2024年1月10日水曜日

友達もきもの沼にズブズブと

 










今年に入って初めての新年会は
近年、よく旅行にご一緒するTさんと
きものでお食事とお買い物ということになった。

2年ぐらい前から
Tさんは本格的にきものの着付けを習い始め
それより遡ること数10年前から
きものには興味があって
少しずつ買い求めてきたというので、
私は早く一緒にきものでお出かけしようと
けしかけてきた。

しかし、いくら着付けのお稽古をしても
いざ自分で着付けて外に出るとなると
怖気づいてしまって
なかなか実現せずに時は流れていたのだが…。

遂にこの冬、
Tさんのきものデビューの日がやってきた。

まずは紬のきものに合わせて
どんなコーディネートにするのかさんざん悩み、
馴れない草履で長歩きは出来ないというので
デートの場所は横浜駅に近い高島屋の
天ぷら天一に決まった。

更に
数日前から緊張で眠れなかったというし、
前日には美容室で髪をアップにして
夜は横向きのまま一夜を明かし、
朝はある程度着付けてから
ご自宅マンション内のお茶の先生をしている
お友達に帯の仕上げをしてもらったとか。

彼女が紬にするというので、
私も結城紬に織の袋帯でいくことにした。

高島屋の正面玄関に入ったところで待ち合わせ、
少し早めについて待っていると
いつもは白い髪のソバージュスタイルを
きれいに結い上げたTさんが
おすまししてやってきた。

きものの着付けをお友達に手伝ったもらうのは
知っていたけど、
髪をアップにするのに美容室まで
行くとは思っていなかったのでびっくり。

白い髪の色と道行コートの金茶色が
よく似合っている。

まずは10階のレストラン街まで行き、
天一の中に通されると
スタッフがきもの用の長いエプロンを持ってきて
後ろに回ってひもを結んでくれた。

やはりきものを着ているというだけで
サービスがひと味違うのは
よく経験することだ。

帯を締めての食事はきつくて大変かもと
心配していたが、ちゃんと一人前に食べられて
ミッションをひとつクリアしたので、
食後は同じ階で開催されている
呉服の催事「五味の市」へ。

ふたりとも道中着を着ずに帯付きのまま
会場に入ると
すぐさま着物を着た店員さんが寄ってきた。

言葉巧みに、まずはふたりのきものを褒め、
どんなものを探しているかと尋ねられたので、
ふたりは少し分かれて、
リユースきもののコーナーから見ることにした。

女性は買い物という段になると
自分のことでいっぱいいっぱいになるので
店員さんに「彼女にはこんな感じ」と伝えて
後は自分に合いそうなものがないか
完全にカチッとスイッチが入った音がした。

しばらくして
それぞれが気に入ったきものを見つけ
きものの上からではあるが
試着もさせてもらい、
結局、Tさんは大島紬の黒地に竹の柄の着物と
白っぽい織りの帯。
私は白っぽい染め大島の作家ものの着物と
裾に金箔を使った
たたき染めの付け下げを購入。

かくして
Tさんも私同様、きもの沼にハマったという
顛末だ。

きもの沼は着物を着ない人や男性には
まったく理解できないと思うが、
一度ハマるとなかなか出ることができない
厄介な沼なのだ。

不治の病と呼ぶ人もいるほど
その魅力に取りつかれると
つい散財してしまう魔力を持っている。

あと生きている間に何回着るのか
冷静に考えると恐ろしいけど、
好きな着物を見つけると
そうした計算ができなくなるのが着物だ。

ふたりは高島屋の薔薇の紙袋を抱え、
資生堂パーラーに寄り、
苺パフェをいただきながら
飽くことなくきもの談義を続け、
今度は買い求めた大島を着て
「また、お食事に行きましょう」と
相談がまとまった。

写真嫌いのTさんが
珍しく記念写真を撮りたいというので
隣のホテルに河岸を変え、
前から横から後ろからと
何枚もシャッターを切った。

これで着付けのお手伝いをしてくださった
お茶の先生にも
張りきって髪を結ってくれた美容師さんにも
自慢ができるだろう。

始めの一歩は何でも勇気がいるけど、
歩き出してしまえばもう大丈夫。

さあ、これからはもっともっと
きものを着て
日本人に生まれてよかったと
享受しよう。

だいぶ前の家庭画報のきもの特集の巻頭に
「日本の女性はふた通り
きものが着られる女性と着られない女性」
というのがあって
いささかその言い方に驚いたことがある。

Tさんはきものが着られる女性になったんだから
自信をもって出歩こう。
ズブズブとどこまでも。




















0 件のコメント:

コメントを投稿