2017年10月17日火曜日

恐るべし運慶

 
 
 
毎日、寒い。
そして、雨。
 
しかし、こんな時だからこそチャンスと思って、
上野の東京国立博物館・平成舘で行われている"運慶展"に行ってきた。
 
入館状況をネットで検索すると、朝イチほどチケット売場も会場も
待ち時間が長いことが分かったので、
先ずは、銀座に出て、友人の個展を2箇所回り、
ランチを済ませて、山手線に乗った。
 
朝からの雨が、あいにく午後2時には止んでしまったので、
ちょっと嫌な予感がしたが、
何とかチケット売場も会場入口も並ぶことはなく、入館することは出来た。
 
イヤホンガイドを借り、
入口から1歩入ると、やっぱりというか、なぜ?というか、
早くも人だかりで、寒いどころか蒸し暑さでスカーフをもぎ取った。
 
音声ガイドがあるので、文字で埋まった看板はスルーし、
いきなり、運慶のデビュー作へ。
奈良の円成寺にある国宝・大日如来座像である。
 
一昨日のテレビ・日曜美術館の運慶展特集でやっていたが、
確かにそれまでの仏像のスタイル=静かで動きがなく、端正な顔や体からすれば、
肉付きもよく、組んだ手の位置が少し高かったり、
姿勢がやや反り気味で堂々としていて、風格がある。
 
このぐらいの大きさの仏像は通常3ヶ月ぐらいで完成させるところを、
運慶は11ヶ月の歳月をかけ、しかも、
台座の裏に湛慶の実弟子運慶とサインまでしているから、自信作に違いない。
 
しかも、それがデビュー作にして、国宝だ。
 
今回、運慶の作品とされる31体の仏像の内、22体が勢揃いしているので、
運慶とは何者かを知るには見逃せない展覧会と言えるだろう。
 
今日も来場者は多かったが、たぶん、会期が後ろになればなるほど、
もっと増えるだろうから、これでもいいときに行ったということになるだろう。
 
混んではいるが、仏像自体が大きいし、立体だから絵画のように壁伝いに見なくても、
点在していて360度ぐるりと見ることが出来るので、その点もだいじょうぶ。
 
会場の背景が黒っぽく、仏像がライトアップされて、浮かび上がる展示は、
お寺の堂内とはまた、違う美しさだ。
 
私が個人的に気にいったのは、
不動明王をお守りする八大童子立像の内の"制多伽童子"
 
赤い顔と体で、実に凛々しく、示唆に富んだ表情をして、かっこいい。
5つの瘤みたいに結んだヘスタイルもいけてるし、衣の動きや装飾も精緻で美しい。
水晶の玉眼がぎらりと光って、きりっと上がった目尻といい、
ピッとしまった口元といい、惚れ惚れする。
こちらも国宝だ。
 
それから、通常、四天王に踏みつけにされているあまのじゃくが立ち上がって、
頭に鐘楼を載せている龍燈鬼立像もいい。
 
相撲取りをモデルにして、創ったといわれる筋肉モリモリの体つきをしていて、
眉毛に銅版、目は玉眼、体に巻き付けた蛇には本物の皮を一部使ったとかで、
実に鎌倉時代1215年の作とは思えない斬新さだ。
これも国宝。
 
そして、最後の部屋にずらり並んだ12体。
「十二神将立像」
 
今はどこかのお寺ではなく、ふたつの美術館に5体と7体に別れて展示され、
今回のように12体が一堂に揃ったのは40数年ぶりとか。
 
運慶の手になるものではないが、
運慶の躍動感ある表現、豊かな表情、ユーモアのセンスなどを、
一派が遺憾なく受け継いでいる。
 
12体は十二支でもあり、それぞれ子神、寅神、辰神、申神・・・だ。
そして、子神は頭に鼠を、寅神は虎を、辰神はイノシシをつけている。
 
特にとぐろを巻いた蛇を巻きぐそのようにちょこんと頭に載せている巳神は
そのヘアスタイルが斬新で、真っ赤に染めた髪をざん切りに切って振り乱し、
大きな口を開け、何か叫んでいる。顔は緑色。
 
未神の頭にはそれと分かるように羊はのっていないが、
一人だけ、ヘアスタイルがもこもこしていて、カールしていて羊みたい。
顔は白塗りで右手で剣を振り上げているが、幾分、他より穏やかな印象だ。
 
自分の干支の神様がどの子か観に行くというのも面白いのではないだろうか。
 
仏像はいろいろな鑑賞の仕方があると思うが、
運慶の作品は想像以上に躍動感があるし、
ミケランジェロにも匹敵するような彫刻家として、
あらためて「凄い!」ということを知るだろう。
 
会期は11月26日までなので、まだまだあるが、
もし、興味があるなら、今のうち、
寒い日や雨の日の午後遅いあたりが狙い目だと思うので、
ぜひ足を運ばれることをオススメする。

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