2026年4月6日月曜日

茶会のお弁当と差し入れの和菓子

 










4月5日、都内某所の邸宅で茶会が催された。
その邸宅はかつて数寄者と呼ばれる人が
住んでいたのだが
今は住宅トラストの管理下にあるので、
内部が特定できるような画像を
載せることが出来ない。

今回はそこでの5回目の茶会になるが、
私は立礼席の方のお手伝い役として
参加した。

振られたお役は1日の大半は
「白湯係」
朝8時に邸宅に到着して
まず、大きなやかんにお湯を沸かし、
ポットに入れたり、
湯飲みを温めるためのお湯を準備した。

それを7組のお客様が
順次到着なさる度に、白湯は
最初のお口湿しとして出される。

1組8~9名だから
合計約60名ほどのお客様をお迎えした。

実はその邸宅は電気と水道は通っているが
ガスが通っていない。
つまりお湯が必要なものは
カセットコンロかIHコンロで沸かす。

しかも、
私がスタンバイしていた水屋は
蛇口から水を出すこともできないし、
水を流すことも許されていない。
水屋とは名ばかりの水屋なのだ。

なので、遠く離れたキッチンから
湯の湧いた大きなやかんを持って
水屋まで行ったり
冷めたお湯の入ったたらいを持って
キッチンに捨てにいくなど
「何時代だよ!」と
ツッコミを入れたくなるような
作業が続いた。

それを着物を着た状態でするので、
なかなかに裏方仕事は大変なのだ。

そして、3時ごろ、
7組目最後のお客様が立礼席に入られたら、
私がお点前をする。

裏のキッチン(立礼席の水屋)では
「よ、ラスボス!」と
声をかけていただいたが、
実は立礼席に出ていく頃には
歩きすぎで、もう膝が笑っていた。

それでも何とか無事にお点前を終え、
つつがなくお茶会は終了したが、
やっぱりお茶会の主催者側は
本当に疲れる。

そんな私たちの唯一の癒しは
ランチタイムの「柿傳」のお弁当。

お菓子付きとはいえ3,500円は
なかなかいいお値段だけど、
食べてみるとその価値はある。

このお茶会は
数寄者の「瓢鮎子」という号にちなんで
会場のどこかに瓢箪がしのばせてある。

「無病息災」に由来する
「6つの瓢箪」なので、
5つでも7つでもダメなのである。

まずは瓢箪の絵が描かれたお軸。
そこには瓢箪にちなんだ禅語が書かれている。
「うかうかと生きている様で瓢箪は
胸のあたりに〆くくりあり」とある。

瓢箪はお気楽に生きているように見えるが
途中にくびれがあって
それなりに苦しみもあり
人の痛みも知っている」といった意味だ。

柿傳のお弁当にも瓢箪は隠れている。
今回は「ひょうたんのお漬物」

これはひょうたんがまだ小さいうちに摘果して
漬物として加工したもの。
無理やり瓢箪の形にしたとかではなく
生まれながらに小さなひょうたんの形をしている。

それと立礼席のお菓子としても供された
黄色くてダイス型のフワフワのお菓子。
そこにもひとつひとつ瓢箪の焼き印が押され
6つのひょうたんの内のひとつに数えられた。
(写真に撮るのを忘れて
気づいた時には口の中…)

そして、今回は
名古屋からお茶会にいらしたお客様から
珍しいお菓子が到来した。
「美濃忠」さんというういろうのお店の
「初かつを」というお菓子だ。

竿もので包みを開けると
ピンク色のさくらういろうそっくりの
ういろうが出てきた。

しかし、寄りでよく見てみると
なにやらマグロの柵のような模様がある。
「初かつを」というより「びん長マグロ」の柵。

綺麗なピンク色で
ういろうよりもう1段柔らかくとろける感じ。
お味はさくら味か?
優しい甘さで上品だ。

このお菓子はとても有名で人気があり、
午前中には売り切れになるほどらしい。
しかも日持ちが2~3日なので
岐阜出身の社中のメンバーも
「なかなか手に入らないものなのよ」と
目を輝かせていた。

それを朝、新幹線に乗る直前に買い求め
楽屋見舞いにくださったのだ。

柿傳のお弁当と「初かつを」
いずれも裏方の疲れを癒す美味しさだった。

お客様たちは
そんな裏の事情は何も知らずに
お茶席のお道具組やら邸宅の建物自体を
愛でて楽しんでいらっしゃる。

毎回思うが、
シンクロナイズド・スイミング
(今はそう呼ばないが)と同じで、
水面上は美しく舞っていても
水面下は必死で泳いでいる。

お客様は水面上の日本の伝統美を堪能し
非日常のひとときを味わっていらっしゃるが、
そのお膳立てをする私たちは
裏の長廊下を熱湯の入ったやかんを持って
右往左往している。

ちなみに今回の立礼席のお題は
「花見の宴」

正客さんに出される主茶碗は
人間国宝・三宅休雪作の茶碗に
瓢鮎子が絵を描いたもので
銘は「酔眼」

屏風には満開の桜の絵。

見立て遣いの水つぎやかんは
神社で巫女さんが注いでくれる
朱塗りの酒器を使用した。
なので、
お点前の最後に水差しに水を足す時は
三々九度のように注ぎ
お酒を供するようにしたのである。

お客様たちは
茶席の意図を汲み取って
お酒はなくともほろ酔い心地になり、
瓢箪の焼き印が刻された
マシュマロのような珍しいお菓子と
一服のお抹茶を愉しまれたことと思う。

茶会=大人のお遊びの醍醐味は
こんな風に贅をこらし、知恵を巡らせ
面白がっていただくことにある。

















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