2025年9月2日火曜日

「文学と版画展」開催中

 










9月1日(月)から『文学と版画展』は始まった。
初日はカウンセリングと歯医者が入っていたので
私は銀座には行かなかった。

毎年、この時期に行われるグループ展だが、
ここ数年、
9月に入っているのに暑さが厳しい。

とりわけ、今年は連日37℃予想で猛暑が続く。
これでは
作家本人が行くのをためらうほどなので
お客様をお誘いするのも気が引ける。

今日はそんな中でも来てくださるというAさんと
ギャラリーで11時過ぎに待ち合わせ、
展覧会を観ていただくことになった。

先週の夜、セッティングのために出向いたので
会場の雰囲気は分かっていたが、
あらためて展覧会場として眺めてみた。

この展覧会はやはり壁に小棚が作られており
額縁に入った作品と本の装丁があるという
3次元的見せ方がユニークで面白い。

作品の点数が少なめなので、
友人知人に声をかけても
1点しか作品がないという点で
声をかけるのにためらいがないわけではないが、
面白い展示という観点で見ていただけると嬉しい。

Aさんは『利休にたずねよ』の本を読んでいるので
他の全く知らない本の装丁より
親しみをもって、私の作品と本を見られるという。

確かに、無理やり理解しようとする現代美術より
分かりやすく「色がきれい」とか「細かい」とか
小難しく考えなくても理解できる作品の方が
観ていて楽しいだろう。

ひとあたり会場の作品を観て
本を手に記念写真を撮り
私達は会場を後にして
カンカン照りの銀座の街を京橋方向に歩いていき
並木通りにある
地下1階のレストランでランチを採った。

ここは夜はダーツバーになる。
昼間に場所を空けていても勿体ないからと
始めたランチタイム。

ひょんなことからひとりで入って以来、
面白い夜めいた空間で供される
おばんざいみたいなランチを
私はけっこう気に入っている。

ランチの後には、
来年9月に新装オープンになる個展会場の
工事現場と仮の事務所を訪ねてみた。

ちょうど丸1年先に銀座5丁目のど真ん中で
新たにスタートを切る「養清堂画廊」の
こけら落としに個展を開く予定なのだ。

こけら落としは名誉なことだけれど、
なにしろ9月初めでこの暑さ。
それこそお客様に案内状をお送りしても
銀座まで足を運んでいただけるのだろうか。

そんな心配もあり、
現在の建設の進捗状況も知りたくて
プラザ7階の仮の事務所を覗いてみた。

一瞬、鍵がかかっていて不在かと思ったが、
中から男性が出てきて、社長さんもいるという。
久しぶりに会う女性社長のSさん。

S社長は養清堂の二代目さんだ。
まだ50代の若さで自社ビルを建て替え
ウン億かけて7階建てのビルを建設、
1~4階は宝飾店、5~7階が画廊になる。

聴けば、お隣のビルとのもめごとがあったり、
7月に名物女将だったお母様がなくなったりと
ご苦労も多い様子だった。

ようやく出来てきた画廊のイメージ図と
平面図を見せてもらい、
お話しするうちにやはりどんなに暑かろうとも
来年の9月1日から個展を開くことに決まった。

平面図からは、以前の会場に比べ
細長い画廊になることが判り、
少しがっかりしたのは事実だが、
日付が決まったことで
新たな決意も生まれ、
あと1年、健康に留意して走り抜くことを
自分に誓った。

もう今後、個展は開けないかもしれない。
これが銀座のど真ん中で開く最後の個展に
なってもいいくらいの気持ちで取り組むつもりだ。

そんな高揚感を抱いて
帰りの京急電車の窓に差し込む
オレンジ色の夕日を眺めた。

脳外の手術を経験したせいか、
人生は偶然と必然とが綾なしているように
思えるけど
いい加減に過ぎていくままに任せては
もったいないとつくづく思う今日この頃。

1日1日を丁寧に生きなければ!!
















