2025年6月19日木曜日

映画鑑賞『国宝』

 


映画『国宝』を鑑賞。
175分もの大長編なので、今の自分の生活の中で
その鑑賞時間を捻出するのは難しかったが
どうしても映画館のスクリーンで観たかった。

観に行って本当に良かったと思える
ひと言でいうと「圧巻」の映画であった。

話は歌舞伎界の女形の役者の物語。

任侠の一門の家に生まれた喜久雄。
宴会の出し物の女形として演じているところを
歌舞伎役者の花井半二郎に見いだされ、
入門することに。

そこには御曹司俊介がいて、
ふたりは反目し合いうも
やがて切磋琢磨して歌舞伎界を突き進むことになる。

喜久雄を演じるのは吉沢亮。
俊介は横浜流星。

ふたりはタイプの違う女形だが、
「二人道成寺」「二人藤娘」「曽根崎心中」「鷺娘」など

女形の代表的大役を演じることになる。

歌舞伎を多少はかじっている身としては
吉沢亮の女形姿は菊之助
横浜流星はの女形姿は七之助にしか見えない。

菊之助と七之助のふたりは
ふたりとも名門の御曹司に生まれているが
この映画の中のふたりのように
本来ひとりで演じる「道成寺」や「藤娘」を
「二人道成寺」「二人藤娘」として
舞台に立ったこともあるので、
李相日監督がキャスティングの際に意識
しなかったはずはない。

インタビューでも
喜久雄は吉沢亮以外の役者は考えられないと言って
いるので、吉沢亮ありきで構想が練られ
作られた映画のようだ。

また、女形の大御所、お目付け役を田中泯が演じているが、
あの役は亡くなった歌右衛門を思い起こさせるし、
歌舞伎評論家に言わせると
ものの言い方や目つきまでそっくりだという。

女形の型の練習には1年半の時間を費やし、
徹底的に踊りやせりふ回し、所作が
叩きこまれたというが、
それにしてもよくぞあそこまでになったと思う。

花井半二郎役は渡辺謙
妻は寺島しのぶが演じている。
寺島自身、歌舞伎の一門の家にうまれ、
女性だということで、歌舞伎の舞台には
立てなかったわけだから、
裏方に徹する悔しさやふがいなさは
身をもって知っているはずなので、
それもこの役を通して痛感する。

それにしても
よく歌舞伎素人だった俳優があそこまで
女形を演じることができるようになったものだと
ただただ驚き、
映画を観終わった後も
あちこちで「凄かったね~」の声が聞こえた。

本当によくぞあそこまで出来たものだと
その言葉しか今は出てこない。

吉沢亮と横浜流星を
本物の衣装と歌舞伎メイクで着飾ったとしても
実際に舞台で演じる様をあそこまで追い求め、
突き詰めるには相当の鍛錬が必要だっただろう。

とにかく175分間。
まったく飽きさせることなく
観るものを圧倒し引きずり込む力に
ただただ恐れ入った。

カメラワークも巧みで
花道から出ていく後ろ姿、
花道から崩れ落ちるように戻る姿、
すっぽんから役者がせり上がり、
役者目線で観客を見る視線など、
映画ならではの迫り方で追いかけている。

俳優に役者魂があるだけではこなせない
それぞれが歌舞伎の世界に敬意を表し、
真摯に激しく向き合った役者たちに
感服した映画だった。

歌舞伎をよく知らない方にも観ていただきたい、
そんな素晴らしい映画だった。
私も時間を作ってもう一度観に行こうと思う。


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