2月に入ってから、
2点ほとんど同時に試し摺りをとった作品の
2点目の本摺りを決行した。
11日は久しぶりにしっかり雨が降るというので
そこに照準を合わせて
1点目の本摺りをしたが、
それ以降はどこまで待っても
雨は降りそうにないので、
ピーカンの冬晴れの中、摺ることにした。
ピーカン対策としては
まず部屋のシャッターをおろす。
暗くなるけど、絵具の調合は昨日
明るい部屋で行ったので問題ない。
次に朝早く起きて
なるべく明るくなる前に行けるだけ行く。
というわけで、
本日は5時に起床。
5時15分にはアトリエで作業開始。
「朝飯前」にどこまでいけるか
自分とに勝負である。
何しろ、今日は気温18度で
桜が咲く頃の陽気という予報なので
乾燥との戦いもある。
暗いうちに行けるところまで行きたい。
結局、始まりの「雨」と
花びらや花芯など明るい色を摺って
約2時間。
ちょうど朝ご飯タイムになったので
ここでブレイクすることにした。
朝食後はエネルギーチャージができたので
力のいるパートに進んだ。
夕べ、いきなり少し色調を変えた空のパート。
昨日、試し摺りを眺めていたら
空がやけに明るいというか元気というか
子どもっぽい色だという気がしてきた。
「浅葱」(あさぎ)というきれいな空色の
グラデーションを予定し
絵具の調合も済ませていたのに、
急に何かが違う気がしてきたのだ。
昨日は3度目の「国宝」を観にいった。
どこまでも追及する芸の道。
大きな名跡を継ぐことになった喜久雄。
監督に「綺麗に見えることより
喜久雄でやって」と言われたという
吉沢亮のテレビのインタビューを聴いて、
今回の映画は喜久雄目線で観てきた。
1度目とも2度目とも違う目線で
3度目に観る「国宝」は
田中泯の演じた役の凄みに圧倒されつつ、
芸に命をかけた喜久雄の
「何もいらないから芸がうまくなるように」
と
悪魔さんにお願いしたシーンがささった。
本摺りで自分を追い込みたくて
あえて3時間の長丁場だけど
もう一度「国宝」を観た。
そのせいか急に空の色と脇の紺色が
気になってしかたない。
そんな風に試し摺りで決めた色を
本摺りで微調整することはよくある。
しかし、空のように大きなパートの変更は
作品全体のイメージに関わるので
冒険だ。
その冒険は朝ご飯の後、
船を出した。
写真では大した変更には見えないと思うが
空の色と脇の濃い紺色を
少し渋くスモーキーにしたお陰で
全体に落ち着いた印象になった。
「希望」というタイトルにするつもりなので
あまりスモーキーになってはいけないが、
先日、摺った作品とのバランスで
あまり明るくてカランとした空は
しっくりこない。
そんなこんなを独り言ちながら
午前中で摺りの山場を越えた。
昼食後に最後の黒を摺って
この作品のすべての摺りが終了だ。
木版画は明るい色から摺って
黒のように強い色は最後に摺る。
しかし、そこまでに摺ったすべての色が
最後の黒に負けないように
しなければいけない。
しかも、絵具は乾くと色が1段
明るくなるということを踏まえ、
色の調合をしなければならない。
水着と同じで
黒や黄色の水着はプールに入っても出ても
さほど変わらなけれど
ブルーや濃いピンクは水に濡れた時と
乾いた時では全然違う。
それと同様のことを考えつつ、
絵具を作り、摺っていく。
乾いてなんぼの世界である。
最後はベニヤ板に出来あがった8点を
水張りし、乾かすと
貼るそばからみるみる空の両脇の紺色が
白っぽく明るい色になる。
ネイビーブルーという絵具の宿命だ。
宿命を受け入れた上で
少し黒を足してみる。
はて、折り合いはついたのか。
喜久雄の気持ちになってみる。
「今、欲しいのは俊坊の血や。
俊坊の血をゴクゴク飲みたいわ」
「死ぬる覚悟が聞きた~い」トンッ
(キセルをつく音)
昨日観た吉沢亮の鮮烈なセリフを
脳裏に駆け巡ぐらせ、
アドレナリンを出す。
私には死ぬほどの覚悟はないものの
何とか本摺り、一丁上がり!
今宵は瀬戸際で背景色を変えた勇気に
乾杯しようと思う。
(また、乾杯?!)
お疲れした~!!

















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