2024年9月30日月曜日

『都民の日』のためのばぁばご飯

 

















10月1日は『都民の日』
会社はあるが、区立の学校は休みである。
更に一昨日の日曜日は
孫1号の小学校は運動会だったので、
月曜日が振り替え休日になり、
今日明日と2日続きのお休みである。

とはいえ、
親の仕事までお休みになるわけではないので
孫1号の小学校と孫2号の保育園は通常通り。
違うところはというと
孫1号は正確には学童保育(小学校内にある)に
行くことになるので、お弁当が必要だ。

そんなわけで
月曜日の今日、娘から緊急のHELP要請があり、
神奈川県民のオーママが駆り出され
お弁当アイテムを作ることになった。

『都民の日』なんて知らんがなと
言いたいところだが、
まあ、なぜか仕事も入っていなかったので
引き受けることにした。

実は新しいNO.1の称号が取得でき
HPに張り付けたせいか、
先週だけで新しいクライエントさんから
4名もカウンセリング予約が入った。
(既存のクライエントさんもいるわけで…)

この感じは
最初のNO.1が取れた2月前半と同じような
ペースだったので、
今回もこれのせいと考えられる。

人は何か探している時に
「NO.1受賞!!」みたいに書いてあると
何のNO.1なのかが分からなくても
何か賞を取った人なんだと思って、
じゃあ、ここにしてみようと
それが決め手になるようだ。

モンドセレクション金賞受賞とか書いてあると
きっと美味しいソーセージだろうと
思うのと同じ心理だ。

日本人は権威に弱いし、
口コミでいいと書いてあると
人のうわさにも惑わされる傾向がある。

このNO.1は
もちろんリサーチ会社も通しているし
リーガルチェックといって
弁護士の判断も仰いでいるので、
単に張ったりかましているわけではないが
それにしても、効果はあるといっていい。

そんな忙しい状況にあって
ぽっかり空いた月曜日、
新ネタ2種類を含めた9品を作りに
昼前に電車に乗った。

本日のメニューは
「サバの味噌マヨ焼き」
「甘辛ごまチキン」
この2種が新ネタ

「ポテトのチーズ焼き」
「コーンポタージュスープ」
「炊き込みご飯」
「海苔巻き卵焼き」
「タラのチーズ味フライ」
「アスパラとエリンギの肉巻き」
そして、
「筑前煮風野菜の煮物」

最後のひと品は
「きんぴらごぼう」というリクエストだったが
買ってあったのが細いサラダごぼうだったし、
筍を炊き込みご飯に使い忘れてしまったので、
それを消化するため、
人参とごぼうと筍とで煮物にしたというわけ。

基本、娘たちが、ばぁばご飯のために
買い出しに行って準備された食材は
使い切って欲しいのだろうと
勝手に判断し、
冷蔵庫の野菜庫には何も残らないよう
献立を変更することもある。

味付けをきんぴらごぼう風に
筑前煮よりは甘辛くすることで
娘がお弁当に入れようとイメージしたものに
近づいたので、
きっと孫たちの口にも合うだろう。

新ネタの『さばの味噌マヨ焼き』は
魚好きの孫1号のためのさばのバリエーション。
前回は「サバの蒲焼」を作った。
『甘辛ごまチキン』も
味がしっかりしているので、
お弁当向きの一品だ。
隠し味のニンニクが効いていて
我が家でもやってみようかなと思う一品だった。

そして、何より、
秋と言えばの『炊き込みご飯』
4合のお米に対して
大量の具材を入れたので、
炊きあがったら、炊飯器の蓋にくっつくほど
膨れ上がったが、
「秋と言えば、これこれこれ」と思う、
我が家の秋の定番ご飯だ。

明日のお弁当箱には
この炊き込みご飯がぎゅっと詰められ、
脇を
さばやらチキンやらが固めることになるだろう。

卵焼きを入れないわけにはいかないと
リクエストにはなかった海苔巻き卵焼きも
作ってはみたが
今までで一番へたくそな海苔巻きに
なってしまったので、これは失敗作である。
(味には何の問題もないので
こういうものとしてお弁当箱には入るだろう)

