2015年2月8日日曜日

次はブエノスアイレスか

 
『版17』という版画家集団がある。
 
17名で構成されている版画を表現手段としている作家達の集まりで、
年に1回、国内外でグループ展を開いてきた。
 
私がそのグループに参加してからはかれこれ7~8年になると思うが、
最初に参加した三渓園の燈明寺特別展に始まり、
海外はチェコ、台湾、沖縄(海の向こうという意味)などで展覧会を開催してきた。
 
通常、この会、展覧会は日本と海外を交互に開催するという暗黙の了解があり、
日本の時は横浜の岩崎ミュージアムが定宿のような場所で、
あとは都美術館の企画展に応募してみたり、
チェコの作家を招待しての交流展と称して、神奈川県民ギャラリーの年もあった。
 
そんな風に転転と開催場所を変え、
版17という版画家集団のありようを探りながら活動を続けてきたわけだが・・・。
 
昨晩、昨年の沖縄展の総括をしつつ、
「さあ、次はどうする?」ということを決める総会兼飲み会が行われた。
 
集まった面々は17名中12名、
17名中女性はたった3名という男性ばかりの会であるが、
私はここ数年、会計を仰せつかっているので、総会に出席しないわけにもいかない。
収支報告書を作成し、でかけていった。
 
メンバーの多くは美大や美術系専門学校の教授か元教授が多く、50代後半~70代、
その関係からか世界中にネットワークをもっている人が何人もいる。
 
そんな人脈を頼りに
今までも、パリ、クロアチア、チェコ、台湾、沖縄と
個人ではなかなか開くことの出来ない展覧会を開催してきた。
 
チェコ以降は私も混ぜてもらって、
展覧会にかこつけてそれぞれの場所にも行くことが出来た。
チェコの時はキモノ姿で版画の摺りのデモンストレーションもさせてもらい、
文化交流大使の意味合いも担っている。
 
そのように海外における日本版画の位置づけは高いので、
開催には多大なエネルギーが必要だが、行う意義も大きい。
 
そこで、昨晩、「さあ、次はどこにする?」という話になった時、
なんと候補地が4つも浮上した。
 
すべて、その土地の美大に教えに行ったことがあるとか、個展をしたとか、
そこの作家とジョイントで展覧会をしたことがあるとか、
その作家を日本に招待したことがあるなどのコネクションがあるところばかり。
 
場所は、韓国のソウル、再び台湾、メキシコ、
そして、アルゼンチンのブエノスアイレス。
 
昨年の沖縄展は台湾の作家との交流展だったから、
台湾の作家とは何度かお目にかかっているので、親近感は確かにある。
 
韓国のソウルはある意味、近くて遠い国だが、
向こうで展覧会をして旅行に行けば、焼き肉など食の楽しみもありそうだ。
 
しかし、メキシコにいったり来たりの生活をしている作家から
「メキシコでやるなら私が橋渡しを・・・」という話が出ると、
メンバーはすっかりその話に食いつき、
「いいねえ、次はメキシコ!」という気運が一気に盛りあがった。
 
そのためには毎年展覧会をやっていたのでは大変だから、
今年は無しにして、
ビエンナーレ(2年に1度開催すること)にしようということになった。
 
会計としては、みんなのお財布事情を考えるとそれに賛成だ。
 
しかし、飲み会も終盤、みんなの酔いもすっかり回った頃、
唐突に誰かが「ブエノスアイレスという手もある」と言い出した。
 
ブエノスアイレスというとアルゼンチンの首都、
南米にある国なので、メキシコよりも更に遠く、直行便がないぐらい遙かな国。
知っているのはアルゼンチンタンゴぐらいで、
情熱的でセクシーな踊りの印象ぐらいというお粗末さ。
 
しかし、メンバーの内、3名はブエノスアイレスに行ったことがあったり、
展覧会を開いたことがあるというから恐るべし版17メンバー。
 
 
結局、
「みんな歳取っていくんだから、行くなら遠い所からにした方がいいと思う」
という私の意見に賛同してくれ、
ほとんどメキシコに決まりかけていた次回開催国が
急転直下、アルゼンチンのブエノスアイレスに傾いた。
 
最後は「ブエノスアイレスに乾杯!!」などと気勢を上げ、
一本締めをして、会は終了した。
 
私は少し前に確か「ブエノスアイレスの夜」という映画のDVDを
借りて観た気がすると思い、再度借りて見直してみた。
 
かなりディープで隠微で混沌とした作品だった。
 
メンバーの「ブエノスアイレスってすごく変な国なんだよ。
黄色人種に対する偏見もすごいし(そもそも黄色人種があまり関わっていない)、
気候も建物とか植物も変なんだよ、とにかく」という
訳の分からない説明に納得出来ないまま、
映画を観たら、ますます混乱してしまった。
 
しかし、未知の国アルゼンチンと
ブエノスアイレスなんて一生行きそうもない都市が急に身近になり、
「もしかして、来年はブエノスアイレスにいくのか?」と、
奇妙なおじさんばかりの版画家集団に身を置くのも悪くない、
そんな気がしている私である。
 


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