10月30日、
渋谷がハロウィンの仮装でごった返している頃、
銀座は銀座通り1丁目から8丁目まで、14箇所ものお茶席がしつらえられ、
銀茶会をいう催し物が開かれていた。
今年で15回目だというが、これまで、全く知らずにきてしまった。
偶然、先週、友人の展覧会に銀座の画廊を訪ねた折、冊子を見て知ることとなった。
早速、お茶のお稽古で一緒の友人に声をかけ、
「ドレスコードはキモノ」に応じてくれたひとりと出掛けることにした。
あいにくの寒空に、雨も心配されたが、曇りのち晴れの天気予報を信じて、
帯付き(道行コートなしのこと)にショールを持って、いざ出陣。
12時から14席ある茶席のそれぞれの受付で1日分のお茶券を配るという。
1日でそれぞれ8クールぐらいは席入り出来るらしい。
初めての参加で勝手がわからないながら、
電車の中でとりあえず食べてみたい主菓子を出すお茶席めがけて、
京橋近くまで歩いた。
銀座は12時前、すでに相当な人出で、キモノ姿の人も大勢いる。
普段のお茶会みたいに高齢化していないので、年齢層も広い分、
キモノもいかにもお茶席仕様のものから、リサイクルの大正ロマン調まで様々だ。
最初に手に入れたお茶券は13時20分から席入りのもので、
2枚目は15時40分からのものだった。
入りたかった芸大主催のお茶券は残念ながら完売した直後だったので、
お茶席には入らず、伊東屋10階のお茶席の雰囲気と
たくさんの芸大生が創った作品を見てきた。
そこにはユニークな茶碗や茶杓が展示されており、
横目で見るともなく見ていると、
お茶席に運ばれていく数茶碗もひとつひとつ違う形のユニークな抹茶椀だった。
茶道の概念からはずれた面白いものがたくさんありそうだ。
友人と「来年、銀茶会に参加するなら、1番に芸大のお席のお茶券を取ろうね」と
意見が一致した。
私達が実際にお茶をいただいたお席は
ひとつは裏千家の立礼席、もうひとつは裏千家の薄茶席だったが、
薄茶席の方は茶箱といって、私達、表千家にはないお道具立てだったので、
なかなか興味深かった。
他にも煎茶道の立礼席なども出ていて、
蔭出しの人達がお抹茶ではなく、ひとりひとりがお揃いの急須を持って出て、
お煎茶をついでまわるお点前など、面白く見ることが出来た。
14席のお茶席には銀座にある和菓子屋さんの自慢のお菓子が饗され、
こんなに銀座という場所には和菓子処があったかと、
今更ながらに驚かされる。
私達が選んだのは、銀座あけぼのの「照る山」と、風月堂の「PEARL」という
お菓子だったが、
いずれもそれぞれ趣向を凝らし、季節を感じさせる一品で、
日本のお菓子は秀逸だなと思う。
街には外国からの観光客も大勢いて、
知ってか知らずか、銀座に溢れたキモノ姿の女性達と赤い毛氈のお茶席に
興味津々、カメラを向けている姿があちこちで見られた。
今日は特別かもしれないが、
こうしてみると銀座はなかなか和ごとに精通した街だと再認識。
ちょうど1ヶ月前にはオリンピックのメダリストのパレードをひと目見ようと
80万人が集まった銀座通り。
今日は14のお茶席とお茶を求めてやってきたお客さんで埋め尽くされた。
2020年のオリンピックへ向け、
ここへ来て急に、日本人が今更ながら日本文化に目覚め、
日本人であることに誇りを持とうとしているように感じた。
昔から、和もの大好きの自分としては
「よしよし、それでよし」と思う反面、
「もっとちゃんとキモノ着ろよ」と
案外、いい加減な着付けの茶席のおばちゃん達が気になったり、
「バサバサ歩かず、キモノ着たなら、もっとしとやかに歩けよ」と思ったり、
本当に何の作法も知らない茶席の隣人に呆れたりの1日だった。
日本に生まれたからには、日本人として凛として生きる。
ゆかしい日本文化を正しく身につけ、
スマートな立ち居振る舞いができるようになる。
そんな目標をもってほしいと願いながら、くいと顎を上げ、背筋を伸ばした。