9月に入ったけど、猛暑に変わりはない。
一体、地球はどういうことになっているのか。
こう暑くては美術鑑賞どころではないのだが、
かねてより毎年この時期に開催されている
第11回 『文学と版画展』
~文学へのオマージュ~
が、9月1日より銀座6丁目のギャルリー志門で
始まった。
私はカウンセリングが3本と歯科の治療があり
初日には行かれなかった。
この写真は飾りつけを行った30日夕方のものだ。
私としては、今回で10回目の参加になる。
選んだ本は「利休にたずねよ」だ。
この本は千利休がまだ若い頃から
秀吉の逆鱗に触れ自害を命ぜられて命を絶つまでが
書かれている長編小説だ。
中に
若い頃の千利休が、韓国から身売りしてきた女性を
救い出すシーンが出てくる。
むくげの花はこの女性が大事にしていた花だ。
小説全体を通して象徴的に扱われるのが
韓国の国の花・むくげである。
現在、日本の茶道の世界では、
夏はむくげ、冬は椿と相場が決まっているのだが、
その起源をたどれば、
むくげは利休が生涯秘めた思いを抱いていた
この韓国人女性の国の花に行きつく。
自分が長いこと茶道をしていることもあり、
今回の『利休にたずねよ』の表紙には
むくげの花をモチーフにしたいと考えたのは
2年前だが、
むくげの咲く時期は限られている。
むくげの花は8月に盛りを迎えるので、
昨年の8月、あちこちで取材し、デッサンした。
ここに使った2点の木版作品は昨年の秋から
2025年の冬に制作されたものだ。
もし、今年のむくげが咲くのを待っていたら、
6月下旬に脳の手術があったわけで
絶体絶命、今年の『文学と版画展』は
不参加になっていただろう。
元々、追い込まれて制作するタイプではないが
早め早めに創っておいて正解であった。
つまり、『利休にたずねよ』の装丁としては
中くらいと小品との2点の作品を
表表紙と裏表紙に使おうと決め、
勝手に2点出品する段取りをしていたというわけだ。
本当は版画作品はひとり1点なので、
ちょっと図々しいというか、何というか…。
10回目ともなると、こういうわがままも許される。
(ということにしておこう)
本の装丁に関しては
ラフデザインを起こし、細かい色指定などし、
タイトルの書は自分で書くというところまでは
作家である私がした。
そこから先は7月下旬にギャラリーまで出向き、
直接、ギャラリーオーナーのFさんに
「こんな風にしたい」とお願いした。
Fさんはブックデザイナーでも
グラフィックデザイナーでもないのだが、
こういうPCの『イラストレーター』を使った作業が
得意なので
最後の印刷の一歩手前のところまでの作業を
やってくださっている。
本の装丁もすべて手掛ける版画家たちもいる中
私は途中から、おんぶに抱っこ
Fさんの「私、こういうこと好きなのよ」という
言葉に甘えているというわけだ。
今回の装丁もまあまあイメージ通りに出来、
分厚い本にかけると
ますますオリジナルの懸け紙よりいいのではと
内心、自画自賛。
この企画展のいいところは
自作の版画が形を変え本の装丁になることで
とても新鮮に感じられる点にある。
そういう意味では
ある部分から自らの手を離れた方が
「そうなったか!」という驚きは大きい。
「微妙にニュアンスのある紙を使いたい」という
私からのリクエストに対し、
昨今の事情で、欲しい紙が廃番になっていて
思うに任せなかったFさんは
イマイチ、納得がいかない様子だけど、
私は「これはこれで」と呑気なものだ。
どこまで細部にこだわるのか、
イメージしたものにどこまでも迫るのか、
アーティストにもいろいろなタイプがいるが、
とりあえず今年の『文学と版画展』は開幕した。
このクソ暑い日々の中、
ご高覧賜りますれば、幸いにございまする。
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