暮れになると気が重い。
この時期、やらなければならないことが、ドッと押し寄せる。
私のとって1番気が重いのは、年賀状書きだ。
昨今、年賀状なんて出さないで、あけおめメールで済ませたり、
めんどくさいので自主的に廃止したりする人は多い。
出したとしても、両面共、印刷で済ませたり、写真を取り込み可愛く加工しておしまい、
そういう人がほとんどだと思うのだが・・・。
版画家としてはそうもいかない。
版画というのは、そもそも複数摺ることが出来るのが最大の特徴なので、
1枚だけいいものを版画で創って、後はコピーするみたいなことは、
自分的にはあり得ない。
(そういう版画家が昨今、増えている)
しかし、通常の版画作品と違うのは、摺る用紙が手漉き和紙ではないので、
(水彩画用細目、洋紙のハガキを使用)
和紙ほど絵の具の食いつきがよくないこと、
そして、画面が当然のことながらはがきサイズなので小さく、
しかも、余白がないので、
はがきの縁が即、余白と考えなければならないこと。
その本ばれんの入りきらない小手先のチマチマした作業、摺りのノリの悪さ、
いずれも私の性に合っていない。
が、それでも毎年、版画の年賀状を楽しみにしていてくれる人はいるので、
今年も重い腰を上げ、先週から作業に取りかかった。
丸4日もかけて、まず、原画を起こし、版を彫って、
次に絵柄を150枚摺り上げ、宛名書きをした。
この暮れの忙しい時期に丸4日の作業は長すぎる。
来年は戌年なので、
草原をオオカミみたいなスタイルの犬が疾走している図にした。
でも、再来年はイノシシ年なので、
また、イノシシが突進している図になるかもと途中で気づいたが、
すでに遅し。
まあ、毎年毎年、ジタバタと駆け抜けて、何か足跡が残せればと考えているのは
いつものことなので、こういう絵柄になっても仕方あるまい。
私らしいと思うことにした。
摺り自体は絵柄をあまりハガキの端っこにかからないようにしたので
やりやすかった。
だんだん、摺りにくいもの、版数の多いものは避ける傾向にあり、
これも歳のせいと自分で自分を慰めている。
宛名書きの方は印刷にしてしまうという手もあるが、
片面が印刷だと、手摺りの面も印刷っぽくなって
1枚1枚手で摺った意味がなくなるような気がするので、
こちらも律儀にすべて手書きである。
しかも、自分の名前の前に
「明けましておめでとうございます」の文字でコメントエリアを作り、
3~4行の文章を入れるので、
宛名の面も文字でガチャガチャしている。
一応、絵柄の方の面は作品のつもりなので、
そこに書いた文字はいれないのがマイルールである。
なのに、以前、まだ結婚前の長女が「版画の年賀状をちょうだい」といって、
摺りたての年賀状を数枚抜き取り、絵柄の面に
「今年もよろしくお願いいたします」と書いて、上司や友人に送ったことがある。
一般の人はきっとこんな感じと、
軽く殺意を覚えながら、
今年も自己満足にすぎない、めんどくさい年賀状を制作し、
無事、年の瀬の大仕事のひとつを終えた。
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