2025年9月1日月曜日

猛暑の中『文学と版画展』



















9月に入ったけど、猛暑に変わりはない。
一体、地球はどういうことになっているのか。

こう暑くては美術鑑賞どころではないのだが、
かねてより毎年この時期に開催されている
第11回 『文学と版画展』
~文学へのオマージュ~
が、9月1日より銀座6丁目のギャルリー志門で
始まった。

私はカウンセリングが3本と歯科の治療があり
初日には行かれなかった。
この写真は飾りつけを行った30日夕方のものだ。

私としては、今回で10回目の参加になる。
選んだ本は「利休にたずねよ」だ。

この本は千利休がまだ若い頃から
秀吉の逆鱗に触れ自害を命ぜられて命を絶つまでが
書かれている長編小説だ。

中に
若い頃の千利休が、韓国から身売りしてきた女性を
救い出すシーンが出てくる。
むくげの花はこの女性が大事にしていた花だ。
小説全体を通して象徴的に扱われるのが
韓国の国の花・むくげである。

現在、日本の茶道の世界では、
夏はむくげ、冬は椿と相場が決まっているのだが、
その起源をたどれば、
むくげは利休が生涯秘めた思いを抱いていた
この韓国人女性の国の花に行きつく。

自分が長いこと茶道をしていることもあり、
今回の『利休にたずねよ』の表紙には
むくげの花をモチーフにしたいと考えたのは
2年前だが、
むくげの咲く時期は限られている。

むくげの花は8月に盛りを迎えるので、
昨年の8月、あちこちで取材し、デッサンした。
ここに使った2点の木版作品は昨年の秋から
2025年の冬に制作されたものだ。

もし、今年のむくげが咲くのを待っていたら、
6月下旬に脳の手術があったわけで
絶体絶命、今年の『文学と版画展』は
不参加になっていただろう。

元々、追い込まれて制作するタイプではないが
早め早めに創っておいて正解であった。

つまり、『利休にたずねよ』の装丁としては
中くらいと小品との2点の作品を
表表紙と裏表紙に使おうと決め、
勝手に2点出品する段取りをしていたというわけだ。

本当は版画作品はひとり1点なので、
ちょっと図々しいというか、何というか…。
10回目ともなると、こういうわがままも許される。
(ということにしておこう)

本の装丁に関しては
ラフデザインを起こし、細かい色指定などし、
タイトルの書は自分で書くというところまでは
作家である私がした。

そこから先は7月下旬にギャラリーまで出向き、
直接、ギャラリーオーナーのFさんに
「こんな風にしたい」とお願いした。

Fさんはブックデザイナーでも
グラフィックデザイナーでもないのだが、
こういうPCの『イラストレーター』を使った作業が
得意なので
最後の印刷の一歩手前のところまでの作業を
やってくださっている。

本の装丁もすべて手掛ける版画家たちもいる中
私は途中から、おんぶに抱っこ
Fさんの「私、こういうこと好きなのよ」という
言葉に甘えているというわけだ。

今回の装丁もまあまあイメージ通りに出来、
分厚い本にかけると
ますますオリジナルの懸け紙よりいいのではと
内心、自画自賛。

この企画展のいいところは
自作の版画が形を変え本の装丁になることで
とても新鮮に感じられる点にある。

そういう意味では
ある部分から自らの手を離れた方が
「そうなったか!」という驚きは大きい。

「微妙にニュアンスのある紙を使いたい」という
私からのリクエストに対し、
昨今の事情で、欲しい紙が廃番になっていて
思うに任せなかったFさんは
イマイチ、納得がいかない様子だけど、
私は「これはこれで」と呑気なものだ。

どこまで細部にこだわるのか、
イメージしたものにどこまでも迫るのか、
アーティストにもいろいろなタイプがいるが、
とりあえず今年の『文学と版画展』は開幕した。

このクソ暑い日々の中、
ご高覧賜りますれば、幸いにございまする。