最後に孫1号が初めてまだ2か月なのに
何だか難しい指使いのピアノ曲をやっていると
いうので、弾いてもらった。

途中で右手を飛び越して
左手が右手より右の音を弾く。

褒めるのが上手な先生におだてられながら
孫1号は今、ピアノに夢中らしい。

早くも「とても上達が早いので、
次はそろそろペダルのついたピアノを
ご用意ください」と言われたとかで
先立つものがものを言う
子育てビジネスを前に
秋の風が若夫婦に吹いているようだ。

くわばらくわばら
娘夫婦のお財布事情には我関せず。
オーママは都民の日のご飯を作って
さっさと神奈川県に帰っていったとさ!







2024年9月27日金曜日

大満腹になる懐石弁当

 









ようやく秋がやってきた。
今日は朝から霧雨のような雨が降っている。
気温が23℃前後しかないので
半袖の薄いセーターでちょうどいいくらい。
揃いのカーディガンを持ち歩いていたが
着ると暑いなと感じる程度の気温だった。

今日は11時ごろ、陶芸工房で友人と落ち合い、
まずは友人がまだ観ていない
先生の個展を観てから、
川崎の「えん想」なるお店でランチをした。

先生の個展は
例の12枚のはがきに印刷された
先生のこだわりの文字への考察と
64個の小鉢に入れられたティランジア。

会場には先生とお世話係の会員さんとがいて、
もうひとり、先生の友人らしい男性が
観に来ていた。

私の方が1歩先に会場に着き、
すぐ後に友人がやってきた。
特に先生から感想を求めるでもなく
友人の方も何か意見や感想を述べるでもなく
静かに鑑賞している。

壁には先生の古い友人という人からの
「個展の感想」がプリントアウトされて、
貼り出されていたので、
手に取り読んでみると、
その小難しい先生の世界観を見事に
読み解いて「腑に落ちた」とあるので、
やはり昔から先生は小難しいことを考えるのが
好きだったんだなと判る。

だからといって
最近になって先生と知り合いになった会員が
同様に「腑に落ちる」わけではないので、
友人も小首をかしげながら
結局、何も言わずに私達は工房を後にした。

外は傘を差すほどでもない程度の小雨が
降っていた。
14~15分歩いて、
本日の目的地「えん想」という
炭火焼と懐石料理とうたっている料理屋さんに
到着した。

入るとまず、にじり口の奥に茶室がある。
脇を通って茶室の奥は
普通のテーブル席があるフロアーなので、
ランチタイムの懐石弁当を予約していた
私達はここでいただくことになる。

この店はまだ開店してまだ日が浅く、
川崎に住む友人も初めての来訪で
どんなお料理を食べさせてくれるのかも
知らないが、
お茶室もあって懐石料理を出すということで
お茶をやって長い私を誘ってくれたのだ。

亭主は裏千家でお茶をしているらしいが
歳の頃から行って
脱サラか、定年後に
このお店を奥さんとふたりで開いたのではと
思われる。

どんなお料理が出てくるのか、
お茶室は借りてお茶会ごっこが出来るのか
興味は尽きないので、
テーブル席の横の水屋や茶室を覗いていると
奥さんが最初のお膳を運んできた。

懐石料理で出される最初の折敷と同じで
飯椀・汁椀の向こうに向付があり
中に鯛とマグロのお造りが入っている。

ご飯は炊きたての蒸らしの入っていないご飯
お汁は赤みそで、具は生麩にからし。

そして、懐石用のお弁当箱が運ばれてきて
中にはぎっしりお弁当のおかずが
入っていた。その量が半端ない。

通常、こうした塗りの四角いお弁当箱は
中が4つの仕切りで区切られ
更に小鉢が入ってちょこんと料理が盛られ
松花堂弁当として出されるのだが、
ここのお弁当箱は
仕切りも小鉢もとっぱらっているので
(3つ汁気のあるものを小鉢に盛っているが)
とにかくこれでもかという種類の
お惣菜が詰め込まれている。

