2015年6月26日金曜日

大和言葉は日本人の心得


 
仕事帰りに本屋さんに寄って、気になっている本を探した。
お目当ての本は見つかったが、パラパラめくって中身を少し見たら
あんまり買い求めるほどの食指が動かなかった。
 
しかし、その本の近くにちょっと気になる表題の本を見つけた。
『日本の大和言葉を美しく話す』
ー心が通じる和の表現ー
とある。
 
中を繰ってみると各頁に水彩画のかわいいイラストが添えられ、
「語らい」「もてなし」「手紙」「装い」「味わい」「学び」・・・など
大和言葉で表現するとこんなに雅になるし、
心持ちがよく伝わるという具体的な言葉が、シーンごとに紹介されている。
 
最初に飛び込んできた言葉のいくつかが
自分もよく使う言葉だったので、
これはもしかしたらただ使うだけじゃなく、わかって使い分けたら
もっと言葉を効果的に、しかも美しく使うことが出来るのではと思った。
 
日本語の単語は
大和言葉と漢語と外来語の3種類ある。
 
「山」「川」などは大和言葉だが、
「山地」「河川」など漢字の読みでいえば音読みで発音されるのが漢語。
 外来語はカタカナで表記される言葉。
 
「はじめる」は大和言葉で
「開始」が漢語、「スタート」は外来語ということになる。
 
しかし、そんな国語の授業みたいな内容に心惹かれたわけではない。
最初にでてくる「語らい」の項にでてくる
「このうえなく」「いたく」「こよなく」あたりを自分がよく使う言葉だったので
親近感を覚えたのだ。

例えば、
「このうえなく」は「最高に」とか「最上に」という意味だから
そうは早々出てこないが、
「このうえなく美味」みたいな表現は好ましいと思っている。
そこを「チョー美味しい」と言われてもねェ・・・という感じだ。

レストランなどでも「これ、めっちゃ美味しいよね」というより
「うわぁ、このうえなく美味~」みたいに、ちょっと茶化して言ってしまう。
 
「いたく」はもっと頻度高く使う言葉で、
「いたく感激した」とか「いたくおかんむりね」とかいう使い方を
口語でもよく使う。
 
「こよなく」は「このうえなく」と似て非なる言葉で
「こよなく愛する」という言い回しに使うのが一般的だと思うが、
実際,異性にそんな言葉を伝えたことはない。
 
しかし、案外、友人との会話でもちょっとしたユーモアのつもりで
「私はこれをこよなく愛しているわけよ」みたいに
好きなことや物を指して言ったりする。
 
だから本当の意味で上品な一時代前のご婦人のような使い方ではないわけだが、
言葉の響きとして大和言葉が好きなんだと思う。
 
また、手紙という伝達方法も大好きで、
個展の案内状や年賀状に一人ずつ、ひと言添えたり、
お礼状を出したりといった手書きの文書をやりとりすることがけっこうある。
 
そんな時は当然、大和言葉を使うことが多くなる。
 
手紙では「前略」とか「拝啓」みたいな紋切り型の出だしではなく、
自分で考えた季節の挨拶文が最初にくる。
例えば、今なら
「雨降りが続いて鬱陶しい毎日ですが、いかがお過ごしですか」みたいな感じ。
 
案外「紫陽花の花が目に美しい今日この頃・・・」みたいなわざとらしい感じより、
ストレートで正直な言い方が好き。
 
そして、必ずといっていいほど出てくる表現が
「お目もじ楽しみにしております」や
「朝から首を長くしてお待ち申し上げております」みたいな言い回しや、
「先日はお目にかかれて、楽しゅうございました」とか
「お忙しい中、個展にお運びいただき、ありがとうございました」とか
「いつもいつもお心にかけていただき嬉しく思っております」みたいな、
大和言葉を使った感謝の表現である。
 
文書という方法をとると
こうしたいかにも目上の方にしか使わないような言葉を
同年代の友人宛にも使えてしまうので、
あらたまった感じと
より心をこめて気持ちを伝えることが出来るような気がしている。
 
まだ、今日買って読み始めたばかりの本だけど、
言葉の美しい人、その人独自の感性で表現する言葉を持っている人、
字の美しい人にはかねてより憧れている。
 
私もそんな人になりたいと願っているし、
日本人なら身につけるべき素養のひとつだと思うので、
今からでも遅くないと信じて、
今日から「大和言葉の達人」を目指したいと思う。


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