2022年8月18日木曜日

器の嫁入り

 









8月初めに出来あがってきた注文の器を
お盆が過ぎてから
ようやく納品してきた。

注文は5月の末の陶芸展の時に受けていたので、
3か月もお待たせしてしまった。

この間に懸案だった一番大きな大皿と、
取り小鉢5枚と、白い中皿5枚、
白の取り皿5枚を新たに造り、
展示会の時にはすでに焼きあがっていた
2色かけわけの取り皿5枚と
ボンボニエール、植木鉢3組も加え、
丁寧にラッピングした。

懸案だったと表現した大皿は
造る上でハードルが高く、
無事に最後まで焼きあがるかが心配だったので
「懸案の」と言ったのだが、
それが首尾よく出来あがったことを
SさんにはあらかじめLINEでお知らせし、
車でお届けしに向かった。

Sさんのお宅にはすでに私が造った器は
何十点もあるので、
立派にコレクターさんといえると思うが、
食器棚の一画を占めるマイ器のラインナップに
あらたにこの大皿含め、
16点が加わることになった。

もうひとりの友人Fさんは
数はSさんには及ばないが、
やはり相当数、すでにご購入いただいていて、
とても丁寧に毎日使っていると報告を受けている
大切なコレクターさんだ。

Fさんも、Sさん宅で待っていてくださり、
ご注文の白い中皿5枚と植木鉢を
お求めいただいた。
(白い取り皿は後日のお届け)

Sさんはお宅に伺うと
決まってこれまでにお嫁入りした器を使って、
日本茶や
お菓子やフルーツを出してくださる。

そうやって「こんな風にこの器は使って
とても便利しているわ」と
私に見せてくださるのだ。

やはり、作り手にとって
「嫁入り先でうまくやっているのか」
「どんな人にかわいがってもらっているのか」は
とても気になるところで、
それは版画であっても器であっても
同じことだ。

だから、私が求めた着物を着て、
写真を撮ったりブログにアップしたりして、
織元さんに送るのは
作り手だったらそれを知りたいだろうと
思うからに他ならない。

Sさんのところで
梨が盛られたオーバル型の器は
我が家では焼きナスやゴーヤチャンプルなど
主に2番手のおかずがのっているので、
果物をのせることがとても新鮮に感じたし、
ティアドロップ型の小皿にのせた
ゆず風味のゆべしは
コロコロととても可愛かった。

そして、包みを開いて
「懸案の大皿」の実物を見たSさんは、
抱きしめて大喜びし
「大切にします!」と言ってくれた。

実はこの大皿だけは
他とは1桁違う値段をつけ、
LINEであらかじめお知らせしてあったのだが、
それもすんなり受け入れてくれ、
「誰にも渡さないわ。さあ、何を盛ろうかしら」と
思いを巡らせるように
胸に抱いて天を仰ぎ見た。

こうして主役の大皿は
白無垢姿でお嫁に行き、
S宅の家風に染まって、
何か豪勢なお料理をのせてもらえるに違いない。

また、2色かけ分けの和モダンシリーズの
取り皿と取り小鉢は
「こうしてこのふたつを組み合わせてもいいわね」
と、新しいスタイルでテーブルに並んだ。

こんな風に私の手元を離れた器たちは
嫁ぎ先の新しいテーブルで
新しい器人生?を歩みだす。

時折、お邪魔する度、
その新しい器人生を送っている器たちを見て、
嫁の親としては
ホッと胸をなでおろすのである。

今日も心密かに
「うまくいきますように」と声をかけた。












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