2021年、初のコンサートというかライヴというか、
「トリオ・リベルタ ニューイヤー・サロン・コンサート」
と、銘打たれたミニコンサートに行ってきた。
今年初のコンサート、
しかも目の前で聴ける狭いサロンと聞き、
いそいそと着物で出かけることにした。
もちろんお目当ては
ヴァイオリニスト石田泰尚氏であるが…。
私は石田様とお呼びして、もう何年も追いかけているが、
石田様はヴァイオリニストとして
数々の顔を持っている。
どういうことかといえば、
石田様がどこのだれと演奏するかによって
違う表情を見せるということである。
例えば、
神奈川フィルのコンマスとしての石田様は
クラシックを演奏するオーケストラを音で束ねる長としての顔。
石田組の組長としての石田様は
男ばかりの若手弦楽器奏者を率いる組長としての顔。
(や〇ざではないのだが、その匂いがプンプン)
YAMATOの石田様は
キャラの際立つ弦楽器奏者4名の一人として、
バンマスとしてと、メンバーとして
バランスを取りつつの顔。
三浦一馬率いるキンテートの中の石田様は、
バンドネオンの三浦一馬という若きリーダーを立てつつも
ヴァイオリニストとしての確固たる立ち位置で、
観客を魅了する顔。
そして、本日のトリオ・リベルタでは、
ヴァイオリン・サックス・ピアノの3人編成で
ピアソラを弾きたいという熱い思いを共有しつつ、
圧倒的石田ファンの視線を浴びて、他の2人を振り切る顔。
今回はそのトリオ・リベルタのコンサート。
今年で結成20年になるというから、
まだ、学生上がりの頃から、
近い年齢の3人がバンドを組んで活動してきた。
演奏場所も大きなホールとかではなく、
一昨年、閉店してしまったKAMOMEのような
ライヴハウスや300名規模の小ぶりなホールだったので、
ますます学生臭さが抜けないというか、
ピアソラ同好会の匂いがプンプンの
石田様としては最もフランクな顔を見せるトリオといえる。
そもそもタンゴの演奏をしたくて始めたのに、
バンドネオン奏者がはいっていないし、
サックスの松原さんが入っているあたりからして、
同好会的なのだが、
それがトリオ・リベルタの魅力というか、
この3人の音楽にサックスがいないなんて考えられない。
本日のプログラムも
1部はモーツアルトだのドビュッシーだのだったが、
2部はほとんどピアソラだった。
ピアソラでないものも
アレンジがタンゴになっていて、
当然、熱の入りようも2部の終わりに近づけば
近づくほど熱くなっていき、
最後から2曲目の「バルダリード」(ピアソラ)が
最も石田様の顔が恍惚としていた。
私と友人は
70名しか入れない小さなサロンの3列目に席が取れたので、
至近距離でその表情を拝顔しながら、
2021年最初の石田様のヴァイオリンに聴き入った。
アンコールは4曲。
内、2曲目の最初で
石田様が「あ、間違っちゃった」と言って
演奏を辞め、
3人で最初から弾き直すなんていうハプニングもあった。
初めて見るミスった石田様。
まるで私の芸大時代、
道を隔てた音校の奏楽堂で学生が弾いている演奏みたいだ。
ミスったメンバーを他のメンバーが
ニヤニヤ笑いながら、
「しょうがないなぁ」という感じでやり直す。
そんなことが許されるのが、
トリオ・リベルタの空気といえばいいのか。
今日のリベルタは
サックスの松原さんの出来がとてもよく、
久しぶりに見たら、また、一回り大きくなっていたが、
体重が音にのって、キレもいいし、迫力もあった。
ピアノの中岡さんは
ちょっと雑なピアノで、
繊細なヴァイオリンを時折、ぶち壊していたから、
今頃、石田様が何か文句を言っているかもしれない。
でも、お前だって間違ったじゃないかと
学生時代の内輪もめになっているのか
いないのか。
まあ、そんなことが言い合えるような3人だから、
20年も続けてこられたのかもしれない。
ファンとしては
年の初めに、手を伸ばせば届く位置で
石田様を拝め、
二礼二拍手一礼という感じ。
ピアソラ生誕100年の今年、
コロナ禍をかいくぐって、
何とか石田様の演奏を聴く機会がありますようにと
願っている。
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