2018年1月23日火曜日

2枚接ぎ作品の下半分

 
 
 
 
 
月曜日の雪は、予報をはるかに超えて、大雪になった。
 
大雪を心待ちにしていたのは、坂道でそり遊びを楽しみにしている子どもと
湿度が必要な木版の本摺りをしようと思っている私ぐらいのもので、
案の定、雪に弱い都会の人達は雪道で転んだり、
交通機関が止まって大変な思いをしたり、
普通のタイヤのまま車を出して、立ち往生したり、横転したり・・・。
 
そんなニュースを横目に、私は日曜日の夜から、
2枚接ぎの作品の下半分に取りかかっていた。
 
下半分とはいえ、メインの絵柄は下半分に集中しているので、
実際には大きさからいっても、色数からいっても、
上半分よりずっと込み入っていて、時間がかかることが予想された。
 
日曜日の夜から始め、主には月曜日の雪の日に作業を進め、
火曜日の午前中ぐらいまでは摺り終わるのにかかるだろうと踏んでいたら、
案の定、火曜日の昼過ぎまでかかってしまった。
 
しかし、4枚手がけた全てが無事に摺り終わり、
今はホッとして、急に腰の痛みと腕のきしみに気づいて、
ヤバイなと思っているところだ。
 
整体の先生には常日頃から「休み休み作業をするように」とか、
「途中でストレッチをした方がいいですよ」的なことは言われていたので、
無茶自慢は慎むようにしているのだが、
どう考えても摺りの体勢は健康的とは言い難いし、
集中し続ける時間が長すぎるのはいいこととは言えないのは分かっている。
 
今回も、長時間、集中していると頭がいっぱいいっぱいになってきて、
お風呂に入ったり、筆を洗ったりして、それまでのことはなかったことにしないと
次のやるべき事がスムーズに進まないなんてことが度々あった。
 
それだけ、脳みその考えるキャパが減少しているのかもしれない・・・。
 
けれど、摺り終えたときの、この達成感と満足感はやはり何にも代え難く、
まだまだ、できるという慢心を呼び込んでしまうのは困ったものだ。
 
この本摺りの3日間に、誕生日を迎えたダンナのため、
一応、日曜日からケーキを買い(誕生日当日の月曜日は引き籠もりの予定なので)
月末の人間ドックを気にして、ふたりで半分ずつ食べたのだが、
それを2日続ければ、お腹に入った量は同じなので、
効果は薄いと思われる。
 
まあ、本摺りの臨戦態勢の中でも、
「パパのお誕生日は、ちゃんと覚えてましたよ」という
プレゼンテーションにはなったかもしれない。
 
ともあれ、年間で1番体力勝負の2枚接ぎの作品の試し摺りと本摺りが、
こうして10日間で滞りなく終わった。
 
亡くなった80代の先輩作家が
「僕はベニヤ1枚の大きさの作品が摺れなくなったら木版を辞めるよ」といって
本当に亡くなる寸前まで、黒一色摺りの大きな作品を創っていらしたが、
作家は皆、自分に何かを課して、創作活動をしているのではと思う。
 
私も、この2枚接ぎの作品が摺れるところまでは、
2枚接ぎを作り続けようかなと考えた雪の日の本摺りであった。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