2023年5月4日木曜日

笠間のひまつりという陶器市

 




















5月2日、陶芸工房の友人に誘われて、
「笠間のひまつり」という名の
陶器市に行ってきた。

友人は昨年まで小学校の先生だったのだが、
以前の同僚の若い先生が転身して
陶芸家を目指し、笠間に移住したそうな。

笠間市は市を挙げて陶芸家を支援していて、
多くの陶芸家が住んでいて
作家活動をしているという。

笠間焼と呼ぶようなある決まった土や釉薬や
器のスタイルがあるわけではなく、
誰もが自由に個性あふれる作陶をしている。

私達も鶴見の陶芸工房で自由に作陶し、
もちろん工房に置かれている土や釉薬など
使える材料の制約はあるものの
基本、好きなものを造っている。

今回、行った「笠間のひまつり」は
主に笠間市周辺に住んでいる陶芸家が集結し
大きな公園にテントを設営して、
各ブースで自分の作品を売る陶器市である。

期間もゴールデンウィークの始めから終わりまで
けっこう長いので、
250もの店舗の他に、食事や飲み物を提供する
ブースも数多く出店していて
さながら大規模な大学の文化祭のようだ。

朝、私たちは品川駅から特急ときわ55号に乗って
友部というところまで行き、
そこからはシャトルバスで会場まで向かった。

ふたりとも「晴れ女」を自認するだけあって
お天気はこれ以上ないぐらいの上天気。
爽やかな風が吹き渡る
雲ひとつない行楽日和に恵まれた。

友人はすでに何度かこの陶器市に来ているので
特段、何を探すという目的はないようだが、
私はできれば抹茶椀が欲しいと思っていた。

というのも、
5月下旬、お茶の先生の喜寿のお祝いの茶会を
弟子一同で開催することになっていて、
その際に数茶碗をひとつ、各人で持ってくるよう
いわれているのだ。

私も
自宅にいくつか適当な抹茶椀はあるにはあるが、
せっかくなので
この間、笠間の陶器市で見つけたと
エピソードが話せるようなものが見つかればと
思った次第だ。

11時、会場に到着し、まずは
ほうば焼のピザで軽く腹ごしらえし、
次にお抹茶コーナーでお茶とお菓子を
いただくことにした。

このお抹茶コーナーというのが
いかにも陶器市ならではで
まずは自分が飲みたい好きなお茶碗を選ぶという
趣向である。

私は白っぽい萩焼き風の茶碗を選び、
友人は黒楽のようだけど、
少し青みを帯びた釉薬がかかった茶碗を選んだ。

それぞれ選んだ茶碗には作者名とブースのNOが
書かれた紙が添えられ、
希望すれば、会場の中のどこにその作者の器が
あるのかわかるようになっている。
とてもいいアイデアだと思う。

私たちがテントの外の縁台で待っていると
着物を着たお運びさんが
お抹茶とお菓子が運んできてくれた。

塩釜のようなお菓子をまず口にして、
たっぷりのお薄をいただいた。
お茶碗の腰の丸みが手のひらになじみ、
とても美味しく感じられるいいお茶碗だった。

さっそく、名前とブースNOを再確認して
広い会場のテントを探し、
その作者のテントの奥に抹茶椀をいくつか見つけた。

しかし、他の器は2,000~3,000円ぐらいなのに
抹茶椀は30,000~50,000円の値がついていて
さすがに予算オーバーだ。
(それを選んだ私はお目が高いとは思うけど…)

結局、その作者のものには手が出ずに、
他のブースを探してみることに。
他の作家のものも
抹茶椀はみな2~3万以上はするようだ。

それにしても
本当に笠間の作陶家はひとそれぞれ、
ひとりとして同じような作風はなく
みんな何を造ってもいいんだなということを
感じる。

私達の工房の先生は
どちらかというと電動ろくろを使って作陶し、
「宇宙」を想起させる黒っぽい釉薬がかかった
茶碗や大きな鉢など円形のものが多い。
(テーマは宇宙)

それに対して
私たちは手びねりで、まるで工作のように
どこかに装飾があったり、
楕円形だったりアーモンド形だったり。
(自称、土曜1,3の工作チーム)

自由作陶の工房なので、
本来、何を造っても自由なはずなのだが
どこか電動ろくろができなければ…という思いが
あったのだが、
笠間に来て、そういう枷のような思いは
雲散霧消した。

自分の器は自分だけのもの。
誰にとやかく言われることなく
好きに造れば、それでいい。
そんな思いがむくむく湧いてきて
心が何かから解き放されたようだ。

結局、私は北海道から出店していた
あがたいちろうさんという人の抹茶椀を
購入した。
(清水の舞台からは飛び込んでいない)

そして、もうひとり、
「笠間の若い陶芸家」通りに
ブースを出していた金井春樹君の作品に
とても惹かれるものがあり、
私たちは「笠間の羽生結弦」と呼んで
彼の作品を次回も楽しみにすることにした。

その器は表と中のコントラストがあって、
土くさい表側に対して
透明度の高い釉薬が内側にかかっている。

スタイリッシュなフォルムと
神秘的な色の艶感のある内側。

自分の作陶にもインスパイヤーされる
とてもセンスのいい器だった。

少し話したが、おとなしそうな青年で
背が高く、羽生結弦似の顔立ち、
ビジュアル的にも素敵な彼を
心密かに応援しようと思う。

次回、また来ることがあれば、
彼の器を買おうかななどと思いながら、
夕方、楽しく過ごした会場を後にした。

都会に戻ってきてからは
友人の次男さんがシェフをしている
創作和食のお店で夕飯をいただいた。

こうして
観て、食べて、歩いて、おしゃべりしての
充実の1日が終わった。

今まで、私にとって陶芸の世界は
工房の中にとどまっていて
約12年の年月が過ぎたが、
今回、初めて大きく広がったような気がして、
ますます「楽しんだもん勝ち」の作風に
磨きがかかる予感がしている。















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