2018年3月10日土曜日

新作の本摺り

 
 
 
最近のブログは志帆関連のものが多く、
版画は創っていないのではと思われているかもしれないが、
何とか、2枚接ぎの大きな作品の後も、2月に新作を立ち上げ、彫っていた。
 
大きな作品が出来てしまうと、ホッとして気が抜けるのは否めないのだが、
6月のグループ展までに、もう2点は最低でも創らなければならない。
 
今週の火曜日に、2枚接ぎの案件に、無事、めどが立ち、
作品を額縁屋さんに渡してしまったので、
気分も上々、週の後半は新作の試し摺りと本摺りを一気に進めることにした。
 
時計草をモチーフに使っているので、
ある程度は時計草のリアルな色を使用することにしたのだが、
意外と背景に使うつもりの色としっくりこなくて、
試し摺りをやり直した。
 
色は大きく言って2つのグループに分かれる。
 
ブルーアンダートーンとイエローアンダートーンのふたつで、
白と黒と、白と黒だけで出来る無数のグレーを除いては、
どんな色も青を隠し持っているか、黄色を隠し持っているかで、
どちらかのグループに分かれる。
 
例えば、黄色とひとくちにいっても、
レモンイエローはブルーアンダートーンで、
卵色はイエローアンダートーンだ。
 
青み群はクールでさめざめとしているし、
黄み群は温かみがある。
 
お洋服も、スカートとブラウス、スーツとインナーなど、
組み合わせる色は同じアンダートーンの方がなじみがいいし、センスよく見える。
 
絵画に使う色も大きな面積を占める色はアンダートーンを整えた方が、
配色センスのいい、まとまった作品になる。
 
今回の作品でいえば、時計草の牡丹色や青紫系の色はブルーアンダートーンだ。
従って、背景にもブルーを隠し持った茶を使いたいところだが、
茶はそもそも黄色を隠し持っているので、青みに倒すのが難しい。
 
結局、小豆色という正に小豆のような赤ワイン色のような色に白を足し、
背景の1色目にした。
井村屋のあずきバーみたいな色だ。
 
その上に無彩色の黒を重ねている。
 
先日、木版画家はひとりではなく、たくさんの人やモノに支えられて、
作品が生まれていると書いたが、
試し摺りと本摺りの作業に関しては、本当に孤独な戦いだ。
 
色には正解がないし、
どんな色を使うかは、作者しか決められないのだから、
ひたすら、ひとりごとをつぶやきつつ、
粛々と色を決め、黙々とばれんを動かし、摺り続けるしかない。
 
目と手と頭はめまぐるしく動いて、
作品は徐々に最後の1色に向かって、少しずつ出来上がっていく。
 
その間にもうひとつ決めなければならないことがある。
作品タイトルである。
 
作品タイトルは彫っている内から決まるような時もあれば、
本摺りが終わっても、浮かばないこともある。
今回はどちらかというと後者で、
なかなかピタッとくるタイトルが思いつかずにいた。
 
漢字一文字系のタイトルにしようと思うのだが、
この作品を表す漢字とは・・・。
 
年末の「今年の漢字一文字」をひねり出すような気分で、
昨夜も寝ながら考えたが、なんだかこれっというような漢字が出てこない。
作品は華やかな印象だけど、「華」と「凛」は以前に使ってしまったし、
昨年の「明」と「快」というほど、明るくポップでもない。
 
悶々としながら、とうとう最後の1色を摺るところまでいって、ようやく閃いた。
「雅」(みやび)はどうだい。
「そだね~」とは誰も応えてはくれなかったが、
なかなかいいのではないか。
 
色使いが日本的な感じもするし、黒い背景で、画面が重たいから、
漢字自体も字画が多い方がいいので、
「雅」はしっくりくるタイトルだと思う。
 
タイトルが決まると、これまた、ホッと一安心なので、
この新作も気持ちよく仕上げの水張りすることが出来た。
 
大体、一安心すると甘いものが欲しくなるのが常で、
額縁屋さんの帰りには「和栗モンブラン」を買って帰ったが、
今日は日本画的な作品なので「今川焼き」にしようと思う。
(小品だからね、贅沢は出来ないしね~)
(そだね~と、独りごち・・・)
 
あんこ、最高!
今川焼き、コスパ最高!
お疲れ!本摺り。
 

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