2014年2月26日水曜日

今月のなでしこはお菓子作り



 
 
今月のなでしこの会はバレンタインデーもあったので、お菓子作りがテーマだった。
生徒さんに受験生を抱える方がいたので、日にちを後ろにずらしたから
結局、バレンタインデーには間に合わなかったけれど、
今週と先週の2回
それぞれ2種類のお菓子を作った。
 
先週は『ガトーショコラ』と『パンナコッタ』で
今日は『フロランタン』と『洋梨のクラフティ』
 
急に個展が決まったせいで、ブログをアップする時間がなかなかとれず
2回まとめてのご報告になってしまったがお許しいただきたい。
 
いつもはひとりで作って、好評をいただいている『ガトーショコラ』と『フロランタン』に
新しいレシピの柔らかもの(プリンみたいなお菓子という意味)をそれぞれにつけ
両方いっぺんに作ったとしても大丈夫なように考え、紹介することにした。
 
先週のガトーショコラはお持ち帰りの分を食べたご家族から「100点!」と褒められ
「すっごくおいしかったです~」と報告があったので、
「でしょでしょ~!!」と私もすっかり気をよくして、
今日もノリノリでフロランタンを作った。
 
といっても、なでしこの会のメンバーはとても積極的なので、
レシピを見ながら先にひととおりの説明をすると
あとはどんどんずんずんキッチンに立って、
手分けして作業を始めてくれるようになったので、
私はカウンターの外から時々かけ声をかける程度で、
あとはみんながやってくれるから楽ちんだ。
 
今日も途中からラム酒のいい香りが匂い立ち
アーモンドをから煎りする香ばしい匂いに食欲が刺激され
クッキー生地の焼ける甘い香りが家中に充満して、幸せな気分になる。
 
お菓子作りの時の匂いは本当にたまらなくいい香り。
 
「お菓子を焼くって本当に心のゆとりを感じるものですよね」とひとりが言い
「そういう生活ってあこがれですよね」と別のひとりが応える。
 
子どもや夫など家庭のことで自分の思うにまかせない日常があるからこそ
こうした時間がいかにも貴重だということを実感しながら
丁寧に炒れた紅茶と共にスイーツをいただく至福の時。
 
そういいながらも、最後は時計を見て慌てふためき家路を急ぐのを見ると
まだまだみんな当分こんな感じかなと思う。
 
私もすこし前までこんなだったかなと思い出しつつ
みんながまだ、あら熱のとれていないフロランタンを
大事そうにラップに包んで持って帰る姿を
微笑ましく見送った。


2014年2月25日火曜日

プロによる作品撮影

 
 
 
3月下旬に個展が決まってから、毎日の予定が慌ただしく過ぎていく。
 
それでなくとも何かと予定は入っていたが、
更にに2月は大雪が2度も降り、その影響が雪の後にも続いた上に
個展をするなら、これもあれもしなければということが出てくる。
 
今日は以前、作品撮影と自分のプロフィール撮影をお願いした
プロのカメラマンによる作品撮影が行われた。
 
出張撮影なので、宅急便で気軽に送れる大きさではない大作ばかり11点選んで
まとめて撮影してもらうことにした。
 
F氏は午後1時、車に撮影機材を大量に積み込んで我が家まで来てくださり
いつもはアトリエとして使っている和室に機材をセッティングし
そこをスタジオとして撮影が行われた。
 
1年半前の前回は初めての作品撮影だったので、
プロの作業をウロウロ見守ることしか出来なかったが
その作品撮影の半年後にプロフィールも撮っていただいて気心が知れてきたので
今日は撮影助手としてのお手伝いも多少は出来た気がする。
 
当初の撮影目的は
私が所属している紫陽花展というグループ展が、今年、15回記念展のため
ひとり1点ずつ作品の葉書をつくるというものだったが
私の場合、撮影当日までに個展も決まったので
撮影点数も増やしたし、撮影の目的意識も高まったと言える。
 
カメラマンのH氏も評論家プロデュースによる個展が決まったことを喜んでくださり
撮影の合間にそうした美術界の話をいろいろして、
久しぶりにカメラマンと絵描きがプロフェッショナルな関係で過ごしていると感じた。
 
F氏が若い頃からフリーで、カメラ一筋の世界に生きてきた話を語り、
私が絵描きでありながら、結婚して子どももいる生活の中で
更に興味のある多方面に首を突っ込んでいるという対照的な生き方を語った。
 
