2022年6月1日水曜日

博多帯の季節

 











今日は6月1日、
ありていに言えば「衣替え」の日である。

世の中の学校の制服が
今日から夏服になったり、
夏時間を採用している国が1時間
時間を早めたりする日だ。

しかし、実際にはほぼ1カ月ぐらい前に、
肌感覚としては夏物を出さなくてはと思って、
私はここ数年、
ゴールデンウィークに突入する直前に
衣替えはすることにしている。

着物の世界では
6月と9月は単衣、
7月8月はもうひとつ薄物の絽や紗といった
生地の着物を着るのが習いなので、
今日からは単衣ものを着てよいということになる。

実は先週の水曜日のお茶のお稽古には
気温が25度を超える予想が出ていたので、
こっそり単衣ものを着て出かけてしまったのだが、
今日は堂々と単衣で出歩くことが出来た。

さて、そうなると
是が非でも着たくなるというか
締めたくなるのが「博多帯」だ。

独特の模様に織られた
八寸名古屋の博多帯は
1年中締めてもいいとはされているが、
やはり真骨頂は単衣の着物と博多帯という
組み合わせだと思う。

献上柄と言われる幾何学模様と縞柄を
組み合わせた粋な柄は
無地っぽい紬や小紋などによく合い、
領域はカジュアルとされているが、
伝統と格を感じさせる。

私の持っている博多帯は
いわゆる献上柄ではなく
花柄が織り込まれているので、
そんなに粋なわけではなく、
お茶のお稽古などにも着用可能だ。

博多帯特有のビシッと締まる感じと
動くたびに「キュッキュッ」と鳴る音が
夏に向かう蒸し暑いこの時期に、
身が引き締まる思いと同時に、
爽やかさを演出してくれる。

この博多帯は
かれこれ20年以上前に
横浜高島屋の呉服売り場をプラプラしていて
一目ぼれし、
隣のコーナーで帯の1色が地色になった
小紋を見つけ、
一度に帯と着物を購入したという
思い出の品だ。

盛んに着物を増やそうとしていた時期に、
単衣の着物に博多帯を締めるというのが
憧れで、
「これだ!」と飛びついた帯だった。

最近はそんな博多帯だったのに
マイブームが去ってしまい、
タンスの肥やしになりかけていたが、
何年かぶりの登場で
6月最初のお茶のお稽古に締めていった。

お茶室に座り、
ほんの少し動くだけで
「キュッキュッ」と鳴る帯の音に、
先生やお社中の友人たちが反応して、
話題が博多献上の話になり、
この帯も褒めてもらえてうれしかった。

ついでに
草履の鼻緒も献上柄のカレンブロッソだし、
道行コートは紫系の道行、
バッグも紫の勾玉模様だ。

帯揚げに白地にピンクの鹿の子絞りをしていったら、
お茶席のお花が「京鹿の子」という
濃いピンクの鹿の子絞りそっくりのお花だった。

自分ひとりのこだわりで、
あれこれ考えたコーディネイトが
季節やお茶のお稽古で用意されていたものなどと
うまくかみ合うことが出来た時は
心ひそかにニンマリしてしまう。

伝統的で奥の深いお茶の世界と
同じく奥の深い着物の世界。

お茶道具の組み合わせや花やお菓子に
苦心される先生と心が通った気がした
博多帯と鹿の子絞りの帯締めである。

ちなみにお棚は「桑小卓」(くわこじょく)
主菓子は「落とし文」(おとしぶみ)

いずれも写真はないが、
この季節ならではのお道具とお菓子である。

6月1日、
お茶の世界も衣替え、
季節を体現できる感性を
大切にしようと思った1日だった。



















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