2017年2月28日火曜日

芸術は爆発だ!本摺りは戦いだ!

 
 
 
 
 
一昨日の日曜日から、月曜、火曜の午前と2日半も時間をかけ、
久々の本摺りを敢行した。
 
今の自分の体力を考え、以前ならこのサイズを6枚、
夜明けと共に起きて、夕方まで、計12時間の突貫工事を厭わなかったものだが、
ちょっと今回はその方式は無理だと判断。
 
大事を取って、二日半の日程で、ゆっくりしっかり丁寧に事を進めることにした。
 
終わってみれば、それはとても正解だったと思う。
 
計7枚の作品をノーミスで仕上げることが出来た。
 
「戦い済んで日は暮れて」という言葉があるが、
「戦いは日が暮れ、朝が来て、また日が暮れ、朝になった」が、
「我が軍の勝利である」という結果に、
今、私の胸の内に進軍ラッパならぬ、勝利の雄叫びが聞こえている。
 
ことほど左様に、木版画の摺りの作業は想像以上に体力勝負。
技と忍耐と集中力の持続を要求される。
 
テレビの『和風総本家』に出てくる職人さんと同じで、
ひとり黙々と刀を打つ刀鍛冶とか、
ひとり黙々と何度も何度も漆を塗る漆職人とかの気持ちはよくわかる。
 
私もひとり黙々と作業にいそしみ、
途中、何度かダンナのためにご飯を作るも、
ひと言も発せず、本摺りのことだけを考え、集中していた。
 
たぶん、人を寄せ付けないその空気に、
ダンナは「このご飯食べてていいのかな」と窮屈な思いをしていたと思う。
それが狙いなので、感じていただければ幸いなのであるが・・・。
 
さて、肝心の新作は、珍しく和風丸出しの作品になった。
 
先週、何回か試し摺りを取る内に自然に呼び込んだ配色なので、
きっと現在の自分の気持ちに添うものなんだと思う。
 
日曜日の朝、本摺り用の和紙をカットし、湿して、5時間おいた。
その間に絵の具を調合し、本摺りへのイメージを高めていく。
最後の版の微調整もこの間に行い、摺りの際に邪魔しそうなものは取り除いた。
 
そうして、午後2時、紙の湿りが均一になったのを確かめて、
背景の葉っぱから摺りスタート。
 
夕食の準備と食事やお風呂を挟んで、
夜12時までに背景色の大きなパートの1版目を摺り終わることで、
心理的にはだいぶ楽になった。
 
以前なら、ここで1人暮らしの安気さで、深夜に作業を持ち込んでいたが、
ダンナが帰国してからは、
朝には何食わぬ顔で朝食の準備をしなければならない。
 
そのあたりが実にかったるいが、まあ、仕方あるまい。
 
で、月曜の朝は、7時半に起き、朝食の準備をし、
「べっぴんさん」を観ながらダンナとご飯を食べて、いよいよ2日目の摺り作業開始。
 
一晩寝たことで、昨日の作業はなかったことに出来るこの幸せ。
また新たな気持ちで、続きの作業に取りかかれる。
 
いつもは6枚摺るサイズなのに、ちょっとした勘違いで7枚湿してしまったせいで、
作業はその分長引いたが、夕方5時過ぎには大方の摺りは終了。
後は繊細なパートの摺りとちょっとしたリタッチと水張りによる乾燥だけだ。
 
「だけだ」とはいえ、神経を使う部分なので、ここはひとつ慎重に。
勇気ある終了を自分に命じ、2日目の作業をやめにした。
 
こうして、火曜日に残りの作業を終え、無事7枚の作品が出来上がった。
 
かなり熱い戦いだったと自分では思っているのだが、
出来た作品はいつもの情熱的で派手な感じに比べ、落ちついた和風の作品。
 
タイトルがなかなか決まらずいたのだが、ふと、思いついた。
この作品は『ふたり静か』にしようと思う。
 
あらかじめ断っておくが、ダンナとふたりという意味ではない。
 こんな暮らしに憧れているというだけか・・・。
 
とにかく『ふたり静か』。
なかなか気に入っているのだが、いかがだろう。
 

2017年2月25日土曜日

『LA LA LAND』でストレスコーピング

 
2月もあと少しになってしまった。
 
2月中に仕上げようと頑張って彫り進めてきた2作分の版は
予定より少し早く出上がった。
 
更に今月は体調がまだ万全ではないというのに、新しいクライアントさんが見えたり、
ちょうど1年前に来て、2回セッションをして立ち消えになっていた方が、
急に思い出してまた、連絡をくださったりで、
心理カウンセリングのご要望が多い月だった。
 