しかし、その対照的なアプローチなれど、プロのカメラマンとプロの絵描きとして
お互いのリスペクトが感じられるいい時間が流れている。
 
F氏のカメラのファインダー越しにあるのは、私の作品で
今日はその作品にスポットが当てられ、色の調整が行われ、
デジカメとフィルムカメラの両方で1枚1枚の作品が記録されていく。
 
その時間のかかる丁寧な作業と真剣なまなざしを脇で見ながら
プロがプロの作品として真摯に向き合ってくれていることを感じた。
 
F氏の仕事を間近に見ることで
ややもすれば世間から甘く見られがちな『女流作家』だが
自分自身、どこかで保険をかけたりせず、
ここらで絵描きとしての覚悟を見せねばと再確認させてもらった気がする。
 
さて、還暦
遅れてきた新人がここらで花開くことが出来るのか
勝負の時が迫っている。

2014年2月18日火曜日

2月の歌舞伎鑑賞

 
 
 
 
 
今日は楽しみにしていた歌舞伎鑑賞の日だった。
演目は鶴屋南北の通し狂言『心謎解色糸』(こころのなぞとけたいろいと)
 
運命の糸に操られた男女の想い 恋と野望が絡み合う大南北の傑作
とある。
 
午前11時に始まって、午後3時5分に終わるまで、
全編この作品だけの世話物のお話なので
歌舞音曲系の華やかさがまるでない芝居で
途中で寝てしまったりするとわけが分からなくなるので、けっこうきつかった。
 
一緒に行ったのは母代わりの古い友人というかおばあさまで
時々ご飯にいったり、おばあさまのコネで歌舞伎や新派などのチケットをとってもらい
観劇に出掛ける仲である。
 
久々の歌舞伎座だったので、私もキモノで出掛けた。
岩下志麻プロデュースの江戸紫の訪問着に金糸の波文様の二重太鼓という
けっこう気合いの入った格好で行ったのだが
さすが歌舞伎座、会場には案外キモノ姿のお客さんが大勢入っており
中には半玉さんかなと思うような新日本髪に結った若い女性がいたりして
なかなか華やかだった。
 
しかし、役者が染五郎と菊之助がメインで、演目が地味な世話物なせいかどうか
1階のS席にはやや空席が目立ち、9割ぐらいの入りというあたりか・・・。
この内容で18000円の席を全部埋めるのはちと難しいのかもしれない。
 
10時半会場11時開演で、おばあさまとは席で落ち合うことになっていた。
お昼のお弁当は私が買っていく約束だったので、
東銀座の駅から銀座4丁目まで歩いて、まずは三越の10時半の開店を待ち
地下2階にダッシュして観劇弁当とお茶と和菓子を5分で買い求め、
また、東銀座の歌舞伎座まで駆けつけるという作戦を決行した。
 
同じことを考える人が大勢いるとみえ、
三越の地下1階入り口は10時25分には黒山の人だかりができ
何かのセールでもあるのかという騒ぎになってビックリ。
 
そのちょっと豪華なお弁当を35分もある幕間に広げ
自分の席でいただくのが、いつもの歌舞伎鑑賞のパターンだ。
 
お弁当を食べ終わる頃になると、
鯨幕の前に、隠れていた色とりどりの緞帳が降りてきて1枚1枚紹介される。
川島織物だの龍村だのの、日本刺繍や織物の贅をつくした美しい緞帳をながめながら
季節の野菜の炊き合わせや、穴子寿司などほおばるのは
歌舞伎鑑賞における楽しみのとひとつだ。
 
長丁場の演目の途中で、ゆらり舟を漕いだりしながらも
歌舞伎座という特別な空間に身を置き、
非日常の時を過ごすのは
私にとって豊かで贅沢なひととき。
 
先週から続く個展のための作品創り、
昨日の子育て支援のベビーシッター、
明日のなでしこの会のケーキ作り、
その狭間にすっぽりはまった歌舞伎という異空間。
 
それはやっぱり日本人の心の栄養として、極上の異空間だと実感した。
 


2014年2月14日金曜日

雪国よこはま

 

 
 
先週末に続いて、今日も横浜地区には大雪が降っている。
前回は2日間、これ幸いと家に閉じこもって、版画の本摺りをしていたが、
今日は整体の予約が取れていたし、子育て支援のワークも入っているので
家に蟄居するわけにもいかない。
 
