2021年11月14日日曜日

ホリデーは彫りデー

 








11月14日日曜日、
世の中は日曜日なので、ホリデーだが、
1日中、アトリエに籠って、
先日、転写した版の彫りの作業を開始した。

今回の版は原画を作る段階から
細かい作業が続き、
建造物をモチーフにする時特有の緻密さと、
巨大な版に細い雨のラインを描くという
版の正確さを必要として、
すっかり体力を消耗してしまった。

お陰で腕や肩、後頭部のハリはもちろんのこと、
目の充血がひどく、
すぐには彫りの作業に進めない状態だった。

たぶん目の充血を治さないで
彫りの作業を始めると、
眼科にお世話になる気がして、
まずは手持ちの目薬を差しながら、
健康な白目を取り戻す時間が必要だった。

4~5日、間を開けたおかげと、
肩甲骨をはがす体操をしたせいで、
何とか体が使い物になりそうなところまできたので、
本日より、彫りのパートに突入することにした。

版は両面に原画が転写されているので、
細い線ばかりのデリケートな面を先に彫って
裏返した時、版に傷がつかないよう、
ベタの部分が多い
安定感のある面から彫ることにした。

部位としては
雨の線を彫った空の1版目と建物の屋根、
森の1版目といったところ。

こうした彫りを進めながら、
少しずつ、どんな色にするかとか、
2版目の彫り方をどうするかなど、
作品イメージを膨らませていく。

手と目は
描かれたラインをギリギリ残すぐらいのところを
彫刻刀で削っていくので、
クリエイティブというより彫り師として
正確なスキルを要求されている。

なので、頭の中は比較的自由に
物思いにふけったり、考え事をしたり、
いろいろなことを思い出したりできる。

今日は2日前に
絵画教室で生徒さんと交わした会話を思い出しながら、
版画家のプロとアマは何が違うのか考えてみた。

11月中旬、
絵画教室の皆さんは
来年のカレンダー用の作品制作の
佳境に入っている時期だ。

ひとり3枚、受け持ちがあり、
1~2月、5~6月、9~10月の担当の人と、
3~4月、7~8月、11~12月の担当の人がいる。

カレンダーだから
自分の作品だけでできているわけではなく、
他人の作品と組んで1冊のカレンダーになる。

先生(私)に渡す分と、
いつかグループ展に展示するかもしれないので
ベストな摺りのもので組んだ1冊の計2枚も、
余分に摺らなければならない。

つまり、自分だけではなく
自分の作品が人の目にも触れるし、
人の家にも飾られることになるのだ。

それなのに、彼女たちからは
そうした責任とか
だから頑張らなければ恥ずかしいといった
気持ちはあまり感じられない。

もちろんそれぞれの事情はあるだろう。

趣味の絵画教室なんだから、
今年はこんな程度で許してもらおう。

3枚作らなければと思っていたけど、
出来なかったの、ごめんなさいとか、
時間がないから
版数をなるべく減らして楽に摺るには
どうしたらいいですか、みたいな…。

ここ数年、
私はひとつの境地に達し、
人に対する要求のバーをすごく下げた。

人間関係に関しても
「来るものは拒まず、去る者は追わず」
の精神で接することで、
とても楽になった。

版画家のプロとしての矜持は、
自分に課した課題や作業には
真摯に取り組み、責任を果たすことだと
思っている。

自分以外の人に関しては
「その人にはその人の考えがある」と
距離をおくことで、
カリカリしなくなった。

これらは心理カウンセラーとして
日々、クライアントさんと接する中で
獲得したもので、
カウンセラーになって得られた最大の賜物である。

カレンダーが予定通りできないようでは
アマチュアだというより、
年間スケジュールは年初から分かっているのに
どんな結果を出すのか出さないのか、
人としての問題だと考えている。

まあ、それも
人は人、自分は自分なのであるが…。
(おー怖!)













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