それはとても嬉しいことだし、もちろん、やりがいも感じている仕事なのだが、
誰かの悩み事に四つに組んで取り組むと、なかなか消耗するものである。
 
そんな忙しい日常の中に、2月最後の仕事として、版画の本摺りを入れるため、
ここはひとつ自分にストレスコーピングを施す必要があると思い、
今、話題の映画を観に行くことにした。
 
ストレスコーピングとは溜まったストレスやささくれだった心を癒すため、
自ら選んで、自分のテンションが上がるような楽しいことをしたり、
美味しいものを食べたりして、ストレス値を下げることを言う。
 
私のコーピングリストの上位に「好きな映画を観て、幸せな気分になる」と
いう項目がある。
 
今日は週末に封切られたばかりの『LA LA LAND』を観ながら、
チョコレートバーをかじり、コーヒーを飲むという3点セットでいこうと思う。
 
『LA LA LAND』はアカデミー賞史上最多14ノミネートされたせいか、
情報番組でも何度か取りあげられ、興味をもっていた。
 
映画のキャッチコピーには「観るものすべてが恋に落ちる、極上の
ミュージカル・エンターテイメント」とある。
 
どことかの高速道路をある時間、一斉封鎖して、撮影されたという
渋滞の車から降りてきた人々が歌い踊るシーンがあまりにも有名だが、
それは早くも冒頭に出てくる。
 
印象的なのは出演者が鮮やかな赤や黄色、グリーンなど、原色の洋服を着て、
街の風景の中に点在し、躍動していることだ。
 
主役のエマ・ストーン演じるミアはもちろん、他の女性陣も全員原色のドレス。
ミアは真っ黄色のドレスに始まり、真っ赤、真みどり、真っ青など、
いずれもデコルテがガバッと開いた綺麗なシルエットのドレスを着ている。
 
色には色彩心理といって色の発信する感情があるので、
それを意図しているのか、単に色鮮やかなものを女優陣に着せて、
ビジュアル的な視覚効果を創りたかったのか分からないが、
とにかく原色が画面いっぱい動き回っているのが目に焼き付いた。
 
ミアは女優になりたい夢のために何度失敗していもオーディションを受け続ける。
夢のためには折れた心を立て直し、何度でも挑戦する女性だ。
 
一方、主演男優のライアン・ゴズリングはジャズピアニストとして
華麗なピアノ演奏と歌唱を聴かせ、
その甘いマスクとともに観るものを酔わせてくれる。
 
こちらもジャズを聴かせる店をやりたいという夢に向かって生きているが、
ミアとは違って、生きるためにはお金のために気に染まない仕事もやるタイプ。
 
そんなふたりが恋に落ち、やがて年月を経て・・・。
 
どんな結末かは劇場で確かめて欲しいのでここまでにしておくが、
ふたりの歌も踊りも演奏も、さわやかだし、センスがよく、
心地よいエンターテイメントとしていい感じだ。
 
もっとミュージカルらしい構成や演出かと思ってたので、
あれっという感じは否めないが、読後感というか映画鑑賞後の印象は軽やかだ。
 
アカデミー賞というには、物語の深掘りがなされていない気がしないでもないが、
さて、あと数日でどんな結果が出るのか楽しみだ。
 
私のストレスコーピングとしての効果はどうかというと、
1日に2件のカウンセリングの後、
ひとりになる時間が持てたし、美しい映像と心地よい音楽、
エマ・ストーンのスレンダーボディを引き立てる原色のドレスと
ライアン・ゴズリングのジャジーなピアノと甘いマスクと長い足で、
眼福効果大だったと言えよう。
 
これで英気を養えたので、
明日あさってと新作の本摺りに取りかかるつもり。
 
さあ、しまっていこう!

2017年2月11日土曜日

新作器焼きあがり

 
 
 
 
陶芸工房に行ったら、昨年11月12月に創っていた器がぞろりと焼き上がっていた。
 
年をまたいでしまった上に、1月はほとんど陶芸工房にも行けなかったし、
先週も風邪で今日に変更してもらったので、
間延びした気分は否めないが、
それでも、新作が焼き上がってくると嬉しいものだ。
 
きっと大量に出来上がってくると釉薬をかけた時から分かっていたので、
車を出し、大きな布袋も持参したが、
意外や出来上がった器はさほど重くなく、
いずれも使い勝手がよさそうな感じだ。
 
陶芸を始めた頃は、器ひとつひとつの重さなどは大して気にもせず、
どんなデザインにするのかとか、
せっかく創るんだから、どこにも売っていないようなものをと気負って、
結局、分厚くて重たい器ばかりがゴロゴロ出来てしまった。
 