更に「もしこんな感じのものがあったら心がけておいて」と頼んでいた
キモノの道行きコートの反物を何点か仕入れてきているからと
なじみの呉服屋さんから、昨日、留守電も吹き込まれていたし・・・。
 
他にも新しい名刺を個展の前に作らなければなど、いくつか用事が重なっていた。
 
朝の内はまだ雪も積もっていなかったので、今日のうちに4件とも済ませられればと
完全防備の温かな格好をし、
整体の先生に渡すつもりのチョコレートの包みを持って家を出、
まずは長靴があれば買おうかとステーションビルの中の靴屋さんに向かった。
 
しかし、いつもは可愛い長靴がとりどりに並ぶコーナーには
派手な太い白と紺のボーダー柄の長靴が1点残されているきりで、
他はすべて売りきれ。
いずこも同じことを考えるんだと気づいて、長靴購入は断念。
 
次に名刺を注文しに判子屋さんに行き、すぐに可愛いデザインの見本を見つけ
ものの15分で注文完了。
 
そして、そこから5分ほどの留守番電話を残してくれた呉服屋さんに行った。
しかし、なじみの女将さんはおらず、共同経営の男性が私の顔をみて
慌てて女将さんにすぐ来るよう、電話をかけてくれた。
 
「ほどなく来ますので」とコーヒーとお茶菓子を出してくださり、
総持寺の豆まきの話や先週の大雪の話など、四方山話をして、
かれこれ30分近くも経ったのに、まだ女将さんはやってこない。
 
そこで心配した男性がもう1度電話すると、なんと驚いたことに
慌てて家を出たら転んで、救急車で運ばれて今、病院にいるという。
 
いつもはビシッとキモノを着て、お店にいる女将さんのこと、
今日は雪だから午後からお店に出ようと思っていたらしいが、
私の来店で、慌てて無理してキモノに着替えて、草履が雪で滑ったのか・・・。
 
詳しいことは聞けず仕舞いだったが、
その電話の様子はちょっとしたねんざあたりではなく、
足の骨折か、悪くすると腰か・・・。
はたまた、頭も打っているかもしれない。
 
何にせよ、私のために怪我をしてしまったかと思うと、
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 
結局、共同経営の男性から、
女将さんが京都で仕入れてきたという反物を見せてもらい、
一番気に入ったものを仕立ててもらうことにして、お店を後にしたが
怪我がどんな具合か案じられてならない。
 
今日の神奈川県の雪によるけが人は21人とニュースで言っていたが
救急車で運ばれたんだから、間違いなく21人の内のひとりは女将さんだ。
 
あれよあれよと積もりだした雪は
夕方6時半、家路につく頃には12~13㎝になっていた。
 
午後9時、恐る恐る窓を開けてみると、
そこは正に銀世界。
明らかに夕方より積もっていて、30㎝ぐらいあるかも。
強い風が吹き、横なぐりの雪が降りしきっている。
まるでスキー場のロッジで見たかのような雪景色が広がっている。
 
横浜はいつ、こんな雪国になってしまったのかと思うような大雪だ。
明日の陶芸教室はキャンセルして、
またアトリエに籠もって、自分の制作をして過ごすのが一番いいのかもしれない。
 
それにしても
女将さんの怪我が大したことありませんように。
皆様も外に出るならくれぐれも転ばないように、注意なさってくださいませ。
 


2014年2月12日水曜日

木目柄の千代紙

 
 
 
今日は木目柄の千代紙を12枚摺った。
以前から何点か創っているオブジェ(立体)に使う木目柄の作品である。
 
木版画は木版の版が1点あれば、何十点でも何百点でも摺ろうと思えば摺れる。
事実、浮世絵は江戸時代、何十何百と摺り増されて、
いわば印刷物として流通していた。
 
現代の芸術作品としての木版画は、エディションナンバーといって、
作家が「生涯かけてこの作品は30枚しか摺りませんよ」という摺りの最大値を決め、
その内の1/30から30/30というエディションナンバーと呼ばれる数字を
それぞれの作品の左下に書き込むことで、
その作品の希少性を確保してきた。
 
