久しぶりに木版画の本摺りを決行した。
木版画は加湿器をかけ、クーラーは使えず、
いったん湿らせた和紙が乾燥で縮まないよう
終始、気を遣いながら、本摺りを行う。
つまり、摺りの作業は
暑過ぎて出来ないので、
7~9月は涼しくなるのを待ちながら、
大小4点分の彫りの作業を行っていた。
10月の私の版画におけるミッションは
摺りの作業に取りかかることだが、
出来れば、4点の内、
2点は10月に試し摺りと本摺りを済ませ
完成させたいという心づもりがあった。
ということは
10月前半に1点、後半に1点とすると
前半の1週間で、1点分の試し摺りをとり、
色の調整は元より、
版の微調整や彫り直しなども含め行い、
「よし、行ける!」となったら
2週目に2~3日かけて
本摺りをしなければならない。
そのつもりでカレンダーを見てみるが、
カウンセリングやお稽古事はもちろん
10月から意を決してカーブスを始めたせいで
はやくも埋まっている日が何日もある。
それを今一度、目を細めて、精査し、
ひねり出した日程としては、
先週の前半で試し摺りと版調整、
週末から週明けにかけ
3日かけて本摺りをするという計画を立てた。
以前は1日恐怖の14時間摺りとかいって
粋がっていたが、
ここ最近はそれをしようにも体力が持たず、
摺りの後半、終わりかけの大切なところで
凡ミスをしたりするので、
今は2日か3日に分けて摺ることにしている。
この週末は
土曜日はカウンセリングと陶芸、
日曜と月曜は1本ずつカウンセリングが
入ってはいたが、
火曜日以降は終日何かが入っているので、
合間をぬったり、半徹夜を入れながら
本摺りを決行出来るのはここしかない。
先週金曜日に絵具を調合し、ラップをかけ、
土曜日の朝イチに和紙を湿して重しをかける。
その後、カウンセリングと陶芸で
夕方まで家を空けたが、
夕飯を作って食べた後は
いよいよ摺りに向かい合える。
「歳を考えろよ」とか
「また、脳貧血とか起こすんじゃないの」と
心の声が言っているが
聴く耳を貸しているといつまでも始まらない。
土曜日の夜11時、
外がしとしと雨降りなのをいいことに
(湿気ていると、和紙の乾きが遅くなる)
ひとりアトリエに籠って
雨のパートを摺り始めた。
雨の日に雨を摺る
なんだか気分がいい
このパートがこの雨シリーズの中で
まずは気を遣うめんどくさい部分なので
ここが終わるとホッとする。
せめてここだけは終わらせたいの一心で
久しぶりのばれんを動かす。
5月以降、
丸5か月は摺りの作業をしていなかったので
正座して前のめりになる力仕事は
しんどくないというと嘘になるが
少しは涼しくなって摺りができる喜びの方が
勝っている。
雨と花の1版目の一部を摺って区切りをつけ
夜中の2時過ぎ、
自室に戻り、血圧を測ったが
いつもと同じぐらいだったので、
ばれんを持ったまま、
脳の血管が切れて倒れるなんてことは
なさそうだ。
何だか脳が興奮していて
3時半まで眠れなかったけど、
7時過ぎには起きて、
日曜日の午前中は続きの作業をした。
木版画を摺る時は
なるべく淡い明るい色から摺る、
できれば背景にあるものから先に摺るのが、
約束だが、
一面摺りつぶすベタの部分が
もっとも体力がいるので、
それをどこにもってくるのかが悩ましい。
結局、日曜日の午前中の最後に
背景のエメラルドグリーンの背景を摺り、
リフレッシュするためにも
カウンセリングに出かけ
気分を変え、体勢を変えることにした。
の、つもりだったが、
このクライエントさんが非常に重いお悩みで
医者の夫はモラハラで
ふたりの子どもは委縮して登校拒否。
目の前のクライエントさんは
母親としてどうしたらいいのか
途方に暮れているという。
しゃべりだしたら止まらない
クライエントさんの話が1時間40分。
カウンセラーはまず聴くのが仕事とはいえ、
なかなかに辛い。
とにかく見立てを立て、今後の方針をお話し
次回の予約を約束してセッションを終えた。
家に帰っても
すぐにはアトリエで続きの作業をとはいかず
しばしのブレイク。
それでも自分を奮い立たせて
夕方、一番の肝である蓮の葉っぱの黒を
摺った。
思いのほか、重篤なお悩みに
脳みそをたくさん使ってしまったが、
同じ母親として
そんなモラハラ夫や不登校児を抱えていたら
さぞや毎日辛かろう。
微力ながら力になれたらと思ってしまう。
明けて本日、月曜日、
我が家の夫はゴルフバッグを車に積んで
早朝からいなくなってくれたので、
これ幸いと
アトリエで最後の直線をひた走る。
今日は
10時半からのカウンセリングだったので
最悪、10時に家を出れば間に合う。
その前に化粧をし着替えて…と考えると
今から1時間15分は摺ることが出来る。
そう踏んで
アトリエで作業開始、
無事に蓮の花の2版目や
最後のリタッチ(内緒)を済ませることが出来た。
残るは水張りだけの状態にして
昨日の日曜日とは打って変わって
ルンルンで坂道を降り
カウンセリングルームに向かった。
午後、水張りを終え、写メを撮ったものが
掲載した画像である。
途中の手順も見ての通りのめんどくささだ。
それでも、2024年の後半、
第一号の作品が無事に摺りあがったことは
喜ばしい。
途中、一度、あまりに疲れて
摺っている最中に脳貧血を起こしそうに
なったが、じっとしてやり過ごす術を覚えた。
今日のクライエントさんは
22歳の時、お父さんが虚血性心不全で
突然、亡くなり、
道で倒れたので誰も立ち会えなかったと
嘆いていらしたが、
私もそうならないとも限らないと
一瞬、脳裏をそんなよからぬ考えがよぎった。
毎日のようにいろいろなお悩みを聴いていると
人の人生はままならないなと思うし、
今、この時を味わい
悔いのないように生きなければと思うが、
意外と今のこんなぎゅう詰めの生活は
悪くないと思っている私がいる。
何かあったら
「彼女は彼女の人生を全うしたに違いない」
そう思って、笑ってやってください。
とりあえず、夫は
「今日の夜ご飯はいらない」というので
「ラッキー!!」と叫んで
カウンセリングの帰りに
寿司折とさつま揚げを買って帰宅した。
本日、完成の作品
タイトル
『花開く朝』
明けない夜はない!!
0 件のコメント:
コメントを投稿