2021年9月19日日曜日

命の洗濯

 
















「あ~、どこかに旅行したい」
そんな思いが体に充満して
爆発しそうだなと思っていた時、
友人から「日光の金谷ホテルにいかない」という
お誘いを受けた。

金谷ホテルと言えば、
日本のクラシックホテルの5本指に入る。
大昔、泊ったことがあるが、
クラシックホテルは何とも趣があっていい。

二つ返事で「行く行く!」と答えた。

友人Tさんは専門学校の非常勤講師仲間で、
去年の12月、
蟹とフグを食べに中国地方にご一緒した。

その時の蟹が忘れられず、
「今年も同じタグ付きの蟹を食べに行きたい」と
彼女が言うので、
12月初め、少し違うルートの旅行の申し込みを
すでに済ませている。

しかし、12月を待ちきれず、
「その前にどこかに行きませんか」
というお誘いだった。

みんな旅好きは旅に飢えているし、
温泉好きは硫黄の香りが恋しいし、
美味しいもの好きもしかり。

『雰囲気のいいクラシックホテルで
何をするということもなく、
温泉に浸かってのんびりし、
フレンチのコース料理をゆっくり味わいたい』

私たちは思いを同じくしていたので、
温泉にゆっくり浸かれる
中禅寺湖金谷ホテルをチョイス。

朝、浅草で待ち合わせた。
9時30分発の「けごん」に乗車し、いざ、日光へ。
東武日光の駅からは徒歩で本家の金谷ホテルまで行き、
途中、街道沿いのレストランで、
日光名物のゆば料理をいただいた。

40年前、泊ったことのある金谷ホテルは
昔と1ミリも変わることないたたずまいで、
コロナのせいか人気もなく、
ただただ静かにそこにあった。

そこからシャトルバスで中禅寺湖まで登り、
湖畔の中禅寺湖金谷ホテルに到着した。
こちらもかなりのクラシックぶり。

ロビーの真ん中には暖炉があって、
もうそろそろ薪をくべて火を起こそうと
冬支度が始まっている様子だ。

周囲を木々に囲まれ、
少しひんやりした風が渡り、
自然の中にいる感じが心地いい。

夕方、中禅寺湖畔まで散歩に行けば、
裏山から降りてきた猿の親子が
すぐそこにいたりする。

天気は台風の影響でイマイチだったけど、
大きな湖、向こうに連なる山々、
空の雲がみるみる形を変える様子は、
最近見ることがなかったのでとても新鮮だ。

むささびの形に彫刻された部屋のキーは
いかにもクラシックホテルという感じだ。
女同士だと、
そんな小さなことにも面白がれるところがいい。

夕食はフレンチで、
白いクロスがビシッとかかったテーブルに
丁寧にサーヴされる品々。

金谷ホテルのマークが入った
「日光三猿麦酒」なる地ビールのうち
「金のキレ」という方を頼んでみたが、
これが大正解。

フルーティな香りのよさと美味しさで、
帰りに
瓶ビールだというのにお土産に持ち帰ったほどだ。

お料理も栃木産のブランドポーク、
栃木産のビーツ、
栃木産のイチゴなど、
地産地消にこだわった品ばかりで
郷土愛に溢れていて美味しかった。

お風呂は完全に洋式のホテルなのに
硫黄の香りがホテルの館内にもただようほどの
れっきとした温泉だ。

泉質は少しとろみのある白濁泉で、
とにかく湯もちがよく、
硫黄の香りが次の日にもほのかに香るような
濃厚な温泉だった。

ホテルでのコース料理と温泉、
このなかなか一ヵ所で両方は難しいことが揃っていて、
お部屋の居心地もいいとなれば、
ただここだけのために出かけてきても
十分、価値がある。

次の日もゆっくり目に起きて、
洋食の朝食を楽しみ、
シャトルバスで再び、金谷ホテルの本家まで下り、
お決まりの日光東照宮を参拝した。

東照宮の大改修工事が終わってからは
初めての参拝だったので、
美しくよみがえった陽明門と言わず、
本殿と言わず、
あまりの豪華絢爛さに口をあんぐり開けて
見入ってしまった。

帰りがけ、
友人ご推奨の吉田屋の水ようかんと鉄砲漬、
件の地ビール2種類4本をお土産にして、
夕方の「特急リバティけごん」で岐路に着いた。

浅草に降り立つと
いつものように人の波が押し寄せ、
現実に戻ったのを実感した。

たった1泊2日でも非日常に身を置き、
四肢を伸ばしてリフレッシュできたことは
値千金の価値ある時間だったと思う。






















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