2015年8月13日木曜日

恵みの雨VS木版の摺り


 
昨日の夕方の天気予報で、今日の日中は雨が降ると分かった。
 
火曜日、34度の気温の中(夜中はもう少し低かったとは思うが)
木版の本摺りを決行したところ、
あまりの暑さによる発汗で、作業が思い通り進まず、
かといって辞めるわけにもいかず無茶をして、すっかり疲れてしまった。
 
久しぶりの本摺りだったせいか、ばれんが版とあたる部分の指の皮がめくれ、
暑さのためか力がうまく入らず、無理矢理摺ったための筋肉疲労がハンパなく、
2日経っても、夏バテのようなけだるさが重くのしかかっている。

所定の摺り(オブジェの衝立用に20枚の和紙の千代紙を摺る)は
まだ半分しか終わっていないが、
もう少し涼しくなってからでないと無理かなという気弱な考えが浮かんでいる。
 
しかし、ここ1週間の天気予報の図に雨マークがあるのは今日と明日だけ。
しかも、しっかり雨が降るのは木曜日だけと言われると、
何が何でもこのチャンスを逃すわけにはいかないという気持ちが湧いてきた。
 
そこで、急遽、昨日の晩、残りの10枚の和紙の湿しをし、
絵の具の調合をして、今日の摺りにそなえて寝ることにした。
 
幸い、朝起きると早くも外は雨。
最高気温も29度とある。
 
34度と29度では天と地ほども差があるということは、
土方作業をしたことのある人は分かるかもしれないが、本当に違うのだ。
元々加湿器で加湿しながら摺りは行うので、
湿度が高いことは承知の上。
 
それでも気温が30度を下回ると、滝のように汗が流れるなどということもなく、
時折、タオルでぬぐう程度で作業はサクサクと進んでいく。
 
もしかしたら、腕の力が弱くなっているのではと心配していたが、
腕力は衰えているわけではないようで、
雨の日は外気の湿度が高いから和紙の湿り気もキープされて
絵の具のノリと和紙への吸着がいいようだ。
 
そのため、無理な馬鹿力を出さなくても、そこそこの力で摺ることが出来た。
 
雨だから太陽が窓から差し込むための乾燥とも戦わなくていいので、
年甲斐もなく徹夜などしなくても、
日中、窓の外の雨の音をBGMに、ルンルンで摺り続けることが出来る。
 
お陰で今日は午前中だけで10枚の和紙の千代紙を摺り終えた。
 
これで、グレーの10枚、黄色の10枚が完成したので、
オブジェの衝立の両面に張り巡らす分の和紙が準備できたことになる。
 
世の中はお盆休みで皆、旅行に出掛けたり、帰省したりで忙しい。
でも、私は5月にイタリアに行っちゃったし、
帰省する実家とかもないし、娘達もこの時期帰って来る気はないようなので、
静かに家に籠もって作業ができる。
 
夏休みとか8月とかって、意外と孤独だなというのは昔から思うことだ。
いつもの活動がないと、人は案外誰とも会わないし、
暑いというだけで全体の活動量が落ちる。
 
そういう時にそうめんだけすすってやり過ごそうというのは
夏バテになる一番駄目な夏の過ごし方だと知っているので、
毎日、食事だけは気をつけ、
大量の野菜とほどよいタンパク質を採るよう心がけている。
 
たぶん、ダンナの目を盗んで、ひとり楽しんでいる果物の量が多いので、
果糖の採り過ぎではないかという心配はあるが、
この時期の桃やメロンやスイカのおいしさといったらたまらない。
 
しかし、本日も摺りの合間に桜桃にかぶりつき、
その瑞々しいおいしさで英気を養い、満腹中枢を満たして、
ひとり静かに作業を遂行したのであった。
 
すべての摺り作業を予定通り終えた満足感からか、
いつのまにか夏バテ気味のどんよりした疲れもなくなり、
「明日は衝立に貼るぞ~!」というやる気が
むくむく湧き上がってくるのを感じる現在、午後の10時である。


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