9月中旬に行われるはずの
陶芸の展示会用の器が焼きあがってきた。
2年前の9月に前回の展示会は行われ、
そこから2年間作り溜めてきたものだ。
もちろん他にもあまた作り
すでに友人の手に渡り、
お楽しみいただいているものも数多くある。
しかし、8月中旬に釉薬をかけた器は
展示会のメインの作品たちで
販売するつもりのないものも含まれる。
つまり、私が自分でパーティーの時に使ったり、
親族の集まりに使おうと思っていたもので、
ある程度、盛る料理も考えているものばかりだ。
しかし、ここへきて、
なんと展示会が中止になった。
8月下旬、先生が会員の意見を集約し、
コロナの感染状況が厳しいので、
今回は見合わせることにしたという。
「またか」という気持ちと、
「ここまで来て辞めるなよ」という気持ちで、
すっかり気落ちして、
テーブルの上に並ぶ器たちが不憫だった。
「そうめん鉢」は
酸化ナマコという紺色の釉薬を全体にかけ、
失透という白の釉薬を縁から流した。
あくまでそうめんの白が引き立つようにと考え、
色は控えめにし、
その分、器の外側に棒状の飾りを立体的につけた。
大きな鉢なのにあまり重くなく、
陶芸家としての技量が
上がったのではと思う作品になった。
同じく酸化ナマコをずぶがけといって
1色だけたっぷりかけた
相当長い角皿。
周囲3センチ幅の飾り部分があるのだが、
とてもきれいに焼きあがって、
もしかしたら10年間の陶芸人生の中で
最も出来のいい作品なのではと思っている。
既製品にはないぐらい大きな作品で
私はこの器には
ブルスケッタか鶏手羽先のオーブン焼きを
並べるつもりだ。
周りの3センチ幅の飾りは
紐状のものがランダムに貼られ、
繊細な作業が長時間、必要だったが、
何とか最後まできれいに出来上がった。
決してろくろでは成形できない器なので、
今回の展示の目玉作品のつもりだった。
少し前に焼きあがった丸い白い大皿とは
ペアになっている。
この2点は
ホームパーティのメインの料理をのせる器で
非売品だ。
他にも長い角皿のテープ使いのものや、
バスケットのような形に
黄瀬戸と織部の釉薬をかけた
フルーツバスケットなどもある。
陶器の器としては大物が出揃い、
いずれも無事に最後まで焼きあがったので、
展示会ではどんな風に並べようか、
下にひくクロスは何色にしようかなど、
いよいよ展示会にむけ心の準備が始まっていた。
それなのに、中止。
発表の場を失った舞台女優のように、
リビングに所在なく並んだ器を眺めて
大きなため息をつくしかない。
いまだに延期とも中止とも
煮え切らない先生の態度にイラつくが、
自分の個展とかではないので、
自らが動くわけではないのがもどかしい。
実際に料理を盛って、使ってしまった器を
展示会に出すのはためらわれるが、
そんなことを言っていては
大きな器たちが浮かばれないので、
誰かの誕生日とか、
お正月とかに使ってしまおうと考えている。
まずは長い角皿に
ブルスケッタを並べて、
ワインを抜栓し、
やけ酒でもかっくらおうか。
さぞやワインが五臓六腑に染みわたるだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