2020年2月24日月曜日

最終上映『七人の侍』




最寄り駅のTOHOシネマで10年間開催されていた
『午前10時の映画祭』が、
ついに3月26日で終わる。

午前10時から毎日1回だけの上映で、
昔の名画を
1本につき2週間ずつ上映してきた。

これまで、私も何回か観てきた。
「ティファニーで朝食を」
「ローマの休日」
「アラビアのロレンス」
「ニュー・シネマ・パラダイス」
「風と共に去りぬ」
「ゴッドファーザー」
「ベニスに死す」などなど。

主にというか覚えている限り、
洋画の懐かしいものを選んでみてきたが、
最後に来て、
黒澤明監督の「七人の侍」を観ることにした。

3月に入っての最後の2本は
「Back To The Future」なので
あまり興味がない。
なので、『午前10時の映画祭』としては
これが最後の作品になるだろう。

会場は8割がた埋まっていて、
おじさんが主で、
やはり若い人はほとんどいない。

モノクロームの昔の作品に惹かれている年代というか、
白黒の画面の美しさがわかる人たちという感じか。

なんと、本編が3時間27分という超大作で、
1954年4月26日公開。

ということは、私の生まれ年生まれ月なので、
当然、私は映画館で観たことはなく、
これが初の映画館鑑賞となる。

画面は以前ビデオで観た『羅生門』にそっくりで、
これが黒澤映画の画面創りかと思う
木の木漏れ日や焚火の陰影などをうまく利用した
モノトーン画面の絵画的な美しさが
随所に効果的に使われていた。

物語は
馬に乗った野武士の襲撃から村を守るために
7人の侍を雇い、
村人と総出で戦うという内容だ。

主演は
志村喬、三船敏郎、木村功。
出演者のほとんどが男性だし、
貧しい農民や着の身着のままの武士なので、
美しい画面になるはずもないのだが、
モノトーンの撮影による
計算された黒と白のリズムが
高貴な印象を作り出している。

スパイスのように登場する
半裸で長い髪を洗う女の後ろ姿と、
花畑でむつみ合うこの女と若い侍、
能面のような顔の寝床の女房の肌の白さが、
とても絵画的なまめかしく、
強烈な印象を残した。

この映画自体は4K処理されているらしいが、
今期の大河ドラマ「麒麟がくる」の
ギトギトしたグリーンやピンクにくらべ、
なんという違い。

「麒麟がくる」は4Kや8Kテレビを持っている人には
自然な色に見えるらしいのだが、
そうじゃないテレビしか持っていない庶民の家では、
とにかくギトギトし不自然な感じで見づらい。

映像技術は日進月歩で、
きっと65年前に公開された「七人の侍」と
今日、私が映画館で観たものは
相当違うのだとは思うが、
1度もスクリーンで「七人の侍」を観たことがない私には
これが記憶に残ることになる。

3時間26分かける必要があったのか、
総天然色で撮影されていたらどんな印象だろうとか、
疑問はいろいろあるが、
「世界のKUROSAWA」が残した映像美は
しかと受け止めることができた。

こうして「午前10時の映画祭」そのものが終わり、
あと数年したら、
あの頃は「午前10時の映画祭」なんていう
いい企画があったなぁなんて思う日がくるだろう。

私にとって一番印象に残っている
「午前10時の映画祭」はといえば、
「ニュー・シネマ・パラダイス」と
「ローマの休日」だろうか。

どちらも映画音楽と共に、
版画の制作時に何度となくリフレインされ、
人生を彩ってくれた。

新しい映画もいいけど、
昔の映画のノスタルジックな永遠性は
人の心の奥深くまで届いて染みるなぁと
しみじみした
「午前10時の映画祭」最終上映だった。


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