9月1日(月)から『文学と版画展』は始まった。
初日はカウンセリングと歯医者が入っていたので
私は銀座には行かなかった。
毎年、この時期に行われるグループ展だが、
ここ数年、
9月に入っているのに暑さが厳しい。
とりわけ、今年は連日37℃予想で猛暑が続く。
これでは
作家本人が行くのをためらうほどなので
お客様をお誘いするのも気が引ける。
今日はそんな中でも来てくださるというAさんと
ギャラリーで11時過ぎに待ち合わせ、
展覧会を観ていただくことになった。
先週の夜、セッティングのために出向いたので
会場の雰囲気は分かっていたが、
あらためて展覧会場として眺めてみた。
この展覧会はやはり壁に小棚が作られており
額縁に入った作品と本の装丁があるという
3次元的見せ方がユニークで面白い。
作品の点数が少なめなので、
友人知人に声をかけても
1点しか作品がないという点で
声をかけるのにためらいがないわけではないが、
面白い展示という観点で見ていただけると嬉しい。
Aさんは『利休にたずねよ』の本を読んでいるので
他の全く知らない本の装丁より
親しみをもって、私の作品と本を見られるという。
確かに、無理やり理解しようとする現代美術より
分かりやすく「色がきれい」とか「細かい」とか
小難しく考えなくても理解できる作品の方が
観ていて楽しいだろう。
ひとあたり会場の作品を観て
本を手に記念写真を撮り
私達は会場を後にして
カンカン照りの銀座の街を京橋方向に歩いていき
並木通りにある
地下1階のレストランでランチを採った。
ここは夜はダーツバーになる。
昼間に場所を空けていても勿体ないからと
始めたランチタイム。
ひょんなことからひとりで入って以来、
面白い夜めいた空間で供される
おばんざいみたいなランチを
私はけっこう気に入っている。
ランチの後には、
来年9月に新装オープンになる個展会場の
工事現場と仮の事務所を訪ねてみた。
ちょうど丸1年先に銀座5丁目のど真ん中で
新たにスタートを切る「養清堂画廊」の
こけら落としに個展を開く予定なのだ。
こけら落としは名誉なことだけれど、
なにしろ9月初めでこの暑さ。
それこそお客様に案内状をお送りしても
銀座まで足を運んでいただけるのだろうか。
そんな心配もあり、
現在の建設の進捗状況も知りたくて
プラザ7階の仮の事務所を覗いてみた。
一瞬、鍵がかかっていて不在かと思ったが、
中から男性が出てきて、社長さんもいるという。
久しぶりに会う女性社長のSさん。
S社長は養清堂の二代目さんだ。
まだ50代の若さで自社ビルを建て替え
ウン億かけて7階建てのビルを建設、
1~4階は宝飾店、5~7階が画廊になる。
聴けば、お隣のビルとのもめごとがあったり、
7月に名物女将だったお母様がなくなったりと
ご苦労も多い様子だった。
ようやく出来てきた画廊のイメージ図と
平面図を見せてもらい、
お話しするうちにやはりどんなに暑かろうとも
来年の9月1日から個展を開くことに決まった。
平面図からは、以前の会場に比べ
細長い画廊になることが判り、
少しがっかりしたのは事実だが、
日付が決まったことで
新たな決意も生まれ、
あと1年、健康に留意して走り抜くことを
自分に誓った。
もう今後、個展は開けないかもしれない。
これが銀座のど真ん中で開く最後の個展に
なってもいいくらいの気持ちで取り組むつもりだ。
そんな高揚感を抱いて
帰りの京急電車の窓に差し込む
オレンジ色の夕日を眺めた。
脳外の手術を経験したせいか、
人生は偶然と必然とが綾なしているように
思えるけど
いい加減に過ぎていくままに任せては
もったいないとつくづく思う今日この頃。
1日1日を丁寧に生きなければ!!