主婦はすぐこれを全部手作りしたらとか
これだけの食材を買ったら
どれだけ大変かを想像してしまうので、
見ただけで感激してしまう。

目移りしながら
迷い箸にだけはならないように
次々、口に運んでみたが、
これがどれも薄味ながら滋味深く
上手に出来ている。

お茶席での懐石料理と同じく、
最初の炊き立てのご飯が食べ終わるのを
見計らって
おひつにちりめん山椒炊き込みご飯が
運ばれてきて、
更に差し替えの椀物として
はものお汁が添えられた。

亭主がこんなお店をやりたかったという
夢を具現化したようなお店で、
そこここに亭主のこだわりを感じた。

最後にはお抹茶と練り切りが出されたが、
その練り切りも亭主が成形し、
出来立てを出したものだと判る。

どうやら奥さんの方は
ご亭主の夢につきあわされて勉強したという
感じで、
抹茶の点て具合など、まだ、素人っぽいが
新しく開いたお店を
ご夫婦でやっていこうということらしい。

しかし、これだけの内容のお弁当に
ロックの梅酒まで注文して、
ひとり2,360円は安すぎるだろう。

さすがに夜になるとこうはいかないし
懐石料理のコースを頼むと
それなりの値段にはなるが、
それにしても大盤振る舞いだ。

私が何度となく茶室を覗き込んでいるので
亭主が「ここでお茶事をなさるなら
5人ぐらいのお客様に亭主という形で
お茶事の真似事はできますよ」とのこと。

すでに11月の炉開きと、
1月の初釜の季節は
土日は予約で埋まっているらしいので、
「平日ならまだまだ受け付けます」と
言われた。

ランチタイムの大盤振る舞いで
あっという間に潰れないでほしいと
思ったが、
その調子なら大丈夫かもしれない。

いずれにせよ、
川崎の商店街の中、
八百屋さんや焼き鳥屋さんやらの
はす向かいに
こんなに美味しい懐石料理の店、発見!

友人と仕切り直して
次は鯛めしの懐石料理か
ふぐの懐石料理にトライしようと
いうことになった。



















2024年9月25日水曜日

「熱狂の夜 第4夜」までの長い1日

 











昨日の私は1日が3部建てになっていた。
午前中は新患クライエントのカウンセリング
午後は映画「スオミの話をしよう」
夜は「熱狂の夜 第4夜カルテット」

最初に決まっていたのは
「熱狂の夜」石田様のコンサート
次に決まったのが
新患のクライエントさんのカウンセリング予約
最後は
映画鑑賞「スオミの話をしよう」

本当なら、自分が遊びにいく予定がある時、
時間的余裕があるなら、
一度、家に戻って家人の夜ご飯を作って
自分だけおめかしして
コンサートにでかけるところだ。

しかし、幸い、昨日は
家人がゴルフに行くらしく、
前の晩にごそごそ支度をしていた。
「明日はゴルフなの?」と訊くと
ちょっとバツが悪そうに
「そうだよ」という答えが返ってきた。

遊びに行く人のために
わざわざ途中で家に帰ってきてご飯を作る
そんなデューティは私にはないはず…。

そう思っているさ中に
夜、コンサートに一緒に行く友人から
「午後イチで映画も観ませんか」という
お誘いがかかった。

私はその誘いに、渡りに船とばかりに
乗っかって
午前・午後・夜と3部構成のスケジュールを
組んだというわけだ。

やってみるとこれがなかなか大変で、
最後のコンサートの途中で
睡魔が襲い掛かってきたが
なんとか夜9時半の終演まで
たっぷり丸1日、楽しむことが出来た。

午前中のカウンセリングは
初めてのクライエントさんだったので、
1番、神経を使う。

しかし、その方のダンナさんの
「君はちゃんと認知行動療法をやり続けて
自分を変えることに努力すべきだ」という
強い勧めがあっての来訪だったので、
そのことを重く受け止め
今の自分を変えるため
暫くはセッションに通うことになった。

最近、NO.1の称号が
新たな内容で獲得できたので、
その効果が表れたのかどうか、
今週だけで
3名の方から初めてのカウンセリング依頼が
舞い込み、驚いているところだ。