だから、作家自らが摺る作品数は30枚ぐらいが限界なので、
30前後がほどがよいエディションとされてきたし、
工房で摺り師が摺っている作品は30枚じゃ商売にならないので
エディションナンバーが200とか300とかにならざるを得なかった。
 
けれど、物理的には版が壊れてしまわない限り、いくらでも摺れるのが版画だ。
それをこの木目柄の千代紙は表している。
 
以前、自分で彫った木目の版木をいろいろな色に変えて摺ることで
いくらでも木目柄の千代紙風木版画が量産されることになる。
 
それをパネルに貼ったり
椅子や靴などに貼って、千代紙で覆い尽くすことで、
木製のものでも鉄製のものでも皮製のものでも
何もかもが木目柄になるという現代美術的発想の作品が出来上がる。
 
今回の個展は評論家の希望で、木目シリーズがメインになるので、
すでにある木製の椅子とパイプ椅子に加えて
スチール製の脚立を新作として発表しようかと考えている。
 
脚立の素材は冷たいスチールで、脚立を立てる時にはガチャガチャいうという
固定概念があると思うが、
木目柄で覆い尽くされることで、違うイメージをもってもらえれば面白いと
考えている。
 
芸術というと何だか難しいもの、分かりにくいものという印象があると思うけれど、
私の中ではそうした理屈や哲学はどうでもよくて
共感性とユーモアが大切だと思っている。
 
さあ、こんな私の作品を美術評論家はどんな風に評し
案内状の推薦文にしてくれるのか
今はとても楽しみにしているので、
自然とばれんを持つ手に力が入る。


2014年2月9日日曜日

『大雪』と書いて『チャンス』と読む

 
 
 
 
 
 
週末、関東地方は20年に1度の大雪に見舞われた。
土曜日の夜中に降り始めた雪は、朝、起きたときには5㎝ぐらいに積もり
終日、強い風と共に降り続いて、夜半には20㎝以上の積雪を記録した。
日曜日の朝、ようやく外に出て雪かきが出来るようになったが
結局、土日の交通機関はほとんど運休になり、機能マヒに陥った。
 
私も土曜日の予定を変更し、
日曜日のデジカメ講座は一旦、時間を午後にするという連絡があったが
結局は電車がまだ動いていないということで、当日になって休講になった。
 
きっとこうなるという予感がしたので、
私は週末は版画の本摺りをしようと決め、
急遽、紙の湿しと絵の具の調合を行い
金曜日の夜中から本摺りを開始することにした。
 
折しもソチでのオリンピックの開会式が始まり、
絵の具を作りつつ、ライブで開会式のもようを見て、
自分の気持ちも摺りに向けてあげていった。
 
なにしろ木版画の摺りで大敵は乾燥である。
加湿器をたきながら、湿した和紙が縮まないよう、
湿気たアトリエで摺っていくわけだが、
ピーカンの日と雨や雪の日だったら、当然、雨や雪の日の方が摺りやすい。
 
『大雪』と書いて『チャンス』と読むぐらい、
私にとって大雪は願ってもない摺り日和なのだ。
 
まだ、試摺りをとって間もないので、微調整が済んでいないし、
試摺りの疲れで体調も万全とはいかないが、
それより何より湿度が高いことが優先する。
そう考えて、週末は『わたしゃ、鶴になる』と決めた。
 
摺る作品はぶっぽうそうがモデルの大きな作品だが
私自身は鶴の恩返しの鶴のごとく、
アトリエに籠もって誰にも見られないように戸を立てきり
鬼気迫る妖気を発散しながら、黙々と本摺りをした。
 
まさに鶴の恩返しのお話のごとく、織り上がったのは美しい錦だったように
自分なりに渾身の蒼いぶっぽうそうが出来上がった。
しかし、
腰はバキバキ、目はショボショボ、腕は上がらず、肩には乳酸がもっこり。
今ここで、整体の先生の出前を頼みたいぐらいだ。
 
この2日間、新聞を新聞受けに取りにいく以外、1歩も外には出ず
何とか4枚の本摺りを摺り終えた。
 
その代わり、
我が身の羽根こそ抜かなかったけれど(生えてないっつうの)
おつうはほとほと疲れたのであった。
 


2014年2月7日金曜日

産みの苦しみ

 
 
 
 
1月いっぱいで彫り上がった作品の試し摺りが始まった。
2月に入るやいなや、3月下旬の個展が決まったので、にわかに忙しさが増し
気分は高揚しているのだが、
それとは別に、冷静に今、目の前にある新作を仕上げなければならない。
 
