2021年9月3日金曜日

異例のピアソラ・コンサート

 










昨晩はサントリーホールで行われた
「三浦一馬 ピアソラ・フェス
リベルタンゴ」と題された
コンサートに行ってきた。

お供はパティシエ学校の講師友達のTさん。
久しぶりにコンサート前に会って
まず、レストランで腹ごしらえ。

2021年はピアソラの生誕100周年なので、
各地でオール・ピアソラ・プログラムの
コンサートが開かれている。

私はピアソラの作曲した曲が大好きなので、
今年に入っていくつかこの手のコンサートを
聴きに行った。

それは元々、ピアソラをよく手掛けるメンバーの
コンサートで、
トリオ・リベルタだったり、
三浦一馬率いるキンテートだったり。

ピアソラが生きていた当時から
キンテートといって5人編成で、
ピアソラの曲は演奏されることが多かった。

キンテートの楽器の構成は通常、
バンドネオン、ピアノ、ヴァイオリン、
コントラバス、エレキギターの5種類だ。

しかし、昨晩のコンサートは
三浦一馬率いる全く違う楽器の5人編成で
オール・ピアソラ・プログラムの
コンサートだった。

楽器の編成は
バンドネオン、ピアノ、サクソフォン、
チェロ、ギター。

しかも、集まったメンバーがもの凄い。
今を時めくソリストばかり。
そして、若い!

バンドネオンは三浦一馬(31歳)だが、
サクソフォン・上野耕平(29歳)
チェロ・宮田大(35歳)
ギター・大萩康司(43歳)
ピアノ・山中惇史(31歳)
ゲスト・ピアノ・角野隼斗(26歳)

「題名のない音楽会」のゲストになるような
勢いのある若手の演奏家ばかり。

以前の三浦一馬率いるキンテートのメンバーは
石田様をはじめ、
40代50代。

その中で30そこそこの一馬君は
何とも若すぎるぐらい若かった。

しかし、今回のメンバーは
一馬君と同じ年だったり、
もっと若かったりするメンバーも含まれ、
舞台の上がまるで音大生みたいな感じだった。

編成が通常の5種類の楽器とは全く違うので、
一馬君が編曲を担当し、
ピアソラの曲なんだけど、
サクソフォンやチェロがメインテーマを弾くという
素晴らしいアレンジで、
曲によって主役が変わるという趣向だった。

前半の最初の1曲目「来るべきもの」は
三浦一馬君のバンドネオンのソロ。

2曲目の「アディオス・ノニーノ」は
山中惇司君のピアノのソロ。

3曲目の「フーガと神秘」は
耕平君のサクソフォンと
一馬君のバンドネオン、惇司君のピアノ。

5曲目の「忘却オブリヴィオン」は
大ちゃんのチェロと大萩さんのギター。
という具合。

まるで音大の文化祭、
もしくはジャズセッションような感じで、
1曲ごとにスポットライトが当たるメンバーが変わる。

いつもだったら石田様のヴァイオリンで
切なく語られる「オブリヴィオン」の旋律を、
大ちゃんが悶絶の表情をして、チェロで奏でる。

後半の1曲目には王道の「リベルタンゴ」がきたが、
ゲストのピアニスト角野隼斗君が
超絶技巧の技を繰り出し、ジャジーなアレンジで
今まで聴いたこともない「リベルタンゴ」に
アレンジされていた。

一緒に演奏していた一馬君のバンドネオンもノリノリだし、
耕平君も細い体に大きなアルト・サックスを抱いて、
負けじと食い下がる。

大萩さんのギターも大ちゃんのチェロも
自分の楽器のプライドにかけて
その音色のすべてをぶつけて演奏している感じで、
とにかく楽しそうだ。

全曲の中で私が最もよかったと感じたのは、
「孤独の歳月」という初めて聴いたピアソラの曲で、
メインはアルトサックスの耕平君。

私は前から4番目、17番という特等席だったので、
5mぐらいしか離れていない目の前で
アルトサックスの野太く豊かな音色に
すっぽり包まれて至福の時。

その曲の他の4人は
バンドネオン、ピアノ、ギター、チェロで、
プログラム後半はこの5人編成で演奏された。

それぞれの曲で、
メインになってソロパートを弾いた人は
その曲が終わると
メンバーからの賞賛の拍手ももらい、
会場の拍手と共に大いに盛り上がる。

小さくて細い体で
巨大なアルトサックスを吹き終わった耕平君のドヤ顔が
微笑ましくて、
思わず見ている私たちも笑顔になる。

アンコールの2曲も含め、
すべての編曲を担当した一馬君が
最後に「今日の曲目はすべて
このコンサートのためだけにアレンジしました。
お楽しみいただけましたか」と挨拶していたが、
本当にそれは凄いことで
さぞかし大変だったことだろうと思う。

それぞれの楽器のソリストたちが
自分の楽器を愛していて、
そして、他の楽器もリスペクトし、
共に演奏することが楽しくてしかたない。

そのことがグイグイ伝わってきた。

人生に愛してやまない音楽と出会い、
楽器と出会い、
楽器を通して演奏家と出会いセッションする。

そんな幸せを手にしているメンバーが作り出す
一期一会の瞬間に立ち会え、
幸せをおすそ分けしてもらった気分だ。

緊急事態宣言下の雨の中、
はるばる溜池山王まで出かけた甲斐があった。

やっぱり生の演奏は最高だ!!



















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