しかし、いくら陶芸家を気取ってみても、いざという時のパーティ用大皿ばかりじゃ、
毎日の生活に活用出来ない。
 
さすがに5年経って、ちょっとは大人になったというか、
地に足がついたというか、
使いやすそうな形で、重さもほどほど、セットものになっているなど、
創るアイテムに変化が生じてきた。
 
今回は白い角皿と取り分け用小鉢2つ。
グレーの地に白化粧して、透明釉をかけた取り皿2枚と小鉢。
12角形のサラダボールと大皿、取り分け用のボール2つ。
ドレッシングボートと薬味皿というラインナップ。
 
たとえ同じ食卓に全部出ていてもケンカしない白っぽい器ばかり。
 
私の好みも無難になったというか、枯れてきたというか・・・。
 
とはいえ、今月来月の課題は貯金箱なので、
そろそろ貯金箱のデザインをどうするか考えて、創り始めなければ・・・。
 
実は貯金箱は陶芸で作る際に、特別な技術がいる難しい課題。
 
中を空洞にしなければならず、フタを付けたり、花瓶みたいな形ではなく、
全部土で覆われているのに、無事、焼き上げるために、
コインを入れる口をどの位の大きさでどこに開けるのか、
焼成の時の空気の対流や、抜け道などの計算が必要なのだ。
 
今日も会員の何人かがそれぞれ貯金箱に挑戦していたが、
経験者曰く、1回でうまく焼き上がることは珍しく、トラブルが多いお題らしい。
 
私自身は先に次のお題の抹茶椀を創りながら、
他の人の貯金箱を眺め、自作の案に思いを巡らせていた。
 
体調がほぼほぼ回復したので、長時間の作業も耐えられるようになってきた。
やってみると版画は勿論のこと、陶芸も集中力と体力を消耗する。
だから、1月は土錬りさえ、苦痛だった。
 
今月は、こうした作業をやりたいだけできる幸せを噛みしめながら、
来週は抹茶椀の削り3つ分と、貯金箱の作陶に取り組むつもりだ。
 
 

2017年2月8日水曜日

新しいお茶のお稽古場

 
 
今まで丸8年通っていたお茶の先生のお稽古場は、
先生がご高齢を理由に昨年末に閉じられたので、
一門のお弟子達は、この1月からは新しいお稽古場へと移ることになった。
 
大方のお弟子さんは、今までの先生の代教を努めていらした先生に付いて
関内にある公共施設のお稽古場に通うことになった。
 
私ともうひとりSさんだけが、自宅茶室でお稽古をなさっている先生を希望して、
北鎌倉にあるY先生のお宅を訪ねることになっていた。
 
先月の半ばから本当は通い出していて、今日で3回目だったのだが、
何分、病んだ体にむち打ってのお稽古始めだったせいで、
なかなかブログにアップすることが出来ずにいた。
 
私の30数年のお茶のお稽古通いの内、
今回のY先生で、4人目の先生に師事することとなったのだが、
今までのどの方とも違うタイプの先生だ。
 
先生は優しく穏やかなれども、かなり細かいご指摘とご指導をなさる方で、
お茶にかけた人生という点で、その熱意は今までのどなたにも負けないだろう。
 
お茶室の造りも、お稽古の進め方も、「家元に習って」という根幹の指針をお持ちで、
江戸間よりだいぶ大きな京間の八畳間に立派な床の間、
広々した玄関、つくばい、水屋など、いずれをとっても北鎌倉にふさわしい、
数寄屋造りの日本家屋がその舞台である。
 
先生はまだ70代はじめ、お茶の先生としてはまだまだお若いので、
研究熱心でもあり、真面目にお稽古したいというご性格のようで、
お稽古場の空気は凛として、あまり無駄口は叩かずに、
話す話題もお茶に関すること中心。
 
同じ時間帯にお稽古するおふたりのお弟子さんの人となりも少し分かってきて、
新しいおつきあいの始まりに嬉しい気持ちもありつつ、
まだ、4時間の正座と新しい場の緊張感で、終わるとホッと一息ついてしまう。
 
今日は 
否応なくもっと熱心にお茶に取り組むことになった自分を叱咤激励するため、
新しいお稽古場で覚えたことや、
毎月のお道具をメモするために、新しいノートを1冊買った。
 
これに月3回、
伺う度に仕入れた新知識や季節のしつらえが書き留められ、
1年が巡る頃には、
この1月2月のお稽古始めの頃のことが懐かしく思い出されるだろう。
 
今はまだ、左脇下が少し痛んで、帯は苦しくて長時間持ちそうにないが、
体調が万全になった頃、
北鎌倉にはキモノで通う日も増えてくるだろう。
 
先生のお宅の梅の木を見上げれば、紅梅の花がぷっくら満開に咲いている。
 
新しいご縁はこうして梅の花の季節に始まった。
 きっと梅の花は私にとって、特別な意味を持つ花になるだろう。
 
 
 

2017年2月6日月曜日

復活宣言!

