桜木町のブルグ13でシネマ歌舞伎『め組の喧嘩』を観てきた。
通常、シネマ歌舞伎は東銀座の東劇で観ることが多いのだが、
今日に限って、ブルグ13では歌舞伎の解説者の解説付きの上映だったので、
桜木町で観ることにした。
この作品は平成24年の5月に浅草に建てた平成中村座で上演されたもの。
しかし、同じく平成24年の12月に勘三郎は亡くなってしまったので、
これが最後の舞台となってしまったという作品だ。
当時、私も一度は平成中村座の公演を観に行きたいと思っていたが、
チケットが全く取れず、その内、またトライしようと思っている内に、
勘三郎が亡くなってしまったので、「あの時何が何でも観に行けばよかった」と
悔しい思いをしたことが思い出される。
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるが、
この作品は正にその言葉を象徴するような火消しの男達と、
もう一方で江戸のいい男を代表する相撲取りとの喧嘩が題材になっている。
粋でいなせで、けんかっ早い男衆は鳶職が本業でいざという時は火消しをする。
そんな集団が江戸には48組もあったという。
その内のひとつ、め組の組頭が勘三郎、
血の気の多い若い衆の頭が当時の勘九郎、
相撲取りに当時の橋之助。
酒の席の小競り合いが長じて、男と男の意地がぶつかる大喧嘩になり、
死をも覚悟して、火消し衆と関取衆が取っ組み合う中、
最後は梅玉演じる焚き出しの元締めが仲裁に入り、幕になる。
そして、平成中村座の舞台の向こう側が開くと、
そこにはスカイツリーがそびえ立ち、
折しも三社祭の御神輿をかついだ男衆が舞台に入ってくるという演出だ。
平成中村座がニューヨークで公演したときは、
おなじく向こうの壁が開くと、ニューヨークのポリスがなだれ込んできて
公演内容の捕り物とクロスオーバーするという演出だった。
それが『め組の喧嘩』では、ご当地浅草らしい祭り囃子と御神輿で
江戸時代と現代とがクロスオーバーした。
そんな粋でいなせで遊び心あふれる舞台が好きだった勘三郎。
病気を抱えていたせいか、玉の汗を吹き出しながらの熱演で、
観客を楽しませよう、一体となって感じて欲しいという思いが、
ガンガン伝わってきた。
やっぱり、生の舞台で観たかったなという思いと、
ようやくあの時観たかった舞台が、こうしてシネマで観られたという思いが、
同時にやってきて、
その舞台のパワーに力を得て、何だか元気をもらった気がした。
舞台を観ながら、勘三郎という人そのものが、
粋でいなせでけんかっ早くて、
ついでに、生き急いで逝っちまったんだなぁと思った。
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