数日前、美術評論家との打ち合わせで、今回の個展は『木目シリーズ』を中心に
過去の作品を体系立ててならべようということに決まった。
 
木目シリーズはなぜ始まったかといえば、
椅子のシリーズの中で木の椅子の木目を彫りながら、
木版画家なら木目を自分ですべて彫ってみようという思いが湧き上がり
そこからすべてが動き出したと言える。
 
だから、今回の個展に並べる作品は皆、木目や木が関係しているものにすべき、
そう考えると、今目の前にある鳥の大きな作品は展示しない方向かもしれない。
 
元々、この作品は来年の4月の個展に向け、準備していた新作だが
今回の個展に出せないかもしれないと思うと、ちょっと気がそげる。
それでも、間違いなく来年の個展のメインの壁にかけたい作品なので
ここ一番いい作品に仕上げたい気持ちは満々である。
 
彫っている時からある程度イメージが湧いていて
試し摺りもさほど苦労せずいくかと思っていた。
が、しかし、ここ2~3日、案外苦戦中だ。
 
夜空に飛ぶぶっぽうそうがモデルなので、
全体に暗い画面になることはわかっていたが、
いざ、摺ってみると、やっぱり暗いというか重い。
軽い作品ではないのだから、重くて何が悪いとも思うのだが、
これでいいのか逡巡している。
 
木版の制作工程の中で
試し摺りはもっともアーティスティックで、繊細で、ナーバスになる。
毎回、このパートを楽しまなくてはと思うが、
今日も昨日も一昨日も寒くて寒くて・・・。
しかも、明日は20年に1度の大雪だそうな。
気分転換のエステは早々にキャンセルして、明日は1日家に籠もることにした。
 
写真は順々に摺り重ねられていく工程を写したものだ。
案外、紙の白が強いし美しいと毎回、この段階で思う。
しかし、途中で辞めるわけにもいかず、すべての色を摺り終え、
画面を絵の具で覆い尽くすと
どこか納得がいかない・・・。
 
何が納得出来ないのか。
どこをどうすればいいのか。
 
そんな
誰にも相談できない、
自分しか信じるものがない、
版画家の正念場を、今、迎えている。
 
まるで、オリンピックに出る選手達のようだ。
 
それに引き替え、何なんだあの佐村河内守とかいう輩とゴーストライターとやらは。
まったくあり得ない愚挙だと思うが、
それに踊らされてCDを買ったり、コンサートに行ったり、
あの曲に涙した人々の気持ちはどうしたらいいんだろう、全く。
 
ヤレヤレ。
きっと明日もしんしんと降る雪を窓辺に感じながら
ぶつぶつ独り言を言いつつ、作品と対峙することになるだろう。
 


2014年2月3日月曜日

豆まき初体験

 
 
 
 
 
 
今日は2月3日、
2月のはじめとも思えない温かな日和の中、
各地で節分の豆まきが行われた。
 
神奈川県鶴見にある総持寺大本山でも例年大勢の人がつめかけ
盛大に豆まきの法要が行われると知って、
年女として一生に一度ぐらい体験してみようかという気になった。
 
最初はその申込みの金額に少しびびったが、絵画教室のメンバーがふたりお伴に
ついてくれるというので、思い切って申し込むことにした。

豆まきというと、高みからお堂の周りに集まった人々に向け、豆を撒くという図が
思い浮かぶと思うが、
総持寺の場合は大祖堂という巨大な本堂の中で節分追儺式という法要を行った後、
本堂の中を練り歩きながら本堂の中の人に豆を撒くというスタイルだ。

本堂には約2000人の人が入れるので、まず、豆を買って整理券を手に入れ
早いもの順に中に入るらしい。
あらかじめ申し込んでいるお伴の人は別ルートで入り
一番前のいい席を陣取ることが出来る。

総持寺の場合、入れなかった大勢の人は本堂の外にいるので、
実際の豆まきの様子は見ることが出来ない。

年男・年女の豆撒き隊はかみしもを着せてもらい、後から入場するが
貴重品とカメラなどをお伴の人に事前に手渡すことが出来る。

今日のメインゲストは三遊亭円楽と、石原軍団の館ひろし・神田正樹と若手の3人、
三屋裕子と若いバレーボール選手2人、大和田伸也夫妻など。
昨年一昨年にゲストだった白鵬は今年は成田山に行ったらしく、
今年のゲストが小粒の感は否めない。
やっぱりこういう時、お相撲さんが入ると入らないとでは違うかも・・・。

