1ヶ月ぶりに彫刻刀を握って、途中だった新作の彫り作業を進めた。
夏から秋にかけ、例年より頑張って版画家業にいそしんでいたのに、
なぜか11月に入って、ぱったりそれがお休みモードに入ってしまった。
11月始め、娘と孫が3泊4日で泊まりに来たのを機に、
アトリエを掃除し、木くずや絵の具のない状態にしたせいで、
気分的に途切れてしまったものと思われる。
今日はさすがに何とか取り戻さねばと、日曜日だというのに彫り台にかじりつき、
作品のメインパート、藁の船の飾り彫りに着手した。
この作品は初孫が生まれて、
赤ちゃんがもたらす幸福感や生命の神秘、
次世代に受け継がれていく命のバトン・・・など、
そのすべてが新鮮に感じられた感動を具現化したもの。
藁の船はその小さな命を抱きとめるゆりかごであり、
天国からおりてきた船をイメージしているので、
作品のメインモチーフである。
一昨日、娘にベビーシッターを頼まれ、生後約6ヶ月になった志帆に会ってきたが、
いつもニコニコ笑顔の安定した情緒、
笑えるほどプリプリもちもちの腿やふくらはぎ、
叫び声とも話し声ともつかない大きな声のおしゃべり、
始めたばかりの離乳食で、酸っぱさに顔をしかめながらもすったリンゴを食べる様子、
どれひとつとっても可愛いし愛しい存在だと再確認した。
そんな半年間の成長ぶりと、半年前の初めて会った時の感動をすり合わせながら、
この作品で何を表現するのか、
色彩はどんな感じにするのか、
ひとりアトリエで考え続けた。
かたわらでアルゼンチンタンゴのCDをかけながら、
こうした時間こそが本来、自分が大切にしていた時間だったと自省した。
季節は12月に入り、あとひと月で2017年も終わるかと思うと、
ただそれだけで気ぜわしい気分になるが、
12月前半でこの作品の彫りをすべて終え、
新しい年を迎えられたらと思う。
それにしても、2年前、首筋を痛めた影響で、左腕に再発した神経痛が毎日、痛い。
温泉に行っても、美味しいものを食べても、
版画から離れて力仕事をしなくても、痛みはひかない。
何か病を得て、それとつきあいながら生きていくのは辛いものだ。
多かれ少なかれ、人は肩が凝っただの腰が痛いだの、
もっと重篤な病が身に降りかかったりしながらも、
それでも生きている。
自分も病を得ることで、人の痛みがわかる大人にはなれるのかも知れないが、
生きるモチベーションが下がるのは困りものだ。
この痛みを何とかやっつけて、
気兼ねなく新作に取り組める日がくることが、今の1番の願いだ。
一応、気休めに叫んでみるか。
「ちちんぷいぷい」
「痛いの痛いの、飛んでいけ~!」
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