しかし、友人からのメールで
「朝起きたら、体調不良になっていたので、
夕方からのジョインでお願い」と言ってきた。

昨日まで行く気満々でも、
急に秋になってしまって
寝冷えしたり、夜間頻尿になったり、
微妙なお年頃なので、
「了解です。気にしないで。
また後ほど、お目にかかりましょう」と
返信した。
(友人の場合は首凝り肩こりがひどいと言う。
彼女の名誉のために。悪しからず)

というわけで、映画はひとりで観た。

三谷幸喜の作品でさぞや面白いだろうと
期待したが、さほどでもなかった。
5人の男とキャラを変えて結婚していた
スオミをいう女性を長澤まさみが
演じている。

ひとり5役みたいな感じで
相手が変わるところころ豹変するスオミ。

彼女を愛した5人の男たちは
職業もキャラクターも年齢も全く違う。
そのせいで5人の役者の誰が上手いか下手かが
如実に表れてしまう。

遠藤憲一・松坂桃李・小林隆・西島秀俊
そして、坂東彌十郎が5人の夫
他に西島秀俊の部下役の瀬戸康史
坂東彌十郎の世話係の戸塚純貴

そうそうたる役者が揃っているが、
個人的には彌十郎さんと瀬戸康史が上手いと
思った。

やはり、その役者がやった過去の出世作の
キャラを思い起こさせてしまうと
新味がない。

その夫たちやら、長澤まさみはさておき、
1番うまいと思ったのは
スオミの幼馴染で神出鬼没な女を演じた
宮澤エマだ。

スオミが1人のキャラの違う女性だったのに比べ、
エマの役は5つの違う職業の女性なので、
その激変ぶりが笑える。

三谷幸喜監督はヘタな役者は使わない主義だが、
そのお眼鏡にかなった女優に成長したと
判断したからこその起用だと思う。

夕方、元気になった友人と
最寄り駅のホームで集合し、
最後の夜の部に突入。

まずはミューザ川崎の近くにある
つばめグリルで有名なハンバーグプレートを
注文。
しっかり早めの夕食で腹ごしらえをした。

昨夜は「熱狂の夜 第4夜カルテット」だ。
カルテットとは4人組のこと。
石田様の4人組と言えば、
言わずと知れた「YAMATO」の4人だ。

「YAMATO」での石田様は
石田組や他のアーティストと組んだ時に
見せるのとは違う顔をしている。

他ではみんなが敬意を表する怖い存在だが、
YAMATOのメンバーの時は
4人が平等というか、
石田様だけが突出していて
みんなを引っ張っているというわけではない。

もちろん石田様がイニシアティヴをとって
彼が決めている部分は多々あるのだろうが、
演奏している4人は各パートをリスペクトし、
協調してひとつの音楽世界を築いている。

ファースト・ヴァイオリン
セカンド・ヴァイオリン
ビオラ
チェロ
それぞれの楽器の音が響き合っており、
とりわけ、阪田さんのチェロの温かな音色が
美しく、柔らかい。

今回のコンサートの前半は
プッチーニとグリークの
弦楽四重奏曲だった。

後半はクリムゾンの
「クリムゾン・キングの宮殿」全曲

そして、ピアソラの
「忘却」と「リベル・タンゴ」

ピアソラ好きの私としては
最後の2曲のために
1時間半余りを眠気と戦ったといっても
過言ではないが、
最後の2曲はそれにふさわしい美しさと
力強さをもって、私を圧倒した。

その時点で、時はすでに夜の8時55分。
コンサートの終演は9時を予定していたが
そこから更に約30分のアンコール。

「屋根の上のヴァイオリン弾きより
サンライズ サンセット」
「ビートルズ・メドレー」
「ディープパープル Smoke on the water」
(松岡あさひ編曲)

サービス過剰・疲労困憊・限界突破

途中、アンコールの最初の方で
チェロの阪田さんの左手がつったようで
その後のアンコールの間中、
左手をブルブル振って痛みを和らげていたから
相当、ひどく痛めたんじゃなかろうか。

終演は夜9時25分。

長い1日はこうして
10時15分、帰宅したことで無事に終了した。

明日の私の予定は
午前は新患のカウンセリング
午後はお茶のお稽古

仕事と趣味との両立は
それなりに努力と根性と体力がいる。

寝冷えと夜間頻尿にならないために
薄い羽毛布団とタオルケットを
しっかりかけて寝ることにしよう。
そう思って、11時半、ベッドに入った。






















2024年9月23日月曜日

難解な展覧会

 