しかし、ゲストはともあれ、
一体何人お坊さんがいるんだというような凄い人数のお坊さん達が居並ぶ中、
銅鑼や太鼓の音が鳴り響き、一番位の高いお坊様がにぎにぎしく登場し
年男・年女のお祓いを意味する節分の大法要が執り行われ、
そちらの方がど迫力で、興味津々だった。

その後、ゲストと年男・年女には三宝に乗った大きな升が手渡され、
だるまの絵がついた小袋に入った豆が大量に配られ、
それを練り歩きながら「福は内~」の声と共に撒く。

お伴の友人達も相当な数、豆を手に入れていたので、最後にお弁当をいただく時
私にも山分けしてもらった。
その数、40~50袋はあるので、大量ゲットだ。

他にもお祓いをしてもらった名入りのお札と、和菓子と日本酒
小さなだるまに大きな升、食べきれないような立派なお弁当、
総持寺オリジナルせんべいと桜茶
空くじ無しであたったホテルのビュッフェ・ランチの券二人分など
なかなかてんこ盛りなお土産をいただいて帰ってきた。

友人二人もおもしろかったと喜んでくれていたので、
人生そうそう何度も経験できないいい体験をしたのではと思っている。

節分とは今日をもって古い年が終わり、明日から新たに午年が始まるということ
らしいから、私にとって年女としての1年は明日からになる。
明日は夕方、個展の打ち合わせに美術評論家の先生と合うことになっている。
「こいつぁ、春から縁起がいいわい~」
ということになりますように。

年の数だけ豆をいただき、今日は早く寝るとしよう。



2014年2月1日土曜日

降って湧いた個展の話

さっき、人生にはこういうことも起きるんだと思えるようなことが起きた。

夜9時過ぎ、家電が鳴って、「珍しいな、こんな時間に」と思ってとってみると
男の人の声。
瞬間的に私宛じゃないなと思ったが、相手はなんと高名な美術評論家の先生。

6年前、版17という所属する版画家グループがチェコでグループ展を開いた時
から、ご縁のある評論家の先生だ。

ご縁があるといっても版17の重鎮の作家とその評論家が繋がっているだけで
私などの下々は一方的にお顔を存じ上げているという関係だ。

そんな評論家が何の用で?といぶかしみながら話を聞けば、
「大変急な話ですが、3月22日から銀座の画廊で、私の企画という形で
きみのさんの個展をしませんか?」という申し出だった。

「えっ、本当ですか?」と平静を装いつつも、心は相当動揺していたので
声に驚きと喜びと戸惑いが混じっていたことだろう。

聞けば、予定されていた作家が急な病気で展覧会が出来なくなって、画廊の
オーナーに穴埋めに誰か紹介してと泣きつかれた評論家先生が、
大作のいい作品をたくさん持っている人ということで、
私に白羽の矢を立てたということだった。

まあ、そんなことでもなければ、私に高名な評論家による企画展の話がまわって
くることなどないだろうが、心筋梗塞で倒れた天海祐希の代役を務めた宮沢りえ
のこともあるし、海老蔵殴打事件の時の愛之助のこともある。

ピンチヒッターがそこですごく評価を高めるとか、その後、めきめきと頭角を
表すということもないわけじゃない。

来年の個展のために苦節4年も作品を溜めている私にとって、古い作品でも
全然かまわないし、案内状には評論家の挨拶文というか推薦文を載せるのが
個展の条件だなんて言われて、有頂天にならないわけがない。

あまりに迫った日時だけが気がかりだけれど、決まれば決まったで、
猛烈に頑張ろうという気持ちが湧いてきているのも事実。

来年用の個展に新作はとっておくとして、この機会に、今までの作品を棚卸しし
もう一度スポットライトを当ててあげられるのはとても幸せなことだ。

人生にはきっと、
何回かはこんな風に思いがけないチャンスが巡ってくるものなのだろう。
チャンスの前髪(チャンスの神様は後ろには髪がないそうだから)はしっかり
つかんで、『プレ還暦個展』にむけて、いざ発進!!

本厄、どこ吹く風、年女、面舵いっぱ~い!!