2021年9月7日火曜日

文学と版画展 静かに開幕

 












9月6日の月曜日から、
銀座のギャルリー志門で
第7回文学と版画展が始まった。

昨年は孫2号が7月末に生まれたためと
コロナ禍で誰も観に来ないだろうと思い、
1回パスさせてもらった。

今年は1年延期の個展も開催できたし、
ギャラリーオーナーにも念を押されていたので、
出品しないわけにはいかない。

しかし、コロナの状況はますます酷くなり、
銀座はピリピリムード。

いつもなら搬入は前の週の土曜の夕方に
作家全員が集まって飾りつけを行うのだが、
今回は限られた数名とオーナーとで
棚を作り、陳列の配置を決め、
会場セッティングを行うという。

会期が始まれば、
初日はオープニングパーティが開かれ、
作家はひとりずつ作品の脇に立ち、
なぜ、この本を選んだかに始まり、
創作についてスピーチするのが習いだが、
今年はもちろんパーティはなし。

その時にそれぞれがどんな本を選んだのか、
どんな意図をもって制作したのか知るのが
とても楽しみだったのに、とにかく残念だ。

私は今回の本として、
澤田瞳子の「星落ちて、なお」を選んだ。

6月、まだ、新刊の初刷の段階で
新聞の書評か何かで
この本に興味がわき、
書店で手に取り、これでいくことに決めた。

装丁を考えるにあたって、
本の内容はもちろん一番大切で、
河鍋暁斎の娘に生まれた女性の生涯が、
どれだけ大きな存在の父親に振り回されたかという
内容だったことが
選んだ決め手になった。

「文学と版画展」なので、
版画家・河鍋暁斎の娘が題材であることは、
大いに私達、版画家の興味をそそると思ったからだ。

そして、6月から7月にかけ、
自分の作品の「長い雨」という新作を用いて、
装丁のデザイン案を考え、
ギャラリーを通して印刷所に渡した頃、
なんと「星落ちて、なお」が
直木賞を受賞した。

もちろんそんなことになるとは露知らず、
本の内容が自分の作品を使って
装丁を考えるのに好都合だったという理由で
選んだだけなのだが、
先見の明があった気分で、
私まで嬉しくなった。

元の装丁は
浮世絵がベタった一面に使われていて、
江戸時代の女性の様子を描いている。

今もこの本は書店で平積みされていると思うが、
さて、私の装丁とどちらがいいか。

自分ではなかなかいい装丁に仕上がったと
思っているのだが…。

昨日は他の作家たちがどんな本を選び、
どんな装丁を考えたのか、
実物を見たかったので、銀座まで足を運んだ。

今回は例年より小ぶりの作品が多かったらしいが、
静かで都会的な空間になっていて、
いい展示会場になったと思う。

1回目から思っているのだが、
版画作品の下に棚を設け、
その版画作品を使った装丁を施した本を
一緒に飾る。

その「文学と版画展」ならではの展示自体が
とても面白いし、
いい企画展だと思っている。

きっと今年はほんのわずかのお客様の目にしか
触れないと思うが、
2021年、秋のはじめに、
ギャルリー志門でいい展覧会があったと、
心に止めておこう。




















0 件のコメント:

コメントを投稿