趣味の陶芸工房に通い出して
早くも12年ほどの年月が経った。
このブログにも何度も作陶風景やら、
出来上がった作品をアップしてきたが、
実はそれはすべて
「手びねり」という工法で作られている。
陶芸には大きくいって
「手びねり」と「電動ろくろ」という
2種類の作り方があって
私が通っている工房は
どちらでも自由に選んで作陶することができる。
12年前、入会時に教えてもらって経験したのは
「玉づくり」「板づくり」「紐づくり」の3種の
手びねりによる作り方だったので、
そのままの流れで手びねりばかり作ってきた。
私は陶芸で自分が作りたかった器が
抹茶椀や陶板、オーバルの大皿など
ろくろの成形より手びねりで作った方が
向いているようなものが多かったこともあり、
ろくろにはご縁がないままに今日まできた。
この間、
全くろくろに触ったことがないかといえば
嘘になるが、
きちんと正式に習ったことがない。
6年ほど前、1度だけ
先生のろくろの講習会を受けたことがあるが、
運の悪いことに帯状疱疹にかかった直後で
わき腹と背中が痛すぎて
全く体に力が入らず、ものにならなかった。
手びねりでは手動のろくろ台の上で作陶するので
そのまま電動ろくろでも同じかと思いきや
これが全くというほど勝手が違う。
電動ろくろで作陶するには
まず、土を真ん中に据えて
「芯出し」と「土殺し」という作業を
しなければならず、
きちんと中心に据えられていない土で
いくら作ってもまともなものはできないのだ。
先週の日曜日、
久しぶりに会員向けの「ろくろ講習会」が
行われたので、
「ここでやらなければ一生やらないだろう」と
意を決して申し込んだ。
1回に3人ずつ、
横に並んで一斉に作陶するのを見ながら
先生が口で説明するだけで手は出さない。
受講申し込みの用紙には
お題は「マグカップ」で作陶の説明はするが
会員は土殺しまではできるようになっていること
とある。
この工房に素人さんが体験教室に申し込み
マグカップだの茶碗だの作陶する時は
前段階の難しい芯出しや土殺しは
先生がみんなやってしまう。
体験に来た人はすでに中心に据えられた土で
おいしいところだけ作って
自分で作った気分を味わってもらうのが
体験教室なのだ。
しかも、
作陶した後の「削り」「釉がけ」「焼成」など
めんどくさいところも全く無しで
色だけ決めて、そこから先の工程は
すべて先生がやって器は出来上がってくる。
しかし、会員はそのすべての工程を自分で
できるようにならなければ
自分が作ったとはいえないからと
まずは「芯出し」と「土殺し」も
自習して会得するように言われている。
(焼成だけは先生がなさる)
しっかし、この「芯出し」と「土殺し」
やってみると実に難しいし、
とにかく力がいる。
木版の制作ではのみで木を彫っているし、
ばれんで版も摺っていると思っていたが、
そことは違う場所に力を入れるせいか
腰は痛いし、腿と二の腕はパンパンだ。
自習するにあたって
何本動画を見ても男性の陶芸家しかいないと
思ったが、
こんなに力仕事だったとは。
あらためて陶芸は男の世界なのかもしれない。
その難しい「土殺し」を自分で覚えろとは
教師としてずいぶんいじわるな奴だと
会員同士で悪口を言いながらも
とにかくできませんでは済まないので
必死に動画を探して自習した。
お陰で講習会当日、
電動ろくろによる「土殺し」のコツは
おぼろげながらできるようになったので、
先生のレクチャーの元、
何とかマグカップらしきものが出来あがった。
それを6日間、発泡スチロールの箱にいれ
乾燥させてあったので、
昨日の作陶日は「削り」の作業へと進んだ。
削りについても先生のレクチャーはなく、
大抵、土曜日は体験の人につきっきりなので、
やはり動画を見まくってイメトレをし、
なんとか削りの作業も終えることができた。
やはり同じ会員同士、
「そこもちゃんと教えないのは
おかしいんじゃないの」と
憤懣やるかたないという感じで
陰でブーイングの嵐が吹き荒れたが、
たまたま新人会員のために教えにきていた
先輩会員に教えを乞うて
事なきを得てマグカップの削りができあがった。
私も友人も教師業なので、
「教えてもいないことに対して受講料をとるのは
おかしいし、
できるようになっておけというのも
おかしい」と友人の鼻息は荒い。
自由作陶で好きなものを作れる工房であることは
嬉しいが、
会員の会費を徴収している以上、
基本的な技術を教えなくてもいいわけじゃない。
そのあたりの問題が
いよいよ顕在化して
火を噴きそうな状況だ。
個人的には
昨日、削りを終えた「大鉢」は
はめ込みの装飾があるので
電動ろくろでは決して作り得ない。
こうしたデザイン性の強い器は
買おうと思っても、まず売っていないだろう。
こうした個性的な器ができると嬉しいので
今後、体験した電動ろくろにのめり込むかと
言えば、きっとそうでもないだろう。
なにしろ電動ろくろは円しかできないので、
オーバルのもの、四角いもの、
今回のように
飾りがはめ込まれたものなどはできないからだ。
というわけで
すでに作陶歴の12年の手びねりの世界で
自分らしい作品ができるようになっていることを
あらためて確かめ、
一層、手びねりの世界でやりたいことが見えた
そんな気がする電動ろくろ体験だった。
とはいえ、もう少し粘って
電動ろくろに向き合ってみるつもり。
やはりできないものがあるのは悔しいし、
負けを認めたくないから。
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