2024年9月16日月曜日

ハスの葉の飾り彫り

 








3連休が終わろうとしている。
世間の皆さんはまだまだ暑い中、
家族や友達とどこか行楽に出かけたのだろうか。
ニュースで
東京方面に向かう車が渋滞していると
伝えている。

私はというと
全く遊び的な要素のない3日間で、
2日間はカウンセリングが入っていたし、
中日は車を出して大買い出しをしていた。

そして、3日間とも1日の半分は
彫台の前に座り込んで
飾り彫りの下絵を仕上げ、
飾り彫りの彫りの作業に着手した。

9月の真ん中の日を挟んでいたので、
前半までに下絵を完成させ、
後半に入ったら飾り彫りに手を付ける、
そう決めた自分に忠実に過ごしたことになる。

私の場合、年に6~7点の版画作品を創り
グループ展や団体展に分けて出品するという
年間のルーティンがあるのだが、
季節による温度や乾燥の具合に合わせ、
原画作成、彫り、摺りなど、
いつ頃、何の作業をするかが決まっている。

昨今は地球温暖化の影響を色濃く受け、
また、団体展が4月初めだったものが
10月初めに変わったりしたことで、
その年間スケジュールにも
微妙に変化が起きたが、
とにかく、人ひとりが生み出せる作品数は
ある程度決まってしまうので
誰に言われたとかではなく
自分なりのスケジュールで
粛々と進めていくしかない。

「芸術は爆発だ~!!」とか
「わだばゴッホになる~!!」だとか
絵描きの内側から何かがほとばしって
パッションのままに筆や彫刻刀を動かして
いるように思われているかもしれないが、
案外、そうではない。

今日は9月の後半に入ったので、
予定通り、飾り彫りに手を染められ
私としては焦りもなく
平常心で作品と向かい合って
午後の陽が傾くまでアトリエで過ごした。

飾り彫りの作業は
蓮の葉の下絵のラインに沿ってはいるが、
彫刻刀で絵を描くように
下絵のラインをもう一段、
ソフィスティケートさせようと
版木にのめり込むように顔を近づけ
版木の木の声を聴きながら彫り進めていく。

昔、棟方志功は極度の近眼のため、
牛乳瓶の底のような眼鏡をかけ、
版木すれすれに顔を近づけ彫っていた。
その姿がテレビで放映された時、
その顔と版木の近さに視聴者は驚いた。

あわや彫刻刀が目に突き刺さるのではと
当時、子どもだった私もびっくりしたが、
いざ、私が実際に版を彫る段になると
木目の方向に合わせて
彫刻刀の力の入れ具合や
刀の傾きを決めるため、
今の私も棟方志功そっくりになっている。

完全に彫り師は職人仕事なのだ。

彫りの作業は
手が勝手に動いてくれるので、
案外、頭は考え事ができると
以前、ブログにも幾度となく書いてきた。

だからBGMに好きなCDをかけたり、
作業中に最近の友人との会話や
カウンセリングでの会話を回想したり、
横目で相撲中継を見たりもする。

しかし、一番、目を使い、気を配っているのは
版木との会話だ。

特に飾り彫りは
「描くように彫る」のが信条なので
版木(シナの木)との対話が
なにより大切だ。

木は1枚1枚硬さも違うし、
温度や湿度の影響も受ける。
だから、そこを感じ取れないままに彫ると
版が欠けたり、
彫刻刀がつっかかったり、
切っ先が欠けたりする。

まれに彫刻刀でけがをすることもある。

最近は左右の手の動きがうまく連動せず
右手の彫刻刀が左手の指先をかすめ
血が噴き出るなんて事故は起きていないが
そんな怪我をしたこともあった。

私のブログネタで
版画の専門的な話が一番数字が伸びないので
今日のブログなんて
みんなの興味のない話なんだろうなと
ふと頭の片隅をよぎる。

しかし、そんなこととは関係なく
芸術は淡々と
孤独な時間の中で
じわじわ熟成させるものなのである。

夕方5時。
ようやく彫台から離れ、
翔猿と大の里が勝った大相撲に気をよくして
春巻の具材を切って炒め、
皮で巻いて揚げた。

本日のディナーは
「春巻」
「卵焼き」
「生わかめのしょうがポン酢」
「ざる豆腐の冷ややっこ」
「枝豆」

もちろんすべては
美味しいビールを飲むために!
お疲れ!!













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