2016年12月14日水曜日

歌舞伎座にて踊り鑑賞

 
 
 
歌舞伎鑑賞フレンドに前から2列目20番というこれ以上望むべくもないいいお席を
取ってもらい、今月は『二人椀久』と『京鹿子娘五人道成寺』を観ることになった。
 
お目当ては両方の演目のメインで踊る玉三郞の踊りだが、
友人は若手で今後が楽しみと期待する中村児太郎の踊りにも注目しているらしい。
 
数年前に菊之助と二人で踊る『二人娘道成寺』を観た時は
そのあまりの美しさに惚れ惚れし、
玉三郞が躍起になって育てている若手が、しっかり育ちつつあることに
安堵したものだが、さて、今回の五人娘道成寺は・・・。
 
連れの友人は舞踏家としての目で舞台を鑑賞しているので、
それぞれの踊り手の所作や動きに厳しい目を注いでいる。
 
その厳しさはなんと動きからその人の今の体の状態まで分かるらしく、
「玉三郞さんは一番うまいけど、
もしかしたら、右膝が痛いのをかばっているのかもしれない」という。
 
なんでそんなことが分かるのか不思議だったが、
いつもより腰の位置が高いし、下半身の捻りが浅いように見えたから」という
分析結果をおしえてくれた。
 
わたしなぞ、「あ~、なんて美しいんでしょう。
どの姿形も、まるで日本画の一幅の絵のようだわ」としか思えないのに・・・。
 
それでも大昔から玉三郞の追っかけをやっている身としては、
歳をとったことは否めないし、体調があまり思わしくないと聞けば、
顔の張りがないし、目に幾分力がないなと感じてしまう。
 
長年、舞台に立ち続け、後人を育成しつつ、
自分もヒロインとして
常に歌舞伎座を満員御礼にしながらお客様を喜ばせるのは並大抵のことではない。
 
『二人椀久』は大阪の豪商椀屋久兵衛が遊女松山に恋い焦がれ
入れあげた末に身代を傾けたため座敷牢に繋がれ、
そこから抜けだし、幻の松山と再会して逢瀬を楽しむも儚く消えてしまうというお話。
 
久兵衛を勘九郎、
松山を玉三郞が演じている。
 
舞台は青白い照明に落とされ、そこに切々とした長唄が吟じられる。
面やつれした久兵衛は顔を青いドーランで塗ったのかと思うほど傷心した様子で、
立ち役の豪快な役が多い勘九郎には珍しい役どころ。
 
踊りの見極めが素人の私には
素顔のお茶目で明るい勘九郎が透けて見えるので、ちょっと笑いそうになる。
 
松山の玉三郞が巷の噂で具合が悪いと聞いて、
より儚げに悲しげに見えてしまう。
 
現代はというか、自分の今の生活では、人に恋い焦がれて気が狂うなんてことは
あり得ないので、
ある意味、純粋で羨ましいと思いながら、
解説にある「人生の儚さを描く幻想的な舞踏劇」を堪能した。
 
一方の『京鹿子五人娘道成寺』は
白拍子五人に、玉三郞・勘九郎・七之助・児太郎・梅枝。
 
玉三郞がもちろん一番の年長だし、踊りの名手だし、人間国宝だしということで、
他の四名を引き連れ、育てている最中ということになる。
 
勘九郎が女形!?というのも興味のあるところだったが、
こちらは七之助と組んで踊るシーンが多かったが、
どうも女らしくしなくちゃと思うあまり、首をこきこきくねくね動かしすぎで、
顔の表情もずっと八の字眉で悲しげにしかめたままなのが、逆に笑えた。
 
勘九郎も女形もできる役者に育てたいのだろうか・・・?
無理があると思うのは私だけ?
 
友人ご贔屓の児太郎さんは幼少の頃よりの踊りの修練と
持って生まれた日舞の素養が開花しつつあるようで、将来が楽しみだ。
 
友人曰く、
「児太郎さんはこれから歌舞伎座で道成寺を何度も踊る役者になるんじゃないかしら」
「玉三郞さんが現在の力量では、足が折れていようとも、あの五人の中では
一番若く見えて、一番深くて素敵だと思います」とのこと。
 
深いわぁ・・・。
 
私が「やっぱり玉様が一番綺麗だし、優美だし、惚れ惚れする・・・」
なんて、うっとりしている間に、踊りの上手下手をしっかり見定めているなんて。
 
今後も一緒に観に来られるときは、友人にいろいろご指南賜らねば。
 
いずれにせよ、来年は歌舞伎に限らず、
日本人は日本の伝統行事、文化に親しむと
運気が上がる年回りだとか。
 
 私が個人的に言われたわけでもないのに
「待ってました」と機に乗じて、
来年もこうした機会を楽しもうと思った年の瀬なのである。

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