 
今日は2月6日。
2017年も2月に入って、節分も過ぎ、立春も過ぎた。
なのに、私の1月のブログは最初だけ料理ブログで、
あとは全編、病気ブログだった。
 
帯状疱疹という思いもかけぬ病に襲われ、峠はとっくに超えたと思っていたのに、
いつまで経っても左脇から左乳首にかけてのピリピリ痛みが引かず、
やる気も元気も全く無しの状態が続いている。
 
これは自分に「喝!」を入れなくちゃと思い、
2月1日のお茶のお稽古の帰り道、友人に
「いい加減にしろよ。もう1月31日でおしまいだからねって、自分に言ったの」と
病気の終息宣言をしてみた。
 
こうして自己暗示をかけることで追い込もうという作戦だったのだが、
次の日、関東地方にも花粉が飛散し始めたというニュースに、体が反応。
 
午前中は大丈夫だったのに、午後の心理カウンセリングの最中から、
クライアントさんの前なのに、鼻水がツーツーと流れおちてくる。
 
脇と乳首と背中がまだ痛いといっているのに、更に鼻水が・・・。
 
1月、体の痛みは表に出ないので、誰にも気取られることなく、
無事、カウンセリングはこなしてきたのに、
こんなに鼻水たれべぇでは、カウンセラーも形無しだ。
 
しかし、鼻水たれべぇはかりそめの姿だと気づいたのはその晩だった。
 
どうも鼻水ツーツーのはずが、のども何だかイガイガする。
「お前、風邪じゃないの?」と不躾なものの言い様で、ダンナが本質をついてくる。
 
夜寝る前に花粉症の薬アレジオンを飲んで寝たが、夜中に様子が違ってきた。
朝、起きた時には、もはや疑いなしの「風邪っぴき患者」になっていた。
 
弱り目に祟り目とはこういうことをいう。
 
国語の文例の見本にして欲しいほどだ。
 
金曜日、たまたまランチの約束をしていた友人が
頭痛が酷いからとキャンセルしてくれたので、
ダンナの持っていた風邪薬を飲んで、これ幸いと一日中寝ていることにした。
 
鼻の感じがどんどん風邪の進行を物語っていて、
週末の三日間、よくそんなに寝ていられるねというほど、布団の中にいたら、
あやうく『うつ』になるんじゃないかと思うほど、気が滅入ってしまった。
 
しかし、風邪自体はそれで完全に治ったようで、
帯状疱疹ほど手強い相手ではなかった。
 
その間にテレビでは成田山新勝寺で新横綱の稀勢の里が
ど派手なピンクのかみしもを着けて、豆まきをしていた。
「三日天下になるなよ」と心で念じつつ、晴れやかなその顔を観ていた。
 
外は3月並みの温かさだとか、桜の咲く頃の陽気だとかいっても、
毎日、布団の中にもぐり込んでいたのでは分からない。
 
こうやって人は世間様から遠のいていくうちに、徐々に心を病んでいくんだなと、
今更ながらに分かった気がした。
 
「心理カウンセラーでもうつになる時もあるんです」なんて、シャレにならない。
『心理カウンセラーのうつ体験ブログ』、いやいやいや、違うでしょ。
 
見回せば、家の中には鬼がうじゃうじゃいる幻影が・・・。
 
ここらで成敗せねば、
そう思い、先程、私はやおら台所でフライパンを取りあげた。
 
大量のちりめんじゃこをフライパンでよく煎り、
そこに三袋分の豆まき用の豆を全部投入。
お正月のたつくりの時のようなハチミツ入り甘タレを作って、一気にからめた。
 
ジュワッという音と共に、香ばしくて甘い香りが立ちのぼる。
 
この時期にしか作れない『我が家特製の豆じゃこ』の完成である。
 
豆まきは家の後片付けが大変なので、もはややらなくなって久しいが、
この豆じゃこはダンナの好物でもあり、この節分ならではの一品だ。
 
これを年の数といわず、たっぷり食べて、
本当にこれで『鬼は外!福は内!』と願いたいものである。
 
これでブログにも『復活宣言』をしたことで、
自分を奮い立たせる作戦、
どうか効を奏しますように!
 
キミちゃんのいたいのいたいの、とんでいけ~!!