夏中かかって彫っていた4点分の版の内、
中型サイズの2点の試摺りと本摺りを
10月中にやり終えたいと思っていた。
10月に入っても、今年はいつまでも暑く、
摺りに適しているとは言えなかったが、
そんなことを言っていては
今後、1年の内半分は摺れないことになる。
地球温暖化とひとりアトリエで戦いつつ、
10月前半でなんとか1点摺り上げた。
10月後半に予定していた作品は
前半に摺った作品と対の作品で
モチーフは「蓮」である。
前半に摺った作品は明るい色調で
「花開く朝」と命名した。
後半の作品はそれに対して
イメージとしては夕暮れ時か…。
作品タイトルはまだ決まっていないまま、
試し摺りをとり、版の調整を行い、
本摺りへと向かった。
この作品は池の水の輪にフォーカスさせようと
背景の雨は、紙の白だけで表現するつもりで
当初、雨の版を作らなかった。
いつもは雨の版があり、
白や水色、薄紫、薄緑などの
グラデーションで彩られる。
ところが、試し摺りをとってみたら
作品の上半分が
紙の白の雨ではもたない気がしてきた。
しばし悩んだ後、先週の始め、
急遽、雨の部分を版木にトレースし、
新しく雨の版を彫ることにした。
今まで45年以上、木版を創っているが、
そんな大きな版を後から彫ったことはない。
しかも、雨の版は細い線でできているので
後から彫るとトレッシングペーパーの原画が
収縮していることも考えられ、
版がズレる可能性がすこぶる高い。
しかし、やはり雨の版は必要と思う気持ちは
変えられず、
後は自分の版のトレースに関する正確さを
信じるしかない。
先週前半はそんな心配を抱えながら、
試し摺りや彫り増し、版の調整などをしていた。
そして、木曜日に
絵具の調合と和紙の湿しをして
いよいよ金曜日から本摺り開始。
その間も毎日毎日カウンセリングはあったし、
その内、ふたりのクライエントさんは
いずれもスキーマ療法の山場を迎えていたので
しっかりナビ出来ないといけなかった。
しかし、期せずして
おふたりの口から
「今回、目からウロコでした」という言葉を
聞くことが出来、
おふたりに新しい道が拓けたようで
こちらも嬉しくなった。
心理カウンセラーとしてのやりがいは
こうしたところにあるので、
言葉の力で長年の呪縛やら思い込みを解き放ち
開放されていくクライエントさんの
表情を見ることが出来る瞬間は
何とも言えない充足感がある。
そんな気持ちはカウンセリングルームに置いて
外に出て帰路に就く間に
今度は気持ちを版画家仕様に作り直す。
もしくは版画家からカウンセラーになる時も
ある、そんな毎日だった。
自宅のアトリエで本摺りに入ってからは
気持ちをとぎらせることなく集中したいので
亀井聖矢君のピアノ曲を流しつつ、
家人に「近づくなよオーラ」をまき散らし
一心不乱にバレンを動かした。
そんな週末を過ごし
目立ったミスもなく6枚の本摺りが
無事に摺りあがった。
最後に花の2版目の縞々を摺っているあたりで
天からタイトルが降ってきて
この作品は「紫音」にしようと決めた。
夕暮れとか黄昏とかの言葉より
紫色の背景色を使ったことで
静かに雨が降っている感じを表現したかった。
後から彫った雨の版が
全くズレることなく摺りおおせたので
ちょっと自分を褒めてあげたい気分。
そんなこんなをグルグル考えているうちに
思いついたタイトルである。
タイトルがしっくりくるのかこないのか。
それはかなり重要な要素で
いい感じに収まると版画家としての歓びを
感じる。
心理カウンセラーと版画家とでは、
だいぶ歓びの方向性が違うことを実感するが
そんな違う歓びと充足感に満たされた
ここ数日だった。
本日のご褒美は
ガトー・ド・ボワイヤージュの
プリンアラモード
この美濃焼のカップが京急百貨店
開店28周年記念オリジナルで
期間限定のカップスイーツだ。
8つのテンポが同じ美濃焼のカップで
それぞれのスイーツを作って競っている。
美濃焼が欲しくて24日から狙っていたけど
各店舗限定毎日20個だけなので
買えずにいたが
ようやく昨日、2個手に入れることができた。
期間中に馬車道十番館の
ほうじ茶ティラミスもゲットして
違う柄の美濃焼カップも揃えたいものだ。
そんな風に頑張った自分に上手にご褒美をあげ
飴とムチで難局を乗り切る
はぎわらであった。
因みに選挙は、木曜日に
期日前投票で済ませている。
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