私が通っている陶芸工房の先生が
工房を会場にして、個展を開くというので、
会期前日のオープニングレセプションに
行ってきた。

声がかかっていたのは
工房に会員として所属しているメンバーだけで、
数週間前から表が貼られ、点呼がとられていた。

先生は1年ほど前にも青山で個展をして
その時は新作のスクエアシリーズという、
器を並べ、展示した。

その個展の会期中、
私も会場係としてお手伝いに行くことがあり、
その時にじっくり作品も鑑賞した。

しかし、この個展の時、工房の会員で
青山まで展覧会を観に行った人が
先生の期待するほどにはいなかったようで、
そのことが先生にはかなり
ショックだったらしく
個展の後、ずいぶん嘆かれていた。

そこで、今回はみんなが通う工房を会場にし、
是非とも観てほしいとアピールし、
何なら、「会員なら必ず先生の作品は
見るべきだろう」というメッセージを
発信した。

この工房の会員は美術系の大学を出たり、
美術系の仕事に就いている人も少なからずいる。
もちろん、ごく普通のサラリーマンもいるし
主婦もいる。

工房では、私は木版画の作家として
アーティストであるということは
会員にも周知されているので、
この機会に
そのアピールの応えないわけにはいかない。

今まで、先生には何度も私の展覧会には
来ていただいているし、
会員メンバーも何人も来てくださっている。

なので、点呼の表には、真っ先に〇をつけ、
昨日は差し入れの乾きものを持って
夕方4時前に会場入りした。

会場は薄暗闇に照明を落とし、
中央に2台セッティングされたテーブルには
64株のティランジア(植物の名)の入った器が
整然と並んでいた。

工房の奥にはすでに来ていたメンバーが
10名ほどいて、
まずはケースに入った12枚のカードを渡され
芳名帳にサインし、会費を払うと
着席を促された。

誰も何も言わず、
4時の定刻までに20名ほどが集まり、
やや怪しげな雰囲気の夜会が始まった。

そこから先生の哲学的なというか、
こだわりの強い現代美術への自説が展開され、
皆は静かに聴いている。

内容は12枚のカードの裏に小さな文字で
びっしりと書かれていることの解釈なのだが、
その内容そのものがかなり難解なので、
皆、頭に???マークを浮かべながらも、
先生はふだんからそんなに小難しいことを
考えながら生きているのかと少し驚いた。

そして、最も驚いたのは、
先生が
そのティランジアの入った小鉢が並んでいる様や
自分が好きな文字「自」「孤独」「無と空」
「時」「結界」「気」などに対する考察を
誰よりも工房の会員に観てもらいたいと
思っているということだった。

先生は50年も美術制作に携わり、
高校の美術教師の職にあり、
工房は
自分の制作のアトリエであり、
会員は工房代を払うための資金源ぐらいに
考えているのかと思ったら、
一番に観てほしいのが会員だったり
古い友人だったりするというので、
その部分に驚いたというわけである。

なぜなら、会員は基本、自由作陶で
先生から手取り足取り教えてもらったことがなく
出来た器に対しても
褒めてもらったり、認めてもらった覚えが
あまりないからだ。

それが、今回は素直に「会員LOVE」と表明し、
必ず観て、意見や感想を聴きたいという。
それならば、真っ先に行くべきは
古株でもあるし、アーティストでもある
自分かもしれないと思った次第である。

先生の1時間にも及ぶご高説の後、
静かに聴いていた会員は
テーブルに近寄り、
それぞれが感じたことを話したり
質問したりした。

私の頭の中には
「承認欲求」と「自己肯定感」というふたつの
言葉が浮かんでいたので、
「心理カウンセラーだからかもしれないけど、
このふたつの言葉が脳裏に浮かんで、
先生が私達を大切に思っていることが
よく判りました」と伝えた。

