歌舞伎の舞台を映画に起こし
映画館で上映するのが
『シネマ歌舞伎』だ。
MOVIX系の映画館でも上映されているが、
私は何と言っても
東銀座の東劇で観るのが好きだ。
一般の映画館と違って
古いのだが天井高がすごくあって
椅子もゆったりしているし
椅子の配列も互い違いになっていて面白く
ちょっと歌舞伎座に歌舞伎を観に行く時と
似たような高揚感がある。
東劇には他の名画と呼ばれるようなものも
上映されているので
シネマ歌舞伎は月のうちたった1週間だけ。
今月は
『怪談 牡丹燈籠』
幽霊より怖い人間の業
~三遊亭圓朝の怪談噺~
舞台としては歌舞伎座で2007年10月に
上演されたもの。
12月に怪談??と思うかもしれないが、
舞台の前半は
萩原新三郎なる御仁に恋焦がれて
焦がれ死にした娘お露が幽霊になって
お付きの婆ばと共に化けて会いに来る話なので
確かに怪談なのだが…。
主役は
萩原新三郎に仕える下男・伴蔵と妻お峰
物語は噺家三遊亭圓朝が高座で
語って聞かせるという形式をとっている。
内気な浪人萩原新三郎を演じるのは
片岡愛之助
恋焦がれて死んでしまい化けて出るのが
お露の中村七之助
幽霊に懇願されて大金と引き換えに
お札をはがしてお露が内通できるようにするのが
伴蔵の片岡仁左衛門
伴蔵の妻でちょっと勝ち気で一途な女将さんを
坂東玉三郎
噺家とおしゃべりな田舎男の二役を
見事に演じ分けているのが
坂東三津五郎
映画は11時開演で13時45分まで
途中休憩10分の時は
スクリーンには『幕間』の文字
何とも歌舞伎を意識したユニークな演出
物語はとても長いので
ここに書くのは辞めておくが、
とにかく芸達者な役者が勢ぞろいで、
とりわけ二役演じた三津五郎は
とても同じ人が演じているとは思えないほど。
仁左衛門と玉三郎の息の合った夫婦のやり取りは
そのテンポのいいセリフ回しといい
表情といい
本当に絶妙で面白かった。
あれを生の舞台でやっていると思うと
その膨大な量のセリフを
一発勝負の掛け合いで演じているのだから
驚くばかりだ。
(セリフの量は『渡鬼』の比ではない)
実際に舞台を観に行くと
よほどのかぶりつきでもない限り
役者の表情の細かい動きまでは見えないが
映像だと大きく映し出されるので
ごまかしようがない。
2007年10月の上演だと
みんな50代前半ぐらいか、
仁左衛門も玉三郎も三津五郎も凄すぎる。
そして、
三津五郎はすでに今は亡き人。
ここには勘三郎は出演していないが
このすぐあとぐらいに
勘三郎は亡くなっている時代か。
今更ながら、この作品は
歌舞伎界の黄金時代の舞台だと感じ入り
映像として残してあったことが
せめてもの救いだと思った。
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