女友達ふたりで旅行に行く最大のメリットは
同じテンションでご飯を食べたり、買い物ができること。
今回のスペインは10日間で3回、フリータイムがあったので、
その度にフットワークも軽く、食べたり、飲んだり、ショッピングしたり出来たので、
収穫も大きかった。
これがダンナと一緒だと、奥さんが買い物したくても、
「俺は行かないよ」とか「待ってるから、早くして」などと言われ、
思うように動くことが出来ない。
その点、女同士で、しかも金銭感覚や好みなどが似ているもの同士だと、
火に油を注ぐがごとくに、スイッチが入ると止まらなくなる。
それは最初のバルセロナのフリータイムから始まった。
まずはみんなでグエル公園とサグラダファミリアの見学を午前中に済ませ、
午後、旧市街の散策の後、デパートに行った時だった。
そこでの自由時間は50分ほどで、トイレ休憩を含め、自由にデパート内を
見ることが出来た。
みんなはまだスペインに到着して、初めて観光した日だったので、
今から重いお土産を買うわけにもいかず様子見という感じだった。
私達ももちろんそのつもりで歩いていたのだが・・・。
2階の洋服売場で、とても綺麗なラベンダー色のワンピースが目に飛び込んできた。
一目で気に入る私好みのワンピースで、
生地の織りも凝っていて、日本で買ったら5~6万は間違いなくするだろう。
マネキンが着ているワンピースの手触りを確かめていると、
友人が言った。
「わぁ、素敵!ねぇ、試着してみたら」
時計をみると集合時間まであと15分。
一瞬、考え、値段を見て、予想以上の安さに驚き、
次の瞬間、私は店員さんを捕まえて「試着したい」と言っていた。
2サイズ試し、幸いサイズもぴったりあったので、
即断即決。
財布から『プラスチック・マネー』を取り出していた。
友人も私が試着しているその間に、
同じお店で可愛いTシャツを見つけ、買い求めていた。
そして、思ったより暑かったスペインで、翌日、友人はそのTシャツを着用。
私も後日、誕生日の日に現地調達、現地着用したのである。
次の日はバルセロナの半日自由行動日。
私達は先ず、同行のご夫婦と乗り合いで、タクシーでピカソ美術館まで行った。
美術館といえばミュージアム・ショップを見る楽しみがある。
最初からオリーブオイルや石けん、チョコレートなど、
バルセロナでなくても買えるものや重いものや型崩れしそうなものを
買うわけにはいかないが、ミュージアムショップのものはここでしか買えない。
というわけで、またまた、買い物スイッチ・オン。
ふたりともピカソTシャツや初孫のためのおよだなどを手にレジに並んだ。
バルセロナから南下してグラナダに着くまでは、
バスの運転手さんの緊急事態などもあって、さすがにお買い物熱も一旦休止。
しかし、バルセロナやミハス、ラ・マンチャ地方などは
今度は都市部よりお安く
オリーブやアーモンド、いちぢくなどの農産物を使ったものが手に入る。
そこでまたまた、買い物スイッチはオンになり、
一行の荷物は徐々に増え、大きく重くなっていく。
私達もしかり。
途中、コルドバではこの地方で有名な銀細工の髪飾りを見つけられたし、
友人も負けじとトレドで繊細な細工物のブローチを購入。
そんな風に行く先々で「これ素敵!」と思えたら、即決の決断力だけは誰にも負けず、
かといって無駄遣いもせず、私達は旅行の終盤を迎えた。
そして、遂に最後のマドリッド2連泊。
まずはマドリッドと言えば、プラド美術館と
ピカソのゲルニカがある国立ソフィア王妃芸術センター見学。
いずれの美術館の作品もさすがの迫力に圧倒された。
更にマドリッドでは食事も美味しく、特にパエリア専門のレストランは本場の味だ。
何度か食べる機会のあった生ハムも十分堪能出来たし、
カバと呼ばれるシャンペンも毎食のように注文して、エンジョイ・スペインもMAXに。
観光最終日の午前中はマドリッドの旧市街を中心に散策。
イースターホリデーの金曜日とあって、どこも人・人・人。
そこでもまた一行はバルセロナと同じ「エルコルテ・イングレス」というデパートへ。
さすがに最後は娘達にお土産を見なければ・・・。
きれいな色の革製品が欲しいという次女のリクエストに応えるべく、
1階のバッグ売場を友人と物色した。
友人も娘ふたりを持つママなので、自分の分も含め、
バック売場でそれぞれ好きなコーナーを攻めていた。
ここでもやはり与えられた時間はトイレを含め55分しかなかったが、
私達はそれぞれピンときたバッグを買い求め、一度はみんなとバスでホテルに戻った。
友人は黒いメッシュ地に蝶々の刺繍のアップリケがついたバッグ、
私は白地に筆でカラフルな絵の具を飛ばしたような2個組みの大ぶりバッグと、
白い薔薇の透け模様のあるバッグのふたつ。
お互いの戦利品を手に意気揚々とホテルに戻り、
夕方6時に添乗員さんの案内で再び街に出るまで、シエスタタイムのはずだった。
ところが、ホテルの部屋に戻り、私の求めたバッグを見て友人が言った。
「わぁ、これ可愛い~。私も同じのが欲しい~。じゃなきゃ、今夜眠れない~」
眠れなくちゃ、大変だ。
シエスタタイムのはずだったが、私達は5分後にはホテルを飛び出し、
タクシーの乗り方も、街中の降りるところも分かってないのに、
デパートのレシートにある名前だけを頼りに、再びデパートに向かったのである。
人で溢れる繁華街は歩行者天国になっていたが、
午前中に歩いたときの見覚えのあるビルを頼りに再びデパートに行き、
無事、友人も絵の具飛び散りバッグ2個組と透け模様バッグの赤をゲット。
ついでに私は4階の洋服売場でだめ押しのワンピースをもう1点買って、
すべてのミッション(?)をクリアした。
それもこれも、フットワークのよい友人とのなせる技。
同じテンション、同じ食欲、同じ物欲があってこそ。
こうして、換金したユーロをきれいに使い果たし、
次の日、後顧の憂いなく機上の人となったのである。
おしまい。