2023年11月2日木曜日

結城紬の新しい着物

 













最近、本場結城紬の着物をGetした。

紺から淡いブルーまでの大きな縞柄の中に
よく見るとピンストライプが施され、
葡萄の柄も織り込まれている。

茶道をやっている関係で
通常は柔らか物が多い私だが、
珍しく一目ぼれで紬を購入してしまった。

紬はどんなに高価でも着物のジャンルとしては
カジュアルなので
正式なお茶会やフォーマルな場所には
着ていくことができない。

しかし、紬ならではの織物の技術、
風合い、着心地など、
日本の着物の良さが凝縮されている。

紬の産地は全国各地にあるが、
結城紬は文字通り、茨城県結城市を中心とした
半径20キロ圏内で作られているものをいう。

「結城紬」は大島紬と並ぶ
日本を代表する紬で
着物好きで知らない人はいないだろう。

製造工程が国の重要無形文化財に指定されており、
「糸つくり・絣くくり・時機織」の
工程技法で作られたものには保証書がつく。

今回、手に入れたものはこの保証書がつく
本物で、
たぶん呉服屋さんの正面玄関から入って
求めてしまうと、最低でも
30万~50万円か、それよりもっとする
高価な真綿の絹織物である。

ところがどっこい、
この度の着物はよくCMで目にする
「バイセル」のセールで見つけたものである。

最寄り駅のデパートで年2回、
リユース着物市と称してこの手の着物のセールが
あるのだが、
そこで偶然の出会いをして我が家にやってきた。

リユースきものを見る時はまずは裄といって
背中心から手の先までの寸法が何より重要。
1尺7寸5分
この数字だけは外せない。

なぜなら、下に着る長じゅばんがこの寸法の
着物に合わせて作ってあるので、
それ以外の寸法だと
着物から長じゅばんが顔を出したり、
着物の袖が長すぎて
さばきが悪くなったりする。

着物は基本、完全なオーダーメイドの
贅沢品。
誰かが自分の体形にぴったりになるよう
仕立てたものだ。

だから、リユース着物であっても
元はそれを仕立てた人の寸法に合わせて
作られたオーダーメイドなので、
こうした着物を買う場合、買う人が
元の持ち主が同じような体形である必要がある。

この結城紬は裄が1尺7寸5分だっただけでなく、
まだしつけがかかった状態で、
しかも「本場結城紬の保証書」が添えてあった。

裾回しも紬で、黄金色と言ってもいいような
黄土色の裾回しがついていたが
これにも保証書付きの切れ端が
挟まっていた。

中を見ると、縫製を担当した組合のタグがあり、
11年11月とある。
きっと2011年11月に仕立てられたものだろう。

そこからどこかの箪笥で
一度も袖を通してもらえないまま、
12年間も眠っていたに違いない。

それが巡り巡って我が家にやってきた。
しかも、お値段が39,800円!!
たぶん10分の1ぐらいになっていると
バイセルの売り子さんも言っていた。

ようやく日の目を見たこの結城紬。

普通に呉服屋さんの店頭で見たとしても
たとえ10倍の値段だとしても
買いたいと思うほど好みの色柄である。

大切にこれからお茶のお稽古や
友人との会食、コンサートや観劇などに
着ていけたらと思う。

まずはどんなコーディネイトにしようかと
手持ちの帯と相談。
一番先に思いついたのが
淡いグレー地にラフな線描き模様の紬の帯。

実はこの帯は両面使いのリバーシブル。
裏は濃いベージュ地に花柄なので
裾回しの黄金色との組み合わせとしては
淡いグレーの方を出すよりいいかもしれない。

しかも
こちらの面はあまり自分色ではないせいで
リバーシブルとはいえ、
未だかつてこの面で一度も締めたことがない。

しつけがかかったまま一度も着られなかった
紬の着物と似たような運命だったわけだから
こちらの濃いベージュの面で
着てあげる方がいい気がしてきた。

1反の着物が織りあがり、
誰かの手に渡り、身にまとわれるまでには
本当にいろいろな物語があるのだろう。

誰にも着てもらえなかった紺の縞柄の結城紬、
ご縁があって私のところに来てくれたのだから、
大事に着まわしてあげたいものである。




 













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