私は13年間もこの工房で土を練り、
自分の造りたいものを造って
先生に焼成をお願いしてきたけど、
その他人の造った器をひとり焼きながら、
会員のことや工房の運営のことなど考え、
大切に思っていらしたんだと
初めて気づいた気がする。

個展の作品自体は
12枚のカードに書かれた内容も含め
同感できる部分も
なかなか理解しがたい部分もあったけど、
遠巻きにしかしてこなかった先生との距離が
ここで少し縮まったのを感じた。

先生は現代美術家として
頭で考えて作品を生み出し、
私はもっと生活に根差したところで
作品を生み出しているが、
先生が払う私の版画作品への敬意と同じぐらい
私も先生の生き方に関心をもっても
いいのかもしれないと思った。

























2024年9月22日日曜日

化粧泥の釉がけ

 








9月22日の土曜日の午後は
陶芸工房の3か月に1度の釉がけの日だった。

私は午前9時から12時まで
カウンセリングのクライエントさんが入っていたので
それなりの服装で行かなければならず
ロングスカートに白Tシャツで出かけた。

その程度の服装でも
釉薬をかけるとなると
かなり足手まといな服装で
重たい攪拌機を持って、両足を広げ
大きなバケツをはさむように座っているので
釉薬の飛沫が情け容赦なくスカートの裾に
飛び散ったが仕方ない。

仲間のメンバーはもちろんデニムのパンツ着用で
釉薬をかける日ばかりは
汚れ仕事は飛沫やむなしの覚悟で来ている。

釉がけの日は、まず、工房に着くと、
自分の器を手前に集め、
スポンジで汚れを落とし、
荒めのヤスリで
素焼きの時にこびりついた余計な部分を
削り落とす。

次に撥水剤と呼ばれる液を
釉薬がついてもらっては困る部分に塗布。

そして、いよいよ必要な釉薬を攪拌し、
底に沈殿して水と分離しているものを
釉薬として使えるよう均一に混ぜる。

今回、私は
化粧泥を使った新作のシリーズと
受注作品の湯飲みの2パターンを
釉がけすることにしていた。

透明釉を化粧泥に、
失透(白)と織部(緑)と酸化ナマコ(紺)を
湯飲みにかけるため、
合計4種類の釉薬の攪拌を
しなければならなかったのだが、
メンバーで同じ釉薬をかけるつもりの人と
相談の上、手分けして攪拌するので
結局は2種類の攪拌を担当することになった。

昨日は、同じ時間帯をとっている4人が
全員揃ったので、
そのあたりは大助かりである。

友人とは
朝から大谷翔平が51-51の大活躍だった話や
「今日、大相撲の大の里が勝って
優勝を決めれば
大関昇進間違いなしよね」という話など、
おしゃべりも大盛り上がりだったが
同時に手も口も動かして
スムーズに作業は進んだ。

攪拌の順番待ちの間には
前回、作陶した4枚の器の削り作業を入れ
素焼き待ちの棚に並べることが出来たし、
釉薬のかかった器の乾燥を待って
高台についた釉薬を落とす工程に進んだ。

ここを丁寧にしないと
釉薬が垂れて、電気釜の中板にくっついたと
先生に怒られるのがオチなので
要所要所、慎重に事を進める。

工房から我が家までは約1時間かかるので、
何としても4時半には工房を出て
今日こそは、オンタイムに大の里と
大関・豊昇龍の一戦を観なければと思い、
最後は2倍速の巻きで作業を行い、
掃除をこなし、工房を出た。

脱兎のごとく飛び出して電車に乗ったお陰で
5時過ぎには帰宅し、
そこからの後半戦はほとんど観ることが出来た。
大の里・豊昇龍戦は結びの一番だったので、
余裕で楽しむことが出来た。

しかも大の里は3番負け続けていた相手に
とても勢いのある相撲で勝つことができたので、
観ていたこちらも気分が上がった。

大谷翔平と大の里、
共に193㎝と192㎝
体重こそ違うが大きな日本人男性だし、
顔もいい。

野球と大相撲と畑は違えど、
今、最も勢いのあるふたりから
目が離せない。

推しがいる暮らしを楽しみながら、
カウンセリングルームに訪れる
救いを求める子羊たちと
真摯に向き合おうと思う。