4月12日午前0時15分、消灯して間もなくベッドの中で友人がこう言った。
「ねえ、今日か明日、お誕生日じゃなかったっけ?」
ベッドサイドの電気をつけ、時計をみた私は
「誕生日になって15分よ」と答えた。
「えっ、じゃあ」と部屋の明かりをつけ、友人はバッグから小さな封筒を取り出し、
私にくれた。
それは手作りのスワロフスキーのビーズで作った宝石箱の形のペンダントだった。
こうして、4月12日になったばかりの夜中に、私は誕生日を迎えた。
こんなサプライズ、恋人か新婚夫婦でもない限りしないだろう。
プレゼントされた紺色のペンダントは次の日着ようと用意していた
ブルーのコーディネイトにピッタリだったので、
朝、早速、身につけ、1日を過ごすことにした。
友人もお揃いの黒い宝石箱形ペンダントを作ってきたというので、
ふたりして胸元につけて、朝食のダイニングに向かった。
その日は旅程中一番の高級ホテル「パラドール・デ・コルドバ」に泊まっていた。
同じテーブルに関西から友達同士で参加のふたりが一緒になった。
座るなり、ひとりが私達の胸元に気づき、「ふたり、お揃いやね」と言った。
「今日、彼女、お誕生日なの」とKさん。
「夕べ、これを夜中にプレゼントしてもらったのよ」と私。
そう思わず自慢げに話してしまった。
「それは今日、みんなでお祝いせな」
旅の友は皆、優しい。
その日の旅程はコルドバの歴史地区にある世界遺産メスキータの見学に始まり、
ラ・マンチャ地方で風車を見た後、夕方、古都トレドへという予定だった。
10日間のスペイン旅行も後半に入ると、どんどんスピードを加速して、
早くも終盤に入ってしまう。
飛行機やバスの遅延トラブルが、もうだいぶ前のことのように感じる。
旅程では、夜はトレドで自由夕食の予定になっていたが、
あまりに今回は迷惑をかけたからと、旅行会社がディナーをセッティングしてくれた。
それも添乗員さんが会社に掛け合ってくれたからだ。
トレドのホテルは古都トレドらしいクラシックホテルで、
ドラマチックな赤を使った内装でとても素敵だった。
夕食のための再集合までに1時間ほど時間が設けられたので、
私はブルーのセーターとパンツルックから着換えて、
ディナーのレストランに行くことにした。
初日のバルセロナのデパートでの短い自由時間に、
現地調達したピンクのワンピースに着換え、
持ってきたピンクのカーディガンを羽織った。
もちろん友人にもらったペンダントも胸につけた。
友人はそれを見て、シックなパンツルックに着替え、お揃いのペンダントをつけた。
ふたり並ぶと宝塚のペアのようだ。
突然、出掛けにホテルの部屋に添乗員さんがやってきて、
「お誕生日おめでとうございます」と言って、
添乗員さんご推奨のオリーブオイルとオリーブオイルのハンドクリームを
プレゼントしてくださった。
そして、レストランの席について飲み物が運ばれてすぐ、
添乗員さんから、今日が誕生日であると呼ばれ、
旅の一行の皆さんから、乾杯していただいた。
なんと幸せな誕生日を迎えられたんだろう!
嬉しさがこみ上げてくる。
ありがとう、Kさん。
ありがとう、添乗員のFさん。
ありがとう、みんな。
一生忘れないウン十三歳になった。
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