2022年4月27日水曜日

仁左衛門と玉三郎『桜姫東文章』

 










明日には上映が終わるというので、
ギリギリのところで
シネマ歌舞伎『桜姫東文章 上の巻』を観てきた。

最初は友人に誘われ、前売り券を求め、
日にちの調整をして
いっしょにみなとみらいの映画館に
観に行くつもりだった。

しかし、ふたりの都合のいい日は
最終日に近い頃だったので、
様子をうかがっている内に
かかっている映画館の上映回数が
どんどん少なくなって
遂には「朝9時10分からの1回のみ」
のような具合になってしまった。

午前中は仕事か用事が入っている日が続き、
友人とは時間が合わないことが判明。

友人は1週間ほど前に
先にひとりで観に行き、
感想をメールで寄せてきてくれた。

相当、艶っぽい映画だというので、
私もやっぱり観なければと思ったが、
朝8時半過ぎに川崎に降り立つのは
なかなかハードだった。
結局、
千秋楽の1日前にようやく間に合った形だ。

シネマ歌舞伎『桜姫東文章』

映画は
2021年の春、歌舞伎座で
36年ぶりに再演された
仁左衛門と玉三郎による歌舞伎の演目を
映画に興したもの。

原作は鶴屋南北。

<あらすじ>
僧の清玄は稚児の白菊丸と道ならぬ恋の果て
心中を図るがひとり生き残ってしまう。
17年後、
高僧となった清玄は白菊丸の生まれ変わりとも
思える桜姫を出会うが…。

何しろ、上の巻だけで2時間半、
下の巻も2時間半の超大作。

しかも、この時代の男女の仲の
荒唐無稽なことと言ったら!

16歳の生娘(どこかで聞いたばかりの言葉)
桜姫は暗闇の中で
見知らぬ男に襲われ、強姦されてしまう。
その1回だけのまぐわいの末、妊娠。
男の子を生み落とす。

桜姫は一夜の甘美な思い出が忘れらず、
その肌の温もりが今も夜な夜な蘇る。

そんなある日、
腕に鐘と桜の刺青のある男・権助と巡り合う。
桜姫が忘れられずにいる男こそ権助だった。
再び、権助に身をゆだねる桜姫…。

って、どんな乱れた男女の中!!
相手はあんたを強姦したんでしょうよ、
しかも、1発で妊娠!
初めてなのに、その温もりが忘れられない?
痛くないんかい?
怖かったんじゃないんかい?

突っ込みどころ満載で
全然、話の筋が入ってこない。

しかし、目の前の映像の仁左衛門と玉三郎の
行き交うまなざしはいとも美しく色っぽい。

36年前といえば、
私が歌舞伎にドはまりして、
玉三郎を追いかけていた頃。
(正確には45年ぐらい前から)

その当時の玉三郎は、三島由紀夫にして
「この世のものとも思えない美しさ」
と言わしめ、
篠山紀信が専属で毎舞台、カメラを構え、
写真集なども刊行されていた。

玉様は仁左衛門、当時の片岡孝夫と組めば
「たまたかコンビ」
亡くなった団十郎、当時の市川海老蔵と組めば
「えびたまコンビ」と呼ばれ、
一世を風靡した。

私は圧倒的に
孝夫ちゃんの方が好みだったので、
玉三郎と仁左衛門が組む演目を目指して
歌舞伎座に通っていた。

ファンとしては
玉三郎のファンになると思うのだが、
今日、映像を見ていて気付いたことがある。

仁左衛門さんが
あまりにも当時の元カレに似ていることだ。

仁左衛門さんほど線は細くないが、
目を細めて笑うその表情や、
人が話している時に
じっと見つめているその優しい瞳。
微笑んだ時にこぼれる歯並びや
口元の皺、顎のラインまで
とにかく似ている。

映画館に来ていた10名ほどの叔母さまたちは
どんな気持ちでこのふたりのからみを
見ていたか想像できないが、
私は完全に個人的な思い出の中に入り込み、
甘美な記憶に溺れていた。

今、その元カレは齢80を過ぎ、
すっかりおじいさんになっているが、
人生、ときめくことのできる若い時は短く、
あれは最も輝いていた頃だったと実感する。

結局、映画の2時間半の内
途中で話が追いきれなくなったり、
睡魔に襲われたりして、
今は下の巻を観に行くべきか悩ましい。

ともあれ、仁左衛門と玉三郎の
艶っぽいからみの映像だけが鮮明に
脳裏に焼き付き、
青春プレイバックみたいになって
本日の映画鑑賞は終わった。

約半世紀ちかく、
時は流れたのである。
あ~ぁ、青春は日々に疎し。



















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