2015年11月29日日曜日

映画2本 ナチスに強奪された美術品奪還物語

 
先週、今週と休日に観た映画が奇しくも
両方とも第2次世界大戦終盤にナチスによって強奪された美術品を
アメリカ人が奪還する物語だった。
 
1本は『ミケランジェロ・プロジェクト』
もう1本は『黄金のアデーレ』
 
『ミケランジェロ・プロジェクト』の方はそろそろ上映が終わるかもしれないが、
『黄金のアデーレ』の方は一昨日から始まったばかり。
 
ミケランジェロの方は戦争終結間際の1945年頃
ナチスによって大量に強奪された絵画や彫刻が
焼き払われたり、国から持ち出されていると知ったアメリカ人の美術関係者が
7名のチームでドイツに乗り込み、
岩塩の鉱山や銅山に隠されていた美術品を探し出し救うという内容。
 
アイコンになっている作品が
ミケランジェロの聖母子像だったので、
邦題が『ミケランジェロ・プロジェクト』になったらしい。
 
原題はアメリカ人チームのチーム名だったけど、
それじゃ、日本でうけないとみて、
ミケランジェロ様の名前を借りたのだろう。
 
映画の出来映えもなかなかで、
主演がジョージ・クルーニーとマッド・デイモンなので、
もっとスピーディが売りの軽いアメリカンムービーかと思いきや、
案外、ちゃんと作り込んであった。
 
一方、『黄金のアデーレ』の舞台は現代。
 
戦後50年以上経って、クリムトに描かせた絵のモデルは自分の叔母さんで
当時、家の壁にかかっていたその絵をナチスに持ち去られ、
今はウィーン郊外のヴェルべデーレ宮殿のギャラリーに飾られているけど、
権利は自分にあると訴訟を起こしたアメリカ人女性の物語。
 
ウィーンに住んでいたマリアは、戦争末期にアメリカに逃れ、
50余年アメリカ人として暮らしてきたが、
母国オーストリアを相手取って,裁判で戦うという内容だ。
 
いずれも史実に基づいた話で、
とにかくナチスは酷いということと、
アメリカ人て、正義感が強いというか、権利を主張するというか・・・。
 
去年、ニューヨークとボストンに行った時に
とても観きれないほどの大量の美術品をアメリカは持っているとびっくりしたが、
あれは一体いつ収集したのとちょっと思ってしまった。
 
以前、オーストリアに旅行した時、
自由時間に大好きなクリムトの作品が観たくて、
ヴェルべデーレ宮殿を訪ねたとき、アデーレの作品は確かにそこにあった。
 
それが勝訴して、今はニューヨークのノイエギャラリーにあるらしい。
 
オーストリア人だったアデーレの肖像画なんだから、
オーストリアの美術館にあったままじゃいけなかったのかなどと思いながらも
映画としては映像もきれいだし、
凛としたヘレン・ミレンの老婦人役とへなちょこ若手弁護士との組み合わせも
面白いので、楽しめるいい映画になっている。
 
個人的には旅行した場所がどちらもふんだんに出てきて懐かしかったし、
知っている絵画や彫刻もたっぷり観られ、
とても目が嬉しかった。
 
私達は今のところ戦争をまったく知らずに暮らしているわけだけれど、
ほんの70~75年前には世界中大変だったんだなとあらためて知った。
名品と呼ばれる数多くの絵画や彫刻にも戦争による悲惨な歴史があって、
紆余曲折の果てに、今の美術館や教会にあるんだなと・・・。
 
ここのところ、パリがISの無差別テロに襲撃され、多くの人命が失われ、
世界情勢が混沌としてきている。
以前にはテロ行為によって、遺跡が破棄されたことも記憶に新しい。
 
『ミケランジェロ・プロジェクト』では
「人命はもちろん大事だが、絵画や彫刻も壊されてしまってからでは
取り戻すことが出来ない人類の宝である。
だから、我々、美術関係者がナチスの手から取り戻す意義がある」
という
「アメリカよ、お前は世界の警察か」みたいに突っ込みたくなるセリフがあった。
 
しかし、冗談抜きで,きな臭い事件が多い昨今、
こうしたものの価値は、テロ行為から必ず守らねば。
そんなことを考えさせられた2本の映画同時上映である。

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