2017年4月26日水曜日

草間彌生の闇

 
 
 
 
話題の展覧会『草間彌生 わが永遠の魂』を観に行ってきた。
 
長蛇の列でチケットを買うだけでも相当並ぶと覚悟していたが、
チケットは5分ぐらいで買えたし、入場もすんなりいけた。
ただ、グッズを買う列が長蛇の列で、レジにたどりつくのは大変そうだった。
 
まず、会場に入ってすぐの大きな部屋に3台の巨大オブジェと壁一面に飾られた
130点の最新作が並んでいて、観るものを圧倒する。
 
それだけで、『もの凄いエネルギー』だし、『溢れる生命力』を感じると思うのだが、
よくよく見ると、そこに草間彌生の苦悩が浮かび上がってくる。
 
最近は本人の意外と可愛いキャラクターや強烈なビジュアルが、
すっかりアイコンとして定着し、草間彌生人気になっているのだが・・・。
 
壁の作品の数枚に1枚の割合でタイトルに『死』に関係のある言葉が登場する。
 
「死の瞬間」
「天国に昇る入口」
「死の足跡」
「永劫の死」
「我が死の祭壇はかくありき」
「自殺する私」
と、いった具合。
 
作品はといえば、赤や緑の極彩色だし、
絵柄も目玉や水玉や虫のようなものなので、そういうタイトルだとは思わない。
 
しかし、草間彌生はその作品を死を間近に感じながら描いたに違いない。
 
幼少期にかかったはしかの発疹が、後年になっても現れ続け、
ぬぐってもぬぐっても体中を発疹が覆い尽くす幻覚に悩まされていたという。
 
統合失調症との終わりなき戦いの中で生きているということがどういうことか。
 
だいぶ前にドキュメンタリー映像を観たことがあったが、
時折、しかも突然に死にたくなってしまうらしく、
映像の中の草間彌生は苦悶の表情でパーティに行きたくないと駄々をこねていた。
 
通常は病院の1室に住んでいて、
朝、スタッフが迎えに行くと車いすに乗り、
アトリエまで行って、後は1日中制作している。
 
溢れるアイデアのまま、気のおもむくまま、筆を走らせる様は、
まるで子どもが夢中でお絵かきをしているようで、
屈託がなく邪気もなく純粋無垢のように見える。
 
しかし、実際は払っても払っても忍び寄る死におびえ、
恐怖と戦っているのではないだろうか。
 
私は膨大な草間彌生ワールドをさまよいながら、そんなことを考えていた。
 
「稀代の天才芸術家」などと周囲は勝手に祭り上げているけど、
そんなに楽な稼業じゃない
そんな風に言っているように感じた。
 
若い時の作品から全部観ることができる展示なので、
ひとりの芸術家が幼い頃からの幻覚をスポッツにして
画布にたたきつけ続けた軌跡を観ることが出来る。
 
常人にはうかがい知れない草間彌生の苦悩と血反吐を浴びる、
そんな覚悟で観に行くことをオススメする。

0 件のコメント:

コメントを投稿