 
小町通りの中程で「ローストビーフ丼」の美味しいお店でお昼をして、
先生と4人でおしゃべりし、朝早くから始まった修行のような1日は終了した。
 
この世界にズブズブ入ることはないけれど、
年に1回、垣間見るのは楽しいかもと、
キモノの裾をはしょり、ヒモで縛って雨コートを着、雨の小町通りに出た。
 
外からは雨コートをさりげなく着たキモノ姿の婦人にしか見えないけど、
中は正絹のキモノを駄目にしないよう、裾をまくってヒモで縛っている姿が、
どこか家元制度の中で茶席を持つ人達とかぶって見え、
ちょっと切なくなった。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