夕べ、橋之助の『中村芝翫襲名披露』公演に新しい友人Nさんと行ってきた。
お目当ては玉三郞の「藤娘」と橋之助親子の「口上」と言ってしまうと失礼だが、
父親の橋之助が芝翫という大名跡を継ぐということと、
3人もの息子が揃って新しい名前を襲名するというのは大変なことなので、
その場に居合わせ、歌舞伎界の一大イベントを見届けたいという思いがあった。
演目は当の本人が大役を務める「熊谷陣屋」と
お祝いのために周囲の役者が演じる「外郎売」と「藤娘」
そして、「口上」という構成。
友人は小さい頃から板東流で日本舞踊を習ってきた人なので、
関係者席を優先的に取ることができるという。
今まで、歌舞伎に関しては
母の友人だったおばあさまに「蛇の道は蛇」のチケットをお願いして
随分いいお席を取ってもらってきたが、
さすがに89歳ちかいお歳では、ご当人が歌舞伎にいけない状態が続いている。
そんな折りに登場の新しい友人Nさんは、なんと頼もしい助っ人か。
私の見る歌舞伎鑑賞はかなりミーハー的で、個人的な趣味嗜好に基づいているが、
日舞を長くやってきた友人は舞台に立つ側の視点で観ているし、
専門的かつ内部事情を知っている分、そうした情報も提供してくださったりで、
とても興味深く観ることが出来た。
取ってもらったお席は前から3列目のど真ん中。
これ以上ないいいお席だ。
というわけで、もちろん私達のドレスコードはキモノ。
友人は渋い紫色の紬のキモノに織りの帯。バッグなどの小物も紫系で統一。
30年来の髪結いさんに、髪もしっかり結い上げてもらっての登場。
私は求めたばかりのグリーン系のぼかしのキモノに藍染めの葡萄柄の袋帯。
帯締め・帯揚げはブルー系にまとめ、かんざしとバッグをキャメルの差し色に。
全体に柔らかもののキモノに合わせた江戸好みのコーディネート。
ふたりともキモノ歴が長いので、どうしても通好みというか、
一見地味に見えるが、見る人が見ればわかるみたいなしつらえが好きという
共通点がある。
やっぱり、自分ひとりがキモノを着て、相方は洋服というより
二人揃ってキモノなのはいい。
しかも、相手のキモノもいいと思えて、綺麗に着こなせていて、
認めあえるのはもっといい。
知り合いの呉服屋の女将さんも何十年と同じ髪結いさんにお任せして
髪を結っているといっていたが、
友人も同じで、その人がいなくなってしまうと困るという。
昨今、黙って座れば、その人に合わせたアップスタイルに結い上げてくれるような
美容師さんは希少種になってしまった。
そんなお抱え美容師がいるというだけで、羨望のまなざしだ。
私なんざ、結婚式のために急遽半年だけ必死に髪を伸ばし、
何とかアップスタイルにしてもらおうなんて、
キモノ人としてはまだまだ素人だと痛感したけど、
今から、キモノの時には髪結い処へなんていう贅沢はできないに違いない。
それでも、絵描き魂さく裂で、自分だけのカラーコーディネイトを売りに、
エンジョイ・キモノライフでいこうと思う。
舞台の新芝翫さんは熊谷直実役で最後は涙の熱演だったし、
玉三郞の藤娘は、独自の舞いの世界の頂きに登り詰めている感じで、
美しい衣装の蔭に、歌舞伎界を牽引していく覚悟が見える。
ちょっと遠ざかり気味だった歌舞伎に
強力な助っ人登場で、
もつべきものは共通の趣味嗜好をもつ友人だということが実感出来た1日である。
佳きかな、佳きかな。
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