11月23日、24日、25日の3日間で
『雨だれ』の試摺りと本摺りを決行した。
12月に入ってしまうと何かと気ぜわしく
1日中、画室に籠って作品と向き合うことが
難しくなっていく。
11月のカレンダーとにらめっこしながら
ここしかないと踏んで
3日間で、試摺りから本摺りまでやり終えようと
考えるに至った。
通常、試摺りは1回やって気に入らない部分を
取り出し作業でもう1度摺って
はめ込んでみたりしながら
じっくり本摺りに向け検討するのだが、
今回はそこまでのゆとりがないかもしれない。
事前に使う色のイメージを膨らませ
試摺りに一発オーケーを出せるよう
11月中頃から、頭の中は摺りに向け活動中。
まず、23日は
本摺りと同じ和紙の1枚を
湿すことなく多少のズレは気にせず
とにかく全部摺る。
それが試摺りである。
摺りあがった試摺りを眺めながら
色を微調整し、版と紙片にメモし、
版の汚れを呼びそうなところを
削る。
そこまでが23日の仕事。
1歩も家から出ることはなかった。
24日はまず、本摺り用の和紙5枚を湿す。
幸い、試摺りに1枚しか和紙を使わなかったので
見当を切って準備した6枚の和紙の5枚が
本摺り用に使えることになった。
和紙を湿らせてしまうと
5時間は本摺りに使えないので
十分、和紙の芯まで均一に水が浸透するまで
待つことにする。
その間に絵具の調合をし、
家事を済ませ、
道具を効率よく使えるように配置し、
ホームページ用のブログを1本書いた。
7時半に和紙の湿し用の重しをかけたので、
12時半にどんな具合か覗いたら
いけそうだったので本摺り開始。
24日のミッションは、
まず、雨のパートを摺り、
次の背景の下半分の土色を摺り、
紫陽花の花びらの色を
いけるところまで摺ること。
木版画は紙を湿したまま摺り続けるので
絵具が滲んで困らないよう
なるべく明るい色から摺る。
夕方5時まででとりあえずガス欠になったので、
夕飯づくりに移行し、
「オテル・ド・ミクニ」の三国さんのレシピで
鶏むねとポテトのスパイシーローストと
カプレーゼを作った。
なにもこんなに忙しい日に
新しいメニューに挑戦しなくてもと思うが、
案外、料理は気分のリフレッシュになる。
ダンナは当たり前のような顔をして
赤ワインを抜栓し
何食わぬ顔で人の作った料理を
食べ進めていく。
もはや腹も立たない。
私は自分の腹を満たしたところで、
夜7時半から9時まで
もうひと摺り。
とにかく行けるところまで行って
明日の作業を減らしてから寝ることにした。
24日も1歩も外に出なかった。
外は23度の暖かさだったらしいが
夜から急に冷え込むというので、
羽毛布団にくるまって寝ることにした。
なにしろ、1日中シャッターを下ろして
陽の光の射さないところにいるので、
世の中のことが判らない。
25日、朝起きると体中が痛い。
大丈夫かなと心配になったが
ここで辞めるわけにもいかず、
朝食をとったら、案外、元気になった。
さあ、続きの摺りは
1番大きな背景のパートから。
この作品のテーマになっている
ショパンの『雨だれ』の楽譜が彫られた
デリケートでしかもデカいパート。
気力と体力と集中力がいる。
それにしても
昨日から、ひっきりなしに
ピコンピコンとメールの着信音が鳴る。
お茶のメンバーが
12月3日のお茶会の段取りのことで
連絡してきているのは分かっている。
が、今は申し訳ないが
本摺りに集中するしかない。
必要最低限の返信だけする。
なにせ、この作品、
もしかしたら個展のDMに使うかもしれない
重要な作品なのだ。
「これが終わったら、お茶会も頑張りま~す」
と、心の中で答えつつ、
目の前の版に向かった。
背景の楽譜付きパートの次は
またしても山場の黒い葉っぱ。
線の彫りがパキッと摺りあがることが重要。
しかも黒なので
ちょっとしたミスも許されない。
しかし、それが摺りあがると
作品の全容が見えてくるので、
9合目まで登った感じになる。
最終のコーナーは
紫陽花の花びらの2版目と
花の中央部分。
そこの色合いの微妙な匙加減で
作品の良し悪しが決まると言っても
過言じゃないぐらいの大事なところなので、
かなりお疲れもMAXだったが
老体にムチ打ち頑張った。
こんな感じで3日目も1歩も外にでなかった。
頭の中は目まぐるしく動き、
体は究極に酷使したが、
何とか大きな作品5枚が仕上がった。
皆さんの目にはどう映っているだろうか。
自画自賛でいえば、
「もしかして、これDMいけんじゃない!?」
そんな風に感じている。
これから
鶏手羽元のオーブン焼きを作って
ビールをしこたま飲むことにする。
お疲れ!!!
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