2022年9月7日水曜日

「熱狂の夜」第5夜

 













石田泰尚スペシャル「熱狂の夜」と銘うたれた
五回連続のコンサートの最終日を迎えた。

1回目は5月10日(火)
ゲストにチェロの山本裕康氏を招いての
無伴奏
基本、石田様ひとりで
会場の2000人を相手取り
このコンサートは幕を切った。

2回目は6月10日(金)
ピアニストの外山啓介氏とのデュオ
とはいえ、やはりメインは石田様
腰の低い好青年外山さんは
ピアノのパートとしてもデュオというより
伴奏という雰囲気だった。

3回目は7月4日(月)
YAMATOとのカルテット
この回あたりから
石田様が自由に解き放たれ
古い仲間とご機嫌な演奏になった。

4回目は8月19日(金)
遂に石田組登場。
石田様が組長として集めた組員を従え、
石田様の本領発揮。
この日は私も白黒の格子柄の着物で
攻めに転じた。

最終日の5回目は9月6日(火)
とうとうこの日が来てしまった。
コンマスとして鳴らした神奈フィルと
川瀬賢太郎氏の指揮で
ヴァイオリン協奏曲を圧巻の演奏。
私は最後もやっぱり着物だろうと
初おろしの縞柄の帯を締めた。

もちろん5回とも同じ友人と
この素晴らしい演奏会を共にしたので、
最後は早めに集合して、
最寄り駅の椿屋カフェで名物のカレーと
季節のケーキ・マスクメロンのショートケーキで
腹ごしらえし、会場に繰り出した。

思えば、1回目の5月半ばから
回を追うごとに暑さは増し、
昨日は9月とはいえ、
蒸し暑さMAXだったし、
石田様の熱量もMAXだった。

会場は2000名も入る大きな
ミューザ川崎だったのに、
毎回、90%を超えるお客の入りで、
そのうちの1000人以上が5回連続のチケットを
購入した熱いファンだったという。

もちろん私達もそのひとりだったわけで、
今、もっともノッテいる男・石田泰尚に密着し、
音楽の力に大いに酔いしれたというわけだ。

これを企画した神奈川芸術協会も気をよくし
なんと再来年にも同じ企画が決定し、
しかも次回は第6夜まであるという。

これですっかり石田様は
ミューザ川崎のドル箱スターだ。

さて、話を昨夜のことに戻すと、
前回は着物そのものを石田様のプライベートと
リンクさせ、出かけたのだが、
目ざとい友人が
「まるでペアルック!」と
写真を合成してくれた。

今回はペアルックというわけではないが、
石田様が好きそうな
地味派手で粋なテイストの組み合わせにしてみた。

この「熱狂の夜」のポスターに合わせ、
写真は横顔から後ろ姿を中心に
撮ってみたがいかがだろうか。

前回からいきなりカメラマンにさせられた
友人にしてみれば迷惑な話だとは思うが、
優しい友人のご厚意に甘え、
今回は二重顎に力を入れ、
なるべくシュッと見えるよう頑張ったつもりだ。

しかし、会場の中の写真撮影は
今回は厳戒態勢。

入場まもないまばらな観客の時であっても、
舞台の上にいるひとりふたりの楽団員と
楽譜が写ることを恐れて、
カメラを構えると会場スタッフが飛んできて
制止されてしまったので、
今回は会場内での着物姿は無し。

むりくり撮った1枚が
楽団員の人数分ずらり並んだ椅子と
コントラバスとハープがある舞台風景。

この後、40数名の神奈フィルメンバーが入り、
指揮者の川瀬さんが入り、
最後に白いジャケットの石田様が入場だ。

曲目は
1部がフィリップ・グラスの
ヴァイオリン協奏曲第1番

2部がウィントン・マルサリスの
ヴァイオリン協奏曲

いずれも初めて聴く曲だ。

前半の曲は、一定の音型をひたすら繰り返す
「ミニマル・ミュージック」なる協奏曲。

同じ音型の繰り返しは眠気を呼びやすいので、
周囲には気持ちよく眠りの世界に
いざなわれている人も多かったが、
私の脳裏には
スペインのオリーブ畑が延々と続き、
小高い丘には悠然と風車の白い羽が
風を切って回っていた。

2部のマルサリスの方は
今回の企画の大トリを飾るにふさわしい大曲で、
オーケストラの曲とも思えない現代音楽を
通常のオーケストラの楽器以外も駆使し、
壮大かつエキゾチックな世界を
繰り広げていた。

私の脳裏には、地理的には南に下り、
モロッコの市場の真ん中に張られたテント、
サーカス団の入場行進が見えた。

象がまず入場し、そのほかの動物も続く。
化粧の濃い赤い舞台衣装を着た女性は
目の前を通ると強い異国の香水の香り。
あれは空中ブランコにでるのだろうか。

そんな妄想が広がり、
舞台の上では、最後列の男性が
警笛のような笛を甲高い音で吹いている。
隣ではタンバリンも頭上高く持ち上げられ、
正面から叩きのめされている。
その前の一列、
見たこともない大きな管楽器の一群が
やおら立ち上がって演奏し出し、
大音量が会場奥の壁から降ってくる。

とても素人の私が説明できるような曲ではないが
ジャズとクラシックの融合と解説にはある。

石田様のお気に入りで、
2021年2月に
川瀬さんの指揮で日本初演を果たした時、
「必ずどこかでまたやりましょう」と
約束した曲だとか。

そんな肝いりの大曲を演奏し終え、
会場はスタンディングオベーションの人人人。
惜しみない拍手に包まれ、
石田様の口からは「感動しました」の
言葉がもれた。

演奏家冥利に尽きたと言わしめた一夜は
2000人の観客を魅了し、
蒸し暑い夜を一層熱くして、
こうして幕を閉じた。

最後のMCで
「ついさっき、再来年、この企画を
またやることが決まりました」と
石田様から挨拶があり、
私たちは終わってしまう寂しさと共に
次につながる希望を見出した。

また、その時までに私は
石田様のお目に留まるような着物を求め、
いそいそとふたりで会場に向かうことだろう。

その時もまた、
入場前に友人はカメラマンをやらされて、
あきれ顔をするのかもしれない。















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