2014年5月20日火曜日

よっ、待ってました団菊祭!

 
 
 
 
楽しみにしていた五月の歌舞伎座公演に行ってきた。
五月と言えば、『団菊祭』である。
歌舞伎好きなら誰でも知っている団十郞と菊五郎の団と菊をとって団菊祭だ。
 
残念なことに団十郞は昨年亡くなってしまったので、その一周忌法要公演という
名目でもあるが、
演し物が昼の部も夜の部も歌舞伎十八番目白押しの代表作ばかりで
いつになく華やいだ公演になっているようだ。
 
私もキモノでと勢い込み、一重のブルー系つむぎにしゃれ袋を二重太鼓に結び
この間、アジアンフェアで求めたインドネシアの籐のバック、
白い夏用の草履で
まだ6月にはすこし前だけれど、初夏の風情を演出してみた。
 
会場はそうしたキモノ姿の女性がいつになく多く、
1割とはいかないまでも14~15人にひとりはキモノなのではと思われた。
 
新しい歌舞伎座になってから公演を観るのは3回目だが
どんどんキモノ人口が増えているのは、嬉しい限り。
同行の友人もその変わりように驚いていた。
 
今回も母代わりのおばさまが後ろから手を回して(悪い意味ではない)
とてもよいお席をとってくださった。
にもかかわらず体調不良で来られなくなってしまったので
急遽、歌舞伎好きの別の友人を誘っての鑑賞と相成った。
 
昼の部の演目は
『毛抜き』(歌舞伎十八番)
『勧進帳』(歌舞伎十八番中の代表作)
『魚屋宗五郎』(河竹黙阿弥作)
 
席は前から4列目の10番11番
花道から中央へ4席目と5席目なので、
花道で見得を切る役者は正に真横に立ち止まり、そこにいる。
 
汗は落ちるほど真下ではないが、息遣いはもちろん感じられるし、
顔の毛穴さえ見える至近距離である。
 
まず、『毛抜き』の主役は左団次で弾正の役。
豪快で愛嬌もある弾正役は左団次のはまり役だと思うが
その至近距離で見ると老人特有の首をわずかに振るしぐさが見受けられたので
もしかして血圧が高いのかもしれない。
 
歌舞伎界は何と言ってもご難続きであるから、
健康だけは留意して欲しいところだ。
 
しかし、次の世代の菊之助と海老蔵は確実に次代の担い手として
成長著しい。
『勧進帳』は菊之助の富樫、海老蔵の弁慶で
今日のお客さんのほとんどはこの演目がお目当てに違いない。
 
富樫の菊之助は、富樫をするにはまだ若く、
富樫の心中の複雑さを表現するには至っていないが、
海老蔵との長々しい掛け合いも声が通って躍動感に満ちている。
 
一方、海老蔵が山伏姿の弁慶役で花道に現れ、
私たちの真横に来た時、
その横顔があまりに亡くなった団十郎に似ていたのでビックリした。
 
晩年は白血病の後遺症もあって、顔がむくんでいたので
海老蔵とはあまり似ていない印象だったが、なんのなんのその横顔は
正に若き日の団十郎。
 
団十郎の方が声のトーンが低く、やや籠もってなのに響く声質だったが
海老蔵の声は幼少期より鍛えた闊達な台詞回しと張りツヤのある声で
劇場いっぱいに響き渡り、歌舞伎の醍醐味を感じさせる。
 
勧進帳の弁慶は市川家のお家芸、
掛け合いでしゃべるはしゃべるは
立ち回りもあるし、幾度となく見得も切るし、
大酒飲みの芸ありのてんこ盛り。
 
海老蔵ファンはたまらないだろう。
間違いなく次代の歌舞伎界は彼が牽引すると思わせるスター性を備えている。
 
昼の部最後の『魚屋宗五郎』の主役宗五郎は菊五郎。
言わずと知れた菊之助のお父さんである。
 
菊五郎は女形も立役もこなす役者だったが
最近は太りすぎで、女形はちと厳しい感じになってしまった。
 
今日の役も酒が入ると手がつけられなくなる魚屋のオヤジの役で
だらしなくはだけたキモノの下にはでっぷり出たお腹とたるんだ腿が見え、
おまけに花道で止まった時には間近に下帯まで見えてしまって
ちょっと興ざめだった。
 
しかし、その芝居のうまさは天下一品。
役どころは限定的になってきているとは言え、
切られ与三郎だの今日の宗五郎みたいなべらんめいのどうしようもない男を
やらせたら右に出るものはいないのではないだろうか。
 
踊りがどんどんうまくなっている息子菊之助は、華のある女形として
今、注目している役者のひとりだが
いくら親子でも父親譲りで
将来、下帯ちらつかせて千鳥足なんて役をやるのだけは勘弁して欲しい。
 
役者は夢を売る商売、
なれど、
花道のすぐ脇、前から4列目では役者も生身とバレバレだ。
 
夢とうつつを行き来しながら
(4時間半の長丁場、実は舟を漕ぐ間もあったりして)
楽しい1日を歌舞伎三昧。
 
たまにはこんな日もいいもんだねぇ~。


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