2015年9月10日木曜日

ピアソラに恋して その1

 
 
毎日毎日、雨が降り続いている。
台風と低気圧とが一緒くたになって、日本列島はずぶ濡れだ。
 
それは版画家にとっては恵みの雨なので、
今週は新作の試摺りと本摺りを一気に全部片付けようと思ってスタートした。
 
月曜火曜と試摺りを採り、
まだ微調整が必要なれど、これで本摺りに持ち込めるところまできた。
 
ホッと一息ついた火曜日の夜、
予定していたコンサートに出掛けた。
 
大好きな石田泰尚がメンバーのひとりでもある『YAMATO』のコンサートである。
 
先月、石田様のソロコンサートに行った際、
持ち帰ったフライヤーの中で興味をそそられたコンサートで
石田様がいろいろな人と組んでコンサート活動するひとつ。
 
私が今まで観てきたのは
石田様のヴァイオリンに対して、ピアノとサキソフォンとか
石田様のヴァイオリンとピアノとチェロとか
それぞれ音色の異なる楽器との競演というか、協演が多かった。
 
しかし、『YAMATO』は弦楽四重奏団なので、
石田様のヴァイオリンの他に、ヴァイオリンふたりとチェロひとりという
弦楽器ばかりの編成である。
 
それぞれ個の立った組み合わせの場合は
石田様のパフォーマンスを存分に発揮し、
協調性も必要なれど、個性も重要な要素なので、
観客のほとんどは石田様の音色とパフォーマンス見たさできている感がある。
 
だが、弦楽四重奏団となると、全員弦楽器の演奏者なわけで、
ひとりだけ目立つパフォーマンスをするわけにはいかない。
 
更にいえば、いつもは石田様は立って演奏するので
徐々にのってくると動きは激しくなり、
その細い体をしならせたり、くねらせたり、飛び跳ねたりするし、
表情など子細に観ていると感情表現が現れて、女心をくすぐられる。
 
しかし、『YAMATO』の4人は座って演奏するので、
立って演奏する時ほど動くわけにもいかないし、
ひとり際だって音を出すことにも加減がいる。
何より大切なのは4人のハーモニーなのだから・・・。
 
そんな演奏の時のリーダーであり、こだわりの人であり、
わがままな石田(自分)を抑えつつ、大人の対応をする石田様を初めてみて、
それはそれで「こういうのもできるじゃん」とほっこりしているのは私だけか?
 
コンサート内容に触れると
『YAMATO』はいつも前半にクラシックの楽曲がきて、
後半、アレンジャー近藤和明氏のアレンジしたいろいろなジャンルの楽曲を
演奏するというスタイルらしい。
 
今回は
1部では、シューベルトの弦楽四重奏曲「死と処女」
2部では、ショスタコビッチの弦楽四重奏曲1番Op49
レッド・ツェッペリンの「Babe I'm Gonna Leave You」
レオン・ラッセルの「ASong For You」
ピアソラの「タンゴ・バレエ」と「天使の死」
 
アンコールにピアソラをもう1曲と、「荒野の七人」という
何ともバラエティに富んだ曲目が並ぶ。
 
しかし、ただランダムに並んでいるわけでもなく、
今回のコンサートに共通しているテーマは『死』
 
そのあたりのことはプログラムに詳しいし、
何といってもアレンジが素晴らしいので、
いずれも一貫して『YAMATO』の音楽として楽しめるところがいい。
 
いつもなじんだあの曲がアレンジによってこんな風になるのかという新しい発見は
協調性もあるということを石田様の中に発見したのと
同じぐらい貴重な体験で
私の中で『YAMATOの石田様』というのも1コマ加わった気がする。
 
さて、ただ単にコンサートの余韻にばかり浸っていられない。
帰ったら新作の本摺りが待っている。
そのつもりで、コンサートに出掛ける前、
本摺り用の和紙の湿しと絵の具の調合は済ませてある。
 
明日はいよいよ台風上陸かという大雨の中、
余韻とイメージと明日への意気込みを胸に、
滑らないよう、最寄り駅からはタクシーで帰宅